第10話 呼ばないの?
「あ、あの、元に戻って怪我もなくなったし、一人で帰れるから大丈夫だよ」
「僕が
「え、あ、私と?」
「うん。お話したいなって」
「え、え、私と?」
「うん」
なんで? 何を? 話すの得意じゃないから絶対つまらないのに、なんで私と?
気の利いたことが言えない緊張感に襲われながら、
「
「う、うん」
「怖い思いもしたし」
「うん」
「怪我もしたし」
「あ、で、でも
「──」
ぴたりと
ええ、なんでぇ。
大丈夫だよね。私お礼言っただけだよね。それとも何かまずいこと言ってしまったのかな。
「
「へ?」
「
え、んー、え。
どういうこと?
「カツヤ君は呼んでたよね」
「うん」
「
「私は
「うん!」
とっても大きな「うん」だった。さあ呼んでくれと言わんばかりの表情を向けられる。
「
呼んだ瞬間、
「あはは、なんだか照れくさいね。
なんだかわからないけど、
不快に思われてるんじゃなくて良かった。
つられて私も笑ってしまう。
「私も
「本当?」
「本当だよ」
「なら
「比べられないよぉ。私が知ってるコノカちゃんは
「そっか。……
照れた表情で頭をかく
あ、今わかった。私が
『僕のことは?』
そう言ったんだ。
そっか。
コノカちゃんみたいに人気者で常に周囲に人がいて堂々としている人を演じる
意外だな。
でも親近感もわく。
「ねえ、
「何?」
「無茶だけはしないでね。──ロールプレイをしている間、元の身体が死ぬことはない。でも、心は蝕まれていくんだ。最終的には自我を失い、動くことすらままならなくなる。
それはとても切実なお願いだった。
もちろん、この約束を嫌だなんて言うつもりはない。
「わかった約束するよ」
「ありがとう」
その後は明日からの授業の話や、
♦♦♦
夕食を食べて、お風呂に入って、明日の準備をして、ベッドに入り目をつむったところで、ふと
『ロールプレイをしている間、元の身体が死ぬことはない。でも、心は蝕まれていくんだ。最終的には自我を失い、動くことすらままならなくなる』
この言葉が嫌に、耳に残る。
もしかして
ただの憶測だけど、なぜか確信的なものも感じていて。
もしあるんだとしたら、それはコノカちゃんなんじゃないかという気がした。
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