第11話 憧憬
俺は指定された地点へと着いた。
合気道の応用技『気』を自分を中心に同心円状に広げ、相手の『気』を感知する『索』を展開し、敵を探した。だが、感知に引っかからなかった。仕方が無いので声をかけてみる。
「おい、出てこい!」
俺は出せるだけの声を大きく張り上げた。
トコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコトコ
口元に大きな傷を持つ老人が1人こちらに近づいてきた。
「...お前が爆破の犯人か?」
「あぁ...」
男は淡々と答えた。まるで歯を磨いたかを聞かれた時のように、自然と答えた。命を奪うことが常日頃から行なっているやつの声だ。
「ギリィ」
俺は心の底から溢れ出る憎しみを唇を噛み耐えた。口内が鉄の味で溢れた。
「もういい。これ以上口を開くな。」
俺は『輪』を極限まで高め、身体能力を底上げした。そして老人へと殴りかかった。
手応えはあった。だが老人は何ら反応を示さない。ただ何も言わずにこちらを見ている。
俺は距離を取り、ポケットに仕込んでおいた、包丁を2本手に取り老人の目にめがけて抉るように突き刺した。はずだった...
確かに突き刺し、血が吹き出した。俺はこの事実を確かにこの目で見た。何が起きたんだ?
「...若いな...」
「なんだと?」
「貴様はその程度で己を強者と思い込んでいたのか?愛する者もろくに守れず、更には自分の身ひとつすら守れない。そのような脆弱な力は何一つ守れぬ。」
「俺だって...全て守りたかった...愛する者も自分の地位も、全て守りたかった…………」
これで俺はオワリナノカ?いや違うだろ。
まだ俺には最後の手段が残っている。だがあれは師範に禁止されていた最後の技だ。
でも、もう使うしかない。使わなければ勝てない。今のままじゃいけない。変わるんだ。
「合気道奥義『勁信』!」この『けいしん』という技は、最終奥義、諸刃の剣だ。だから迂闊には使ってはならない。なぜなら使ったら最後術者の命を燃やしきってしまうから。『気』とは心の臓が原動力だ。心臓に過剰分の『気』を流し込み、それを体全体へと流し込んでいく。
腕、脚、胴、脳。全てに過剰分の『気』を流し、筋肉を断裂、再構成していく。身体は激痛を脳に訴えるが、ドーパミンを大量に創り精神に快楽をもたらすため、一時的だが痛みは無いだが効果が切れると、激痛が身体を襲う。
断裂と再構成を繰り返す時に発生する
『身体エネルギー』俺はこれを『玉力』と呼んでいる。この『玉力』を他者の身体に流し込み細胞を破壊する。その際並列して、細胞分裂を一気にさせ、一生分の細胞分裂をさせる。
つまり、この『勁信』を発動している時、俺に触れれた者は否が応でも身体を崩壊させる。
老人は少し驚きを見せたが、すぐに渋い顔へと戻った。
「いくぞ。」
「...来い。」
俺は脚に『輪』を一瞬纏い、爆発的な推進力を得ながら、老人へと向かっていく。
俺はまず老人の左腕を触れるフェイクをし、
回し蹴りを胴体に叩き込んだ。
やった。これでいけ……
老人は触れたら何らかの弱体化を受けると
察し、即座に気弾を放ちきよたを吹き飛ばした
…は?なんだ?俺は確かに胴体に1発入れたはずだ。どうゆう事だ?俺に触れられたら1回でもオシマイなはずだ。俺はこんがらがった思考を加速させるが、理解することが出来ずにいた。
老人は少し間をとって、俺に話しかけた。
「青年よ、いいことを教えてやる。丸山家を襲撃しろと俺を雇ったのは、反キノコ教の長だ」
「なんだと?」
老人は構えた。これで終わりだと言わんばかりに。
その瞬間俺の四肢は4mほど吹き飛んだ。
俺は痛みこそなかったが、これで死ぬんだと本能で理解した。
「青年よ、お前はなかなかに筋がよい。それにその技…良い師を持ったようだな。だが、その技はまだまだ限界値までいっていない。その技を極めろ。そして反キノコ教を潰せ。私はアイツらが好かん。」
そうして老人は謎の助言をボクにした。
その後数分後ボクは意識を失った。
目覚めるとボクの四肢は元通りに治っていた。
動かせる。試しに抓ってみた。痛みもある。
どうやら正常なようだ。しかしなぜ治っているのか?それに技を限界値まで極めろ?反キノコ教を潰せ?何が何だかもう訳が分からない。
いろいろ考えていると、ふとあやねのことを思い出した。あやねは爆死だった。息もしてなく心臓の鼓動も止まっていた。もうあやねはこの世にはいないのだ。分かりたくないのに、もう分かっている。逃げようのない現実に叩きのめされている。だがこの結果をお義父さんに伝えなければならない。義実家に帰ろう。
ボクはあやねのことを想いながら義実家へと向かった。
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