第16話 決戦
再び
第三王妃殿の地下空間のような場所に行けばいい。
地下空間に行くには?
「いや、さすがにそれはバカだろ」
すかさず
うっ……言ってみただけだもん……。
どうやって
「カイ女官の話をまとめると
言い合いが終わったらすぐロールプレイに徹するのさすがだなあ。
「見たところ変わったところはない。となるとカイ女官の方?」
「一度、カイ女官になりなさい」
「あ、はい」
言われるがまま変身をする。
姿を変えれば再び
「魔術の痕跡があります。何か心当たりは?」
「え、えーっと、あっ、チョウリンさんにおまじないしてもらいました。キスするやつ」
瞬間、
「は? キス?」
ピクピクと口元を引きつらせ、表情をこわばらせている。
あれ、素の
「最悪っ、
「ばっか、せっかくの痕跡消す気か!」
私の頬を服の袖でこすりだした
「離せ、
「落ち着け、殺せる相手じゃないのはわかってるだろ」
やんやと言い合う二人に混じり、声がする。
「来るというなら受けて立ちますよ」
そこには気配も前触れもなく、ただ当たり前のようにチョウリンさんが立っていた。
チョウリンさんは楚々としたたたずまいで笑う。
「カイ女官に施したのは移動の魔術。神からの贈り物を無下にしてはいけませんよ」
景色が変わる。
辺り一面真っ暗な空間が広がる。
離れた場所には両手を縛られ口をふさがれた状態で横たわる
ここは、あの地下空間だ。
気づくと同時におぞましい気配が私を襲った。
空気が変わる。
のどがつまる。
息が苦しい。
神と相対する空間ってこんなにも怖いところなの?
誰もが動けない中で、チョウリンさんが音もなく動き出し、私の手を掴む。
「ねえ、あなたが遊んでくれるなら
「っ──」
悪魔のささやき、神のお告げ。
これは本当のこと?
だったら私が連れて行かれる前に
「騙されんなっ!」
「!」
口を開き「はい」と答えかけていた思考をかき消すように
「
「はいっ!」
今、私、完全にチョウリンさんとの取引に応じるつもりでいた。危なかった。ここで
私たちの目標は「
「面倒だな」
チョウリンさんの声が聞こえ、ズズズッという音とともに植物のツタのようなものが地面いっぱいに張り巡らされたかと思うと、ツタは私の脚を掴み上げた。
「きゃっ!」
「カイ女官捕まえました」
そのまま私は宙に吊り下げられる。
ツタだと思っていたものはチョウリンさんの手から伸びた触手で、あまりのおぞましさに視界が一瞬揺らいでしまう。
これはまずいかも。
それに私がここにいるせいで
だったら一か八か。
「
この場にいる私以外の誰もが何をする気かと困惑しだす。それでも、二人なら動いてくれるはず。
「『おしまいおしまい』」
ロールプレイを終わらせ
「っ」
「くそっ」
男子二人が同時に動き出すのが見えた。
やっぱり頼りになる。
「『
え、ロールプレイするとそんなこともできるの?
チョウリンさんは頬から流れる血をグイっとぬぐいながら、
「ああ、そういえば、私を封印するために召集された妖怪退治屋でしたね。見慣れない技なので驚きました」
「ハッ。顔から表情消えてるぞ。余裕なくなったんじゃねえのか」
「まさか。そちらこそ連発しないところを見ると限りがあるのかな。切り札きかなくて残念だね」
「後ろに下がってて」
邪魔にならないようできるだけ身を縮こまらせながら待つんだ。
「『エンド』」
ロールプレイ終了の合言葉とともに、ドドドドドと勇ましい足音が鳴り響く。
「ぶっとべえええ!」
高く舞い上がった
当たってはない。
けど、衝撃波だけでチョウリンさんを吹き飛ばしてしまう。
余波で私まで吹き飛びそう。ひしっと
そこにはポニーテールで、背が高くてスラッとしてて、パッチリしたお目々のかわいい女の子、
「二人とも大丈夫?」
格好いいなあ。
まるでヒーローみたい。
ずっと助けられてる。
手をつかむと、強い力で立ちあ上がらせてくれた。
「
「うん、大丈夫だよ」
「また無茶して」
うっ、お説教。
「あ、あの、無策で臨んだわけじゃなくて、
「あ、え、あっ、か、
「お願いだから無茶しないで」
絞り出すようなかすれた声でつぶやく。
心配をかけさせてしまった。
「……ごめんなさい」
返事はない。その代わりきつくきつく抱きしめられる。
あれだけの攻撃を受けたのにチョウリンさんはまだ立っている。
「ったた。魔術は反則じゃない?」
「うるさい。元の身体に戻ったんだからもうあんたなんかこわくないわ」
「本当の切り札ってやつ見せてやるよ」
「うあっ、やだなあ。まだやる気なんですか。降参、こうさーん」
ふざけた口調で両手を上げて座り込む。
「お前の言葉は信用できない」
「いつまでも
「え~、血気盛ん。いいよ大人しく封印されてあげます。無意味ですけどね」
「うるさい」
チョウリンさんの軽口を一蹴し、腕に着けていた組みひもに触れる。
「奥義『四神方位』」
地面が淡く光、チョウリンさんを囲むように四つの柱が現れる。柱と柱にはガラスのような壁が張られ堅牢な檻となる。檻はみしっと音を立てたかと思うと、中にいるチョウリンさんごと小さくなっていく。
檻を楽しそうに眺めていたチョウリンさんは消える間近、私を見て手を振り小さく口を動かす。
曰く、
「またね」
そのまま檻は跡形もなく消え去っていった。
「さあ終わり終わり。さっさと帰ろうぜ、こんなとこ」
終わる。
終わる。
すべてが終わる。
チョウリンさん、「また」なんてないよ。私はここでおしまい。私が関わることは二度とない。
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