第7話
俺達3人は雑談しながら歩いていた。
そこでショージの前世を聞くことができた。
「あ、僕は、お2人ほど若くないんです。死んだの47とかなんで」
「よ、よんじゅうなな!?」
17で死んだ俺より30も年上であることに驚きを隠せなかった。
「……戦死でした」
「え……」
俺とモモは言葉を失った。
「お2人が何時代に生まれたかはわかりませんが……僕は明治の終わり頃に生まれました」
明治と言われても、俺はあまり想像がつかなかった。
あのヒゲはやしたおっさんが沢山出てくる、覚えんのめんどくさい時代?
「僕、第一次世界大戦では日本が勝ってたんで、今回も勝てるんだと思って、自信満々に家族に『安心しろ、帰って来るから』って言っちゃって。……帰れませんでした」
そういうショージの表情は、笑顔だった。
「ははっ、懐かしいなあ。僕、娘が2人いたんです。それから、妻のお腹にも、男の子がいたんですよ。会いたかったなあ」
「ショージ……」
俺はなんて声をかければ良いか、わからなかった。
「そうそう、お2人は、何時代の方なんですか?」
ショージが、変わらない調子で聞いてきた。
きっと話題を変えようとしてくれているのだろう。
「え、えっと、俺は令和元年に死んだよ」
俺がそう言うと、モモが驚いた顔をしてから、
「あの、私は、平成初期に死にました」
と続いた。
「え、平成…?」
俺はまた、驚きを隠せなかった。
てっきり、モモは同じ令和を生きた人だと思ったのだ。
「れいわ? へいせい? なんですか、その時代?」
ショージが首を傾げる。
あ、そうか。ショージは昭和で死んでしまったから、平成以降の元号を知らないのか。
それに、モモも平成で死んでしまったから、令和を知らないようだ。
「あ、えっと、平成はね、昭和の次の時代だよ。それで、令和はその次」
俺がそう説明すると、2人は納得した表情で頷いた。
こんな雑談を続けながら歩いていると、先程まで歩いていた一本道が途切れ、広い草原についた。
「わっ、広いですね!」
「こんなに広いと、私たちがどっちに進んでるかわかんなくなりそうですね……」
「え、まってこれどこまで続いてんの?これ歩くとか無理……」
俺が絶望している横で、ショージとモモが、目をキラキラさせていた。
「わんわんっ!」「ウキ〜〜〜!」
そして2人は、鳴き声を上げながら草原に走り出した。
「えっ、ちょっ、2人とも!?」
動物の本能なのか何なのか、とても楽しそうだった。
「いや、モモなんてさっき『どっち進んでるかわかんなくなりそう』とか言ってたのに!そんなグルグルしながら走っちゃ、元も子もないじゃん!」
俺がそう叫ぶも、本能に従う彼らには届かなかった。
「まーまー桃太郎っち、一旦落ち着こ?」
「えっ?」
草原の中から、若い女性の声がした。
「動物なんだからさー、やっぱ草原見たら走りたくなっちゃうっしょ。あたしもそーだし?」
声がした方を見ると、1羽の鶴が草原に立っていた。
「つつつ鶴!?」
「あー、桃太郎っち、人見知り系?あーね。そんな緊張すんなって、あたしガラ悪くないしー」
鶴はそう言いながら、翼で反対側の翼の羽を整えた。
まさかの
しかもギャルって……
「あーあ、黙っちゃった笑。てかあたし名乗ってないわ笑」
鶴は自分の足のカラフルな爪を見ながらそう言った。
鶴がネイルしてんの!? ギャルだから!?
「あたし、
鶴がいることに今気づいたのか、モモとショージが動きを止め、驚いた顔で美湖さんを見ていた。
「ちょっ……桃っちは困ります! 私もモモなんで!!」
モモが声を張り上げた。
確かに、俺が桃っちだと、モモと間際らしくなる。
……って、そうじゃなくて!!
「そマ?んじゃ、桃っちと犬っちでガチヨロ!」
美湖さんがウインクをした。
初めて見た。鶴のウインク。
「え、あの、僕もいるんですけど……僕ショーz」
「あー猿は猿っちで。ダリィし」
「なんか僕だけ扱い雑じゃないですか!?」
ショージが自分もあだ名をつけてもらおうと話しかけたが、『ダルい』を理由に適当につけられてしまった。
「ショージ……どんまい」
「うぅ……桃太郎さぁん……」
ショージが半泣きで俺の足にスリスリしてきた。
うん。やっぱ猿もかわいい。
「ねーねー桃っちー、なんかメシ持ってねー?あたし、じいのとっから逃げてきてからなんも食ってなくてさー。ガチ萎え〜」
美湖さんが俺に近寄ってきて、両翼を差し出してきた。
「あっ、えっと、その……」
コミュ障発動☆
「あ、桃太郎さんなら、きびだんごを持っていますよ。それなら頂けると思いますが……」
モモが美湖さんにそう話しかけた。
ナイス、勇者モモ!
「きびだんごマ!? ちょっ、ガチ欲しい!」
美湖さんが俺の両肩を掴んで揺らしてきた。
「わあああ、わかった、わかりましたからあっ!」
俺は巾着からきびだんごを取り出し、美湖さんに渡した。
「み、美湖さん! えっと、はい、こ、こちら、きびだんごですっ!」
「桃太郎さん、流石に固まりすぎです笑」
ショージにも言われてしまった。
「あーん、ガチあざまる水産っ! 桃っち、ずっしょだよん!」
美湖さんはきびだんごを受け取ると、すぐにくちばしでつつき始めた。
「うまC!!」
美湖さんがそう言いながら片翼でアルファベットのCの形を作った。
「あ、あの、美湖さん。美湖さんって、その……Z世代だったりしますか?」
俺は勇気を出して、美湖さんに聞いてみた。
『ギャル』や、『Z世代』というものの存在を知っているのが、この場で俺しかいなかったからだ。
「そーだよん! それより桃っち、さん付けすんなってw みこっちって呼ぼ?」
美湖さんが上目遣いで俺を見てきた。
うっ、鶴もかわいいとか何なん……?
「そうですよ、桃太郎さん!『美湖さん』では、少し距離があるように聞こえますよ!」
「うっ、そうだけど……」
モモまで説得してきた。
「み、み、み、みこっち……」
「おっ! よきよき!」
美湖さ―――みこっちは、嬉しそうに羽をバタつかせた。
俺は観念して、美湖さんを『みこっち』と呼ぶことになった。
「桃っちって、鬼ヶ島行く感じ〜? ずっしょだし一緒に行くねん!」
みこっちがそう言ってウインクをした。
「え、あ、えっと、よろしく、お願い、します……」
俺はまだ、会って間もないギャルをあだ名呼びすることに慣れず、ぎこちない喋り方となってしまった。
「あっ、みこっち、桃太郎さん今この草原の広さに絶望してるんだよね。空飛べるんでしょ? 乗せてよ!」
勇者モモがみこっちにそう言った。
「あ〜ごめそ、あたしそんな飛べんし」
みこっちが眉をひそめてそう言った。
「えっ、そうなんですか……?」
ショージが聞いた。
「いやー、あたし鶴の恩返しの鶴に転生して〜あたし、あたしの羽抜いて布織るとか痛いしガチやってらんないし〜? じいに捕まって、そっから逃げてきたんよ! そしたら羽結構抜けてガチ萎え〜」
つまり、みこっちは鶴の恩返しの鶴に転生し、おじいさんの罠にハマり、殺されそうになるが、
「じゃあ、自力でこの草原を歩けと……?」
「そそ」
俺が絶望故にそう呟くと、みこっちが自信満々に肯定してきた。
「あ、ちなこの草原、12キロあっからガンバ〜」
そう言ってみこっちが上空に飛び立った。
「あたしゴールで待ってんね〜!」
「ちょっ、え!? 待っ……」
俺は文句しか無かったが、上空にいるみこっちには、声も、手も届かなかった。
「なるほど……じゃあ、桃太郎さん! ゴールまで競争ですね!」
モモが笑顔でそう言った。
「おお!それは燃えますね! 負けませんよ、桃太郎さん!」
ショージまでやる気に満ちていた。
「あのさ、俺運動音痴なんだk」
「よーい、スターーーート!!!」
モモの叫びで、3匹が一斉に走り(飛び)だした。
「あのぉーー!? 俺に人権は無いんですかーー!?」
俺の叫びは届かなかった。
〜ひと口momo〜
【次回予告】
なんやかんやで家来が3人揃ってしまった桃太郎。ここまで来たら、もう鬼退治をしてしまって、老夫婦の下へ笑顔で帰ろうかとさえ、思ってきていた。果たして、この草原を抜けた先には、何があるのだろうか?次回、9/13更新予定!お楽しみに!
【お詫び】
またまた更新日詐欺をいたしました。
言い訳はいつも通り、定期考査のせいです。
しかしその言い訳も明日で終わります。明日で考査終わります!!
カクヨム甲子園も諦めましたし、部活も再開して忙しくなるので、これからはのろのろ更新して行きます!
【訂正】
次回の更新予定、8月という名の過去に戻ってました笑
変更しました。また詐欺したらごめんなさい。
【9/18更新内容】
あまりにも酷いミスを発見しました。
修正しました。それだけです。
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