第18話 不穏な影が魔女を襲った日
「おはようございます、フローラ」
寝付けなくて重い頭を抱えて起き上がったわたしとは裏腹に、ジャドールはとっても生き生きしていてオーラがいつもと比べてさらに威力を増しているのが目で見てわかった。
「あのあとはゆっくり休めましたか?」などと言って、いつものように許可を得るわけでもなくそのまま頬に口づけてくる。
「っ!」
「今日の予定はありませんから、ゆっくり過ごしましょう。食後にあたたかいハーブティーをお入れしますから」
昨日買ってきたんですよ、と彼はルンルンだ。
状況についていけなくなり、唖然とするわたしは昨日わんわん泣いていた自分が嘘のように思えた。
考えたいことは山ほどあったけど、考えがうまくまとまらない。
考えようと思うときに限ってあのお花畑全開のシーンが脳裏をよぎり、それを打ち消すのに必死になっている間にどうでもよくなってきてしまうのだ。
恐ろしい。
まるで忘却術のような効果であると実感させられた。
コンコン、と窓辺に気配を感じて視線を送ると、モフモフが外の世界でゆったりと浮遊しているのが目に入った。
「おはよう、モフモフ! 今日もありがとう」
窓を開けるとモフモフが小さな唇を尖らせ「モフッ!」という声をあげて近づいてくる。
いつもながらかわいくて癒される。
モフモフにくくりつけられた手紙を手に取り、ありがとね、と頭をなでると嬉しそうにモフモフは飛んでいく。
いつもより仰々しい装飾で縁取られた封筒に嫌な予感がする。
(ま、まさか、こんなにも早く……)
震える指先が形など気にせず封を切っていく。
記された文面にめまいがした。
モフモフは、王家の使いだ。
王家の人間にしか、扱うことができない。
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