第24話 呪いの解毒薬
「ということだから、あとは連れて行っておくれよ」
「え?」
立ち上がったわたしの目の前に、予期せぬ人物が立っていて息を呑む。
「フローラ……」
どうしてここに?
いえ、それよりも聞かれていた?
今まで見たこともない立派な装飾が施された衣装を身に着け、ジャドール……いえ、アベンシャールの末王子様がそこに立っていて、一礼をしたところだった。
見惚れてしまうほど、完璧な所作だった。
「泣かさないって約束したのに」
「申し訳ございません」
おばあちゃんがいたずらに笑い、悔しそうに彼は頭を下げる。
騎士としてではなく、本当の姿……王子様の姿の彼が頭を下げていた。
「ちょっ、おばあちゃん……」
「事後報告で構わないよ。今さらかと思うけど、一応嫁入りの娘だからね。節度を守ってくれればあとは好きにしてくれていいから。さっ、出ていった出ていった!」
「お、おばあちゃん!!」
なんてことを言うのか。
「さぁさぁ、もう休ませておくれ!」
と、おばあちゃんはふかふかのベッドに顔を埋める。
「わたしは病の身だからね」
先ほど魔女はそう簡単にはくたばらない……などと言っていたのはどこの誰だったか。
言うだけ言って取り残されたわたしは気まずすぎてうつむいてしまう。
「フローラ、あなたと話がしたい」
切なそうに揺れる榛色の瞳に、ボサボサの黒髪のみすぼらしい魔女が写っている。
「俺に、時間をいただけませんか?」
王子様にそう言われてしまっては、断るわけにはいかないじゃない。
半べそをかきながら、こくりと頷くとさっと手を差し伸べてくれる。
そのスマートな態度は変わらない。
変わらないからこそ、また歯を食いしばるしかなかった。
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