第20話 お助けデレク

 一行は、フォルティス村を逃れるように発ってから二日が経過した。

 食料は順調に減っていき、残りわずかとなる。何かで手を打たないと、またエネルギー不足に陥る。

 間道を歩く先頭のレトは、地図を片手に、食料問題のことであれこれ頭を巡らしていると、横合いから声がかかる。


「にいちゃん、お困りのようだな」

「うお、デレクか、びっくりした。つーか隊列を乱すなよ」

「まあまあいいだろ、ちょっとくらい。それよりも、お助けデレクが必要そうな顔をしているぜ」

「それってどんな顔だよ……でもまあ、食料が減ってきて悩んでるのは確かだな」

「そんなお悩みをおれがまるっと解決しちゃおうってわけ。フォルティス村の戦士のおっさんたちに、狩猟の方法を聞いてきたから、ちょっと試してみたい」

「マジかよ! それはナイスすぎる!」

 

 デレクの要望に応え、近くの森林に立ち寄ることにした。

 モンスターや危険動物と遭遇したもしものときに備え、護衛としてレトが同行することにした。他のみんなは森の外で待機してもらう。

 森の奥に入っていき、草木を掻き分けながら真っ直ぐ進んでいると、先頭のデレクが何かに気づいた。


「獣道をはっけ〜ん」

「ああ、なるほど……この通りに罠を仕かけるのか」

「そゆこと」


 獣道を辿っていき、木が隣接している場所で立ち止まる。デレクはカバンからロープを取り出した。


「にいちゃん、肩車して」

「しょうがないなあ」

 

 レトがしゃがみ込むと、首から肩にかけて重みがのしかかる。

「ふんっ」とレトが立ち上がると、デレクはそのまま垂れ下がっている枝にロープを括りつけた。

 伸ばしたロープは、地上十センチくらいのところで自在に締まる輪を作り、余ったところはレトがナイフで切った。


「これでかんせ〜い。あと二箇所くらいは仕かけようかな」


 罠を合計三箇所に設置し、森から間道に出た。


◇◇◇◇


 翌朝、成果を確かめるため、罠の設置場所にそれぞれ赴く。

 三つのうち二つの罠が小動物を捕えていた。

 今後も使うため、しっかりロープを回収する。

 衰弱している二匹をレトがひと思いに屠殺し、ついでに血抜きを行った。


「タヌキとイノシシげっとおおおお」

「やったなデレク」

「へへん、どんなもんよ」


 二人は二匹の小動物をそれぞれ肩に抱えて、みんなのもとへと戻っていった。

 獲得した二匹を持っていくと、嬉しそうに二人を賞賛した。


「師匠のナイフを借りれば、内臓の除去と解体はできそうですね。経験があるので、任せてください」

「ああ、人手が欲しかったら言えよ」

「はい」


◇◇◇◇


 その日から、満足いく食事を取ることができるようになった。

 食料の悩みが解消されたことで、心に余裕が生まれたのか、みんなの顔色が明るく見える。


◇◇◇◇


 旅を続けてさらに二日が経った。

 道中、二箇所の関所や軍事基地を通ることになったが、先に来たフォルティス村の村民たちが事情を説明してくれていたのか、すんなり通行許可をいただいた。

 

 実は兵士から得た有力な情報がある。どうやらコルキオン王国に通ずる正門以外の跳ね橋は、防衛の観点からどこも上げられて通行ができないらしい。

 かといって正門が通れるかというとそういうわけではなくて、正門に通ずる広範囲の街道は、魔王軍の侵攻の危険があるので、通行禁止となっている。

 ではどうするかというと、まずホラントの森を経由して山道を登り、ビトーリア町に向かう。そしてエーデル鉱山内にある運搬用トロッコを使えば、コルキオン王国の橋の内側に入ることができるとのこと。

 なので、ひとまずホラントの森を目標に一行は歩みを進めることにした。

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