第15話 転校生

ちゅんちゅんと雀がボクを優しく起こしてくれる。うるさいので翔梅を投げつける。外した。

うん。今日ダメかもな。さて日課の『アレ』をやるか……

ボクは肺いっぱいに空気を溜め込み一気に解放した。

「ヌゥァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

うーんイマイチだな。60点ってところか。

「おっはよー!きよた!」

「今日も元気いっぱいだねあやね。」

「最近毎日が楽しいの。あなたがいるおかげね。」

ボクは1度ベッドから起き上がった体をあやねと一緒に横になった。あやねのきめ細やかな髪がボクの鼻の前にあったので嗅いでみる。

クンカクンカ。あぁ〜いい凄いイイ。

ボクの鼻腔をあやねの甘い香りが支配する。

「あやねの髪はキレイだね。」

ボクは優しくあやねを抱きしめた。

そしてこの前の爆撃事件を思い出した。

「なんで、あやねは生き返ったのかな?」

「うーん。まっ私合気の才能あるからね」

「自惚れるなよ。」

ボクはあやねのおでこを優しくこずく。

イテッという可愛らしい反応をしていた。

今度こそはお前をお前の大切なものをボクが守ってやるからな。ボクは静かに決意した。

「そろそろ朝食にしましょ!」

あぁまたか。いい加減慣れないとな……

今日まで暮らしてきて何不自由ない生活をしてきた。だが、未だに謎のキノコ崇拝は受け入れられない。体質なのか?

ボクは憂鬱な朝食時間を乗り切り、平日なので学校に向かった。勿論あやねと一緒に登校だ。

「お、おいあんまりくっつくなよ、恥ずかしいだろ///」

「いいじゃんいいじゃん!!」

あ、やっべ、くそかわいい。もうちゅきちゅき

いいぜ。ボクは人間にどんな目で見られようがあやねを離さないぞ!いいだろー!

学園のマドンナだぞ!羨ましいだろ!へへん!

「じゃあ私こっちだから。放課後ね!」

「うん!またね!」

何気ない会話を交わして、ボクたちは各々の教室へ向かう。一限目は国語か……苦手なんだよなぁ。ボクは学生だが、勿論本職のことも忘れてはいない。例え学校であろうとあやねは仮にも下級貴族なのだ。学校の中にいても命を狙われる危険性があるのには変わりない。

ボクは勉強とあやねの守護をこなすだけだ。

こんなハードな日常も今のあやねとの関係性がなければ耐えられなかっただろう。ご飯の時以外は丸山家様々だな。

「よぉ!きよた!お前最近学校休んでたけど何かあったのか?」

「なんにもないよ。相変わらず元気そうだな山本。」

「まぁな。しっかし朝からあのマドンナとイチャイチャしやがって……」

「お前もはやく彼女作れよな。」

「俺は今絶賛頑張り中なの!」

ボクの唯一の友人山本と久しぶりの会話を楽しんでいると担任がドアをガラッと開けた。

「はい!お前ら席に着け!」

先生が教室へ入ってきた。ん?後ろに人影が見えるな。誰だ?転校生か?

「今日は転校生を紹介する。入ってきて。」

クラス一同がその人影に目を向ける。

彼女が入ってきた途端クラスの男子は歓声を上げた。女子は平常運転だ。

「初めまして!私、爆野撃子と言います!よろしくお願いします!」

彼女は可愛らしい仕草でお辞儀をした。

「はい、撃子さんの席はーきよたの隣だな。きよた色々学校のこと教えてやれよ!」

ゲゲッ マジか。まぁいっか。女子はあやね以外苦手なんだけどな。頑張るぞ!

「よろしく。えーっと爆野さん?」

「撃子でいいよ!えっときよたくん?」

「きよたでいいよ。よろしく撃子。」

「こちらこそよろしく!」

いい子そうで安心した。ボクはなにか新しいことが始まるという予感を胸に感じていた。




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