幕間 喜びの感情
フォルティス村を出て五日目の昼下がり。
レトとソーニャは他愛ない会話を繰り広げていた。
「ソーニャも怒りの感情じゃなくて、たまには喜びの感情を爆発させてみてもいいんだぞ?」
「むっ、それは師匠やデレクが怒らせるようなことばかりするからです。それじゃあ試しに、私が喜ぶようなこと言ってみてください」
「おっけー。それじゃあ宿屋に寝泊まりした翌朝のベッドの上という仮想シチュエーション内に、自分を置いてみてくれ」
「わかりました」
「覚醒したソーニャは、小鳥のさえずりを耳にしながらゆっくりと上体を起こす。
ベッド脇に両足をつけ立ち上がると、窓辺に近づいてカーテンを開いた。朝日の眩しさに思わず目を瞑る。
目が慣れてくると、窓の外は正面の建物や街路の表面に至るまで、キラキラ輝いていた。
ふと、窓に反射する自分の姿に違和感を覚える。
胸の辺りにふっくらとした質感が——昨夜まではなかったはずの張りがあった。
そう、まさしく、二つの果実が巨大化している。
この嬉しさに思わずベッドに乗り上げ、両腕を頭上高く上げてこう叫んだ………………これで巨乳の仲間入りだああああああああああ」
「死ねええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「うぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
怒りの感情を爆発させたソーニャに思いっきりぶん殴られたレトは、間道の遥か先まで吹っ飛んでいった。
喜びの感情を爆発させるソーニャを目撃するのは、もっと先になりそうだった。
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