### 第3話:立ち向かう決意

瑠華と雷鳴は、闇に包まれた森の中で冷や汗を


かきながら走り続けた。村の人々、特に響たち


の声が遠くで響き渡るたびに、瑠華の心臓は急


速に鼓動し、恐怖が彼女を襲う。しかし、隣に


いる雷鳴の存在は彼女に力を与えていた。彼の


逞しい姿を見上げながら、瑠華は心の中で「私


はこの人に守られている」と確信を深めてい


た。


「このまま森を抜けてしまおう。村の近くに行かなければ、追ってこれない。」


雷鳴が息を切らしながら、冷静に指示を出し


た。瑠華は彼の言葉に従って、一歩一歩踏み出


した。



しかし、次第に彼らの背後で声が近づいてく


る。響が仲間たちと共に、瑠華の姿を見つける


ために必死になっていることが感じ取れた。「瑠華!逃げられると思うな!」


響の声が、森の奥深くまで響きわたる。


「早く!」


雷鳴が急かす。


「今、彼らに見つかるのは危険だ。」


二人は全力で走り続けたが、その瞬間、前方に


木立が途切れ、開けた場所に出た。そこで彼ら


は、響とその仲間たちに囲まれてしまった。瑠


華は立ちすくみ、恐れで足がすくんだ。


「見つけたぞ、瑠華!」


響はニヤリと笑い、彼女に近づいてくる。彼の


目には得意げな光が宿っていた。


「やめて…!」


瑠華は声を震わせながら叫んだが、恐怖で身体


が硬直していた。


「おい、鬼の彼氏も見つかっちまったな。」


響は雷鳴を見据え、挑発的に言った。


「お前には何もできないだろう。村の者に襲い


かかるなんて、死にたいのか?」


雷鳴は冷静にその言葉を受け止め、力強く瑠華


の前に立ちはだかった。


「彼女を傷つけるなら、私が相手をする。」


瑠華は彼の真剣な表情に心が震え、彼が自分の


ために立ち向かおうとしていることを理解し


た。彼女は自分を守るために戦ってくれる彼を


見て、次第に恐れが勇気に変わっていくのを感


じた。


「手を出させないよ。」

雷鳴は低く言い放った。彼の目は険しく、自ら


の恐れを押し込め、一歩前に踏み出す。



響は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに仲間た


ちに合図をして、襲いかかるよう命じた。


「やれ!」


瞬間、彼らは雷鳴を囲むように動き出す。瑠華の


心臓は高鳴り、彼が無事でいることを願った。


雷鳴は瞬時に反応し、仲間たちに向かって力強


く突進した。彼の姿はまるで怒涛のように迫力


があり、彼に触れる者はいないようだった。


「瑠華、下がっていろ!」


雷鳴が叫び、目の前の敵に向かって力強く鬼の


技を振り下ろした。一撃で一人を打ち倒し、


続けてもう一人に向かって飛び込む。迫力と俊


敏さを併せ持った彼の姿に、彼女は感動しつつ


その背中を見つめ続けた。



響は雷鳴の強さに驚きつつも、一歩も引かずに


剣を振りかざした。


「お前なんか、どうせ一人じゃ何もできない!」


雷鳴は彼の攻撃を受け流し、動き回る彼の視界


の隙を突いていく。彼の攻撃は正確に響に当


たり、強烈な打撃を与えた。その瞬間、瑠華は


彼の力強さに驚き、心から感激した。


「もう逃げられない!」


響は怒り狂った表情で再び襲いかかろうとした


が、雷鳴は沈着冷静だ。次の攻撃を待つように


準備を整え、残った仲間たちと向き合った。



瑠華は戦火が迫る中で、自分は何もできない無


力感に包まれた。しかし、彼女はただ突っ立っ


ているわけにはいかない。心に宿った愛と感謝


の気持ちが、彼女を動かす。


「私も…あの人を助けたい!」


瑠華は自分の心に決意を固め、そこから一歩前


に進み出た。自分の恐れを克服し、雷鳴の力に


なりたいと強く思ったからだ。


「雷鳴、私も手伝う!」


瑠華が叫ぶと、彼は一瞬驚いたように振り返っ


たが、すぐに集中を取り戻した。


「無理はするな、瑠華!」


しかし彼女にとって、今の彼を守ることが最優


先だった。瑠華は手近な木の棒を拾い上げ、心


の中で彼を支える決意を高めた。響に立ち向か


う鬼気迫る様子に圧倒されながらも、彼女はそ


の間に彼に何か力を与えられればと思ってい


た。



この戦いは、彼らの関係を試す試練でもあり、


彼女自身にも新たな自分を発見するチャンスだ


った。瑠華は自分もこの戦いに参加し、雷鳴と


共に立ち向かうことを選んだ。どんな結果にな


ろうとも、彼と共に進みたいという強い思いが


心の奥に宿っていたのだ。


「去れ!」


雷鳴は響に向けて叫び、再び怒涛の攻撃を繰り


出す。瑠華もその隙間を付き、響を警戒しながら


近づいた。



この日、彼女はただの少女ではなく、彼女の周


りの世界に立ち向かう存在へと成長する第一歩


を踏み出しつつあった。


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