第8話 初めまして、オレは
再び電車に乗って、校区内に戻ってきた私たち。
隣を歩く
「昨日みたいに突発的に怪物が現れることもあるけど、基本的にはちゃんと調査していくんだ。怪物に遭遇したやつの夢枕に立って、何月何日何時にここに来い言う。で、実際俺たちが赴く」
「へぇ~」
相槌を打つ私の声は若干低い。
「話を聞いて、対策立てて、退治する。わかったか」
「おうっ!」
ガッツポーズする腕は引き締まっている。
才波君はニッと笑って私の背を叩いた。
「じゃあ、いくぞ。カツヤ」
これが今回、私がロールプレイするキャラだ。
苗字の
名前の圧が強いし、男の子だし、性格真反対だし、うまくやれるか不安だけど、やるしかない。失敗したらその時だ。
どこに向かってるのかはわからないけど、とりあえず男子二人の隣に並び、おいていかれないよう歩く。男子二人って言うか、コノカちゃんの姿をした才波君と、特に何のロールプレイもしてない
昨日の
「
いつもと口調を変え、
「必要があればするよ、うん」
「そいつ、
「
横から茶々を入れた
「なんだよ、本当のことだろ」
「別にそんな理由じゃない」
「じゃあ記録帳開けよ」
「……」
あ、
「コノカちゃんには変身するだろ? 他はダメなのか?」
と問いかければ、
「
ため息まじりにそう返される。
「え、他のは何?」
「……初期のころに言われるまま作ったから変なのが多くて。
もうこれ以上聞いてほしくなさそう。
キャラはキャラ、
信頼の無さに落ち込んでしまう、のを、阻止するように、バシンっと勢いよく背中が叩かれた。
「おいっ。『
叩いたのは
「『
「困難な壁は当たって砕いていく……」
「わかってるなら、下を向くな、前を向け」
叩かれた背中はひりひりと痛い。でもおかげで目が覚めた。
そう、今の私は
だったら、答えるべきはこう。
「オレは
「……ありがとう」
ん、これは当たりの反応じゃなさそう。
なら──。
「オレ、
「そのうちね」
「自分と全然違うキャラでもできるってことだよな。尊敬する」
「
「オレ、コノカちゃんのこと好きだし、他のキャラも絶対好きになる自信がある」
「……、……」
それはあまりに小さな動きでなんて言っているかはわからなかった。
「おっ、あそこだな」
訊き返そうとした私の言葉は、楽し気な
男の子には見覚えがある。
「あれって
「そうだね」
私は同じクラスになったことはないし顔を知っているくらいの間柄だけど、確かコノカちゃんは一緒のクラスになったことがあったんじゃないかなあ。
「化け物退治してるってこと意外と隠してないのか」
「……基本的には隠してる」
「
「カツヤ、な」
「……僕とカツヤ君が行くから」
「任せた」
「今から僕たちは
「おう」
「どんな怪物と遭遇したのか知ることで事前の対策ができる」
「おう」
「コツは相手の警戒心をいかにほぐしていくか、だ」
「わかった。俺たちが任せて安心だって思ってもらえれば良いんだな」
「そうだね。そういうことだ。今回は僕がお手本見せるよ」
「助かる」
説明をされたところで、実際に話している姿を見ないとどうにもできない。
「もしかして変なの退治してくれるのってお前ら?」
見知らぬ人間に突然話しかけるほど怖い思いしたんだ。早く解決しなくっちゃ――。
「助かった。あ、俺、
いや、
素の私なら絶対まねできない感じだあ。
対する
「初めまして、僕は
「ああ。一昨日家に帰ってたら変な声が聞こえて、急に腕を掴まれたと思ったら血が出て……ほら」
言いながら
思わず顔をしかめそうになるのを、
「変な声っていうのは具体的にどんな感じ?」
「笑い声って言うのかな。クスクス笑う声がしたんだ」
「あーなるほど」
「なんかわかったのか?」
問いかければ、
「まあ、だいたいね」
と何でもない様子で返された。すごいな、今の情報だけでわかっちゃうんだ。
「人の血を吸う怪物だよ。普段姿は見えないけど吸血した後だけ姿を現すんだ」
「吸血。ドラキュラみたいな?」
「うーん、もう少しグロテスクな見た目かな」
私を怖がらせないようにか、遠回しな表現をする。想像がつかない。でも、実際に吸血された
「カツヤ君は何か聞いておきたいことある?」
「え、俺! うーん」
ベテランの
「腕、大変なことになってるけどよく無事だったな」
「ああ、うん。俺も死ぬかと思ったんだけど通りがかった同級生が助けてくれたんだ」
「すげえな。どんな子?」
「
「え……」
「え?」
「カツヤ君。落ち着いて」
「でも、あの」
「
「学校ではこのこと秘密にしてって言われた。二人はウチの学校じゃないしいいよな? あ、っていうか、
「そうだよ。だから学校では秘密にしてね」
え、あ、あっさりばらしちゃうんだ。
さすがにこの場で聞くわけにもいかなくて、二人の様子を眺める。
その後、遭遇した場所と時間、周囲に誰かいたかの聞き込みを終え、最後に
「その腕、二、三日中には治るから安心してね」
と告げ、
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