夏休み
のるん
※完結
「夏休み」
遠くから激しい雷の音が聞こえ、雨がいっそう激しくなる。ゲリラ豪雨だろうか、それとも台風の影響だろうか。この休みはあまり天気に恵まれず、外に出る機会も少なかった。学校でよく皆が話している「田舎」や「おばあちゃんち」も、両親共に日本出身の自分には関係ない。どこかへ旅行に行くあてもなく、クーラーの効いた部屋でただ身体を冷やしてひっくり返っている無為な毎日。それが私の夏休みだ。
ゲリラ豪雨はその昔は「夕立」と呼ばれていたらしたい。ゴーストダイブで調べてみると「夏の午後、昼過ぎから夕方ごろ降る雨。強い日射のため雨雲が発達するもので、短い時間に激しく降り、雷を伴うことが多い。」と説明されていた。もともと雨・風・波・雲などの気象(自然)が目に見えて起こることを「立つ」と呼んでいたらしい。「天から降り立つ」という表現と同義だろうか。折角のみやびやかな表現が失われていくのは残念だが、現在のゲリラ豪雨はもう「夕立」と呼べる規模ではなく、むしろ「スコール」と呼ぶ方が適しているだろう。
5000万年前、日本とハワイは飛行機で行き来する距離だったそうだ。それが太平洋プレートと北アメリカプレートの移動により、今や日本とハワイの位置は殆ど地続きだ。昔は四季というものがあったそうだが、日本も今や常夏の国。夏と冬の概念もなく、常に夏だ。だからここでは長期休暇のことはいつも「夏休み」と呼ばれる。
住みづらい環境に合わせて人間も生身の身体を捨てた。それでも義体が熱暴走しそうな時は、クーラーでこまめに冷却するのが欠かせない。
私は体温が一定以下に下がるのを待ちながら、二つの大陸プレートがまだ動き続けていることと、いずれその二つがぶつかったらどうなってしまうんだろう?とぼんやり考えていた。
夏休み のるん @noln_
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