### 第5話:希望の光
瑠華は雷鳴の傍で彼の苦しみを見守りながら、
心の中で次第に自分の力量の限界を感じてい
た。雷鳴の傷は深く、彼の意識は再び薄れてい
く。彼を救うためにはどうすればいいのかを必
死に考えた。
「雷鳴、しっかりして!あなたがいなくなった
ら、私はどうしたらいいの…!」
瑠華は涙を流しながら、彼の頬に手を添えた。
彼女の絶望感が次第に膨れ上がっていくが、そ
の時、雷鳴が顔を上げて弱々しく言った。
「瑠華、俺を助けてくれるか…?村の近くに、
年老いた鬼の医者がいる。彼は特別な治療法を
知っている…」
雷鳴は彼女に必死に伝えようとした。
「でも、彼の治療法は…」
「何でもします。あなたを助けたい。お医者さん
のところに行きましょう!」
瑠華は握りしめた手で彼の手を強く握った。
*
雷鳴は、彼女の強い意志を感じ取り、微笑みを
浮かべた。しかし、その表情はすぐに苦痛に変
わる。
「その治療法は…君の血を必要とする。俺が君
の血を吸うことで、治癒の力を手に入れるはず
だ…」
瑠華は驚いたが、彼の言葉の意味を理解する
と、すぐに頷いた。
「それでいいの。私は大丈夫、雷鳴のためなら
何でもする!」
彼女の声には強い決意があった。
「そうか…。」
雷鳴は安堵し、瑠華の手を握りしめた。このま
ま彼女を守ることはできないかもしれないが、
彼女の温かい心が彼に力を与えていくのを感じ
ていた。
「さあ、急ごう!」
瑠華は雷鳴を支えながら立ち上がり、できるだ
け早く老医者の元へと向かうために森を進ん
だ。立ち上がることもままならない雷鳴を彼女
は支え、時折倒れそうになりながらも、彼の負
担にならないように気を配った。
*
路の途中、瑠華は雷鳴の言葉を思い出す。
「老医者は村の森を越えた奥に住んでいる…そ
して、鬼の中でも名高い医者なんだ…」
彼女はその言葉を思い出しながら、一歩一歩を
大切に踏みしめた。
*
やがて、二人は古びた小屋の前にたどり着い
た。瑠華の心は期待と不安でいっぱいになっ
た。
「ここが、先生のところ…?」
「うん、ここだ。」
雷鳴は弱々しく頷いた。
瑠華は小屋の扉を叩き、呼びかけた。
「誰か…いますか?」
少し時間が経つと、小屋の中から年老いた鬼の
医者が現れた。
「何の用だ?こんな時間に…」
彼の目は鋭く見えたが、瑠華は彼に向かって必
死に頼んだ。
「お願いです!私の友人が傷を負って…治療が
必要なんです!」
瑠華は自分の心の声を叩きつけるように訴え
た。
「ふむ、見せてみろ。」
医者は表情を引き締め、雷鳴の状態を見てすぐ
に察する。
「この傷、確かに深いな。だが、方法はあ
る。」
瑠華は胸を撫で下ろした。「本当ですか?治せ
るんですか?」
「だが、君の血が必要だ。彼の命を救うため
に、君が覚悟を決めることが大切だ。」
医者は真剣な眼差しを向けて、瑠華に説明し
た。
*
瑠華は心の中で、その重みを噛み締めた。
「私はその覚悟があります!」
彼女は即答し、雷鳴を助けたい一心で決意を固
めた。
*
医者は道具を準備し、瑠華に指示を与えた。
「まず、彼をここに横たえさせろ。」
瑠華は雷鳴を慎重に横たえ、彼の顔を覗き込
む。彼の目には痛みが宿り、意識が途切れそう
になっていた。
「大丈夫、雷鳴。すぐに治るから…」
彼女は優しく彼の手を握り、安心させようとし
た。
*
お医者は瑠華の腕に鋭い針を刺し、彼女の血を
取り始める。痛みを伴うが、その痛みは雷鳴を
救うためには必要なものだった。瑠華は必死に
耐え、彼を思い続けた。
「大丈夫…私はここにいるよ、絶対に助けるか
ら…!」
瑠華は思いの丈を込めて叫んだ。
*
そして、雷鳴の口に彼女の血が滴り、彼の体に
流れ込んでいく。医者は彼の傷を手際よく処置
し、その様子に瑠華も目を離せなかった。彼女
は雷鳴が元気に戻ることを祈りながら、全てを
捧げていた。
*
時間が経つにつれて、徐々に雷鳴の表情が落ち
着いていくのを感じた。
「やった、これは成功だ…!」
瑠華の心に希望の光が差し込む。
*
最終的に治療が終わると、老医者は一息をつい
て言った。
「大したもんだ、君の優しさが彼を救った。雷
鳴はもう大丈夫だ。」
「本当ですか…?」
瑠華は涙を流しそうになり、老医者を感謝の気
持ちで見つめた。
「彼は少しの間休む必要があるが、きっと元気
になるだろう。」
老医者は優しく微笑み、阿吽の呼吸を整えた。
*
瑠華は雷鳴の綺麗な顔を見つめ、彼が少しずつ
意識を取り戻している様子を見て胸がいっぱい
になる。
「雷鳴、頑張って!もう少しだから…!」
雷鳴は目を開き、瑠華を見つめた。
「瑠華…やったんだな…俺を救ってくれたの
か?」
「うん、あなたを守りたい一心で…」
瑠華は泣き笑いしながら彼の頬を撫でた。
「嬉しい、ありがとう…全ては君のためにでき
たことだ。」
雷鳴は微笑むが、まだ弱々しい。彼の気持ちは
瑠華への感謝でいっぱいだった。そして、彼ら
の心はしっかりと繋がっていた。
*
瑠華の努力と雷鳴の強さが、彼らの未来を照ら
す明るい希望となり、二人は互いの存在の大切
さに気が付いていた。
「私たち、一緒に乗り越えられる。これからも
ずっと…一緒にいるから…」
瑠華は心の底からそう願った。
*
雷鳴は彼女の手をぎゅっと握り返し、微笑を浮
かべた。二人の絆が、さらに強く深まっている
ことを感じながら、未来を共に歩む決意を新た
にした。
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