第34話 シュバルトとハイゼン



──今から10年ほど前──


ガサッガサッ…!ガコンッ!


「ガーッ!ガーッ!……グルルル…!」


突如鉄の檻が出現し、魔物を閉じ込めた。

檻は何もない空間から出現し、檻に入れられた魔物もひどく混乱しているようだった。


「おーおー、これまたでかい獲物が捕獲できたな。こいつは手懐けられそうか?」


陽の光が届かないような暗く生い茂る森の中、男が二人檻の前に佇んでいた。


スキンヘッドの男がもう一人の男に問いかける。


「どうだかな」


もう一人の男はスキンヘッドの男の方を見ずに答える。その男は全身に甲冑を纏い、頭部には兜を被っている。兜のせいで、少し声がくぐもっている。


「ゲッ!よく見るとこいつ首がねぇぞ!他の魔物にやられたのか…!?」


「いや、これはこういう“種”なんだ。この辺りに生息する“首無し怪鳥”の成体だね。目や耳がないから、自分の羽から出る音波の反響で周囲の状況を把握している。『エコー・バード』と呼ばれている」


「『エコー・バード』?聞いたことねぇや!…よし、こいつ連れて帰るか!面白そうだしな!」


「ふん。“次将”を務める者であれば、サンカエルの地形や生態系は把握しておけよ。戦場において、その情報が命に関わることもあるからな」


甲冑の男は、スキンヘッドの男をいさめる。


「へーへー、天才様の言う通りで。こちとらIQが低いもんで、女の名前と上手い飲み屋の名前しか覚えられねーんだわ」


スキンヘッドは開き直るように言う。

甲冑の男に言われたことで少し機嫌が悪くなったのか、声に荒々しさが出る。


「で、こいつはどこから飯を食うんだ?」


「足の裏だ。獲物を足の鉤爪で捕らえ、足の裏から肉を接種する」


「うへぇ…!本当だ!足の裏に穴が開いてら」


首無し怪鳥の足の裏に“口”と思しき穴が空いている。その穴から蛇のような細い舌と赤黒く鋭い牙のようなものが時折姿をみせていた。


「こいつはしばらくここに置いておいて、餌付けで飼いならしていくかな」


「お前も物好きだな。お前自身が餌にならんように気をつけるんだな、ハイゼン」


スキンヘッドの男はにやりとして、甲冑の男を見る。過去に拷問で受けたであろう顔中の切り傷が、痛々しく見える。


「その時はお前のように甲冑を着て世話をするさ」


「それにしてもどうしてお前は、魔獣を飼いならそうとしてるんだ?この前も『肥満竜ひまんりゅう』や『鬼蝙蝠おにこうもり』も捕獲していたが、何か意味があるのか?まさか、その見た目で動物好きとか言わないよな?」


甲冑の男の表情は見えないが、声に嘲りが含まれているように聞こえる。

しかし、ハイゼンと呼ばれた男は気にしている様子はなかった。


「俺の固有魔法の『罠魔法』は発動まで時間がかかる上に、罠が不発だった時に自分を守る術がねーからよ。生き残るためには“守護者ガーディアン”が必要なのさ」


「なるほどな。しかし、そのために“国兵(※専属の部下)”がいるんじゃないか?護衛してもらえばいいじゃないか?」


「あんな雑魚共に自分の命預けられるかよ。相手が“国将”や“次将”級ならもっと強い力がいる。次将を務める者なら万が一に備えて、自分で自分を守る術をみにつけなきゃな……だろ?」


甲冑の男はやれやれと言ったように首を振った。しかし、長い付き合いのためか、ハイゼンが一度言ったことを曲げるような男ではないことも知っていたため、それ以上は何も言わなかった。


「……赤鼠あかねずみ


「…なに?」


「その鳥は赤鼠という小型の魔獣を好んで食べている。この森にもいると思うが、俺の家敷の隣の森にはもっと棲み着いている。うちの使用人達に捕獲するよう言ってみるよ」


その言葉を聞いて、ハイゼンは一瞬キョトンとした顔になり、再びにやぁっと笑う。


「ありがとな、シュバルト!お前、やっぱいいやつ!」


───その夜───


サンカエル王国 天星城にて、国将及び次将に招集がかけられた。

サンカエルの軍のトップ達を集める理由は、来たる大戦に備え、軍の士気をあげること、そしてもうひとつあった──


城内の長い廊下を歩き、招集がかけられた大広間である霹靂へきれきに向かうシュバルトとハイゼン。

石畳と甲冑の金属のぶつかる音が反響する。

ハイゼンは、高揚する気持ちを抑えられないでいる様子だった。


「ついにきた…!ついにきた…!招集だ!」


「そう昂るなよ。子どもじゃあないんだから」


そう言うシュバルトも、内心はやる気持ちを抑えられないでいた。ハイゼンの様に全面には出さないが、招集の内容を早く知りたいためか、自然と足早になる。


「これで俺達も一つの軍を動かせる権利が得られるわけだ。ディールの下にいたら好き勝手暴れられねーからな!ついに俺達も…」


「まだそうと決まったわけではない」


「いや、あの時と同じだせ!ボロスが国将になった時も、同じく大きな戦の前の招集だった!その時もたかだか軍略会議に国将と次将全員が招集されたんだ。しかも今回は…」


「…国王がいる」


ハイゼンの言葉に、堪らず言葉を続けてしまうシュバルト。

口では否定するが、シュバルト自身も内心期待していた。

今回の会議は、改めて軍の士気を上げるためだけのものではない。


来たる大戦…ガイドシロンでの戦いが目前に迫っている。ガイドシロンは敵国の都市の中で最大級の規模をほこり、同時に敵戦力も集中する都市になっている。

そこを攻め落とすにあたり、攻め落とすための経路を複数確保する必要がある。

そのため、軍を束ねる最高指揮官を新たに据え置き、攻めの流動性を高めなくてはならない。


最高指揮官を新たに据え置く──つまり、新たな国将の任命である。


そして、国将の任命の際には、国王の宣言が必要になってくる。


国王がいるというところで、国将の増員される可能性は非常に高い。


シュバルトは確信している…!


他に国将に、相応しい人間はいない。

今回の招集で、間違いなく俺が国将になるんだ!

この俺が…!ついに…!


二人は霹靂の間に到着した。


中にはすでに過半数の国将と次将が集まっていた。


「……来たか。席に着け」


大広間の中央にいる金色の鎧に見を纏う国将達の長…軍のトップであるノリエガがシュバルトとハイゼンの姿を見るなり指示をした。


「遅れてすんません!」


ハイゼンは一番扉に近い所の席に着き、シュバルトもその近くに座る。


ノリエガの言葉に、心の奥で野望が揺らめいた。


(上下関係がついているのは今だけだ。もうすぐお前と対等になる。そしたら、お前をその座から引きずり降ろしてやるよ、ノリエガ!)


兜でシュバルトの表情は誰からも確認できないが、ギラリと笑う表情がそこにはあった。


(もうすぐだ。ストロングシールド家の復讐はここから始まる。まずは国将…次に軍のトップだ…そしてゆくゆくは……)


(俺が王になる)


シュバルトはじっとサンカエル国王であるアルベイラを睨みつけた。



しばらくして、全ての将が招集されたところで、ノリエガが開会の宣言を始めた。


「…それでは、全員揃ったところで、サンカエル軍略会議を始める。まずは3日後のガイドシロン戦について、各軍の指揮関係の確認だが、その前に…」


ノリエガはちらりと国王を見てから話を続ける。


「…軍の指揮力の向上のため、各軍の人員を縮小させ、統制力を上げようと思う。そして、縮小された人員により新たに軍を新設し、ガイドシロンの戦いに備えることとする」


みなまで聞いていないが、予想通りの流れにハイゼンとシュバルトは興奮を抑えられないでいた。


「…そのために、この中の次将2名を国将を昇格させ、新設軍の指揮権を握ってもらう。覚悟はいいか?」


(二人もかよ!間違いねぇ!俺とシュバルトだろ!?)


ハイゼンは結果は見るまでもないと言わんばかりに、シュバルトの方を振り返る。

その顔は勝利を確信している。


(お前が選ばれるかは知らんが、俺は国将になるだろうな。まぁ、階級が変わってもエコー・バードの世話は一緒にしてやるよ)


シュバルトは手で払うようなジェスチャーをして、ハイゼンに前を向くよう促す。


ハイゼンが前を向いたところで、ノリエガが昇格させる次将の名前を呼ぶために口を開いた。




「……まずは、一人目……アントーン」


「はぁっ!?」


ガタッと勢いよくハイゼンが立ち上がった。

予想外の名前が呼ばれたことにひどく驚いた様子だった。

ノリエガが冷静に進行する。


「……なんだね、ハイゼン?何か言いたいことでもあるのか?」


途端にハイゼンの全身に剣で刺すような激痛が走る。拷問を受けた経験があり、ある程度耐性のあるハイゼンの身体にも耐え難い痛みだ。


(ぐっ…ノリエガの『殺気魔法』か…!)


「…いや…何でもない」


そう言うと、ハイゼンは弱々しく着座した。

大人しく座るハイゼンの一方で、シュバルトは冷静に思考していた。


(アントーンか。まぁ無難だろうな。やつの魔法は特殊で敵の魔法を無力化する魔法。また『感知魔法』に秀でており、索敵能力は軍内一の魔法使いだ。少なくとも、ただ罠を張り、守勢で戦わなくてはいけないハイゼンを国将にするよりははるかに役に立つだろう)


アントーンは王の前に行き、国将の証である腕章を受け取る。


(次こそは、俺が…!)


緊張のためか、シュバルトの握る拳に力が入る。


(俺としたことが…冷静に……物事は順当に進む。次の指名を待てばいい。ただそれだけだ)


シュバルトは静かに息を吐く。


そして、ノリエガが二人目の昇格者の名前を読み上げる。


「…二人目の国将への昇格者は…」


(……俺だろ…!)





「……キール。前に出ろ」


(……なっ!?なに!?キールだと!!?)


シュバルトが座る遥か後方から、どこか他人事のような魔女の声が聞こえた。


「むっ、わたしか?あまり人の上に立ちたくはないのだがな」


そこには腰を重そうに持ち上げる魔女がいた。

その魔女はゆっくりとノリエガとアルベイラの前に進んでいく。


そして、先のアントーンと同じ様にアルベイラから国将の腕章を授かった。

キールはそれを左の腕に通す。その顔には選ばれたことへの喜びや使命感等は感じられず、煩わしさのみを漂わせていた。


「…では、新国将キール…一言もらえるか?」


「そうだな、栄誉ある地位をいただけたこと、誇りに思う。国将の名に恥じぬ戦果を上げ、これからも国に貢献させてもらうよ」


そう言うと国王や将軍達に一礼し、すでに呼ばれているアントーンの傍に移動した。


そこで、国将の任命式は終了し、その後軍略会議が進行していった。


新たに誕生したキール軍、アントーン軍の陣形や指揮系統の確認が行われていく。


そして、何事もなく会議は終了した。


会議終了後、シュバルトとハイゼンは天星城内の別室で今日の国将任命式についての愚痴をこぼしていた。


開口一番でハイゼンが、誰もいない部屋で怒鳴り声をあげていた。


「ありえねーだろ!?なんで、アントーンとキールなんてポッと出の奴らが俺等を差し置いて、昇格してるんだ!?」



「………」


シュバルトは腕を組み、ハイゼンが怒る様子を静観している。内心はハイゼンと同じく叫び声を上げたい衝動に駆られていたが、抑えこんでいる。


「国将が6人もいりゃあ、この先新たな任命も当分先だろうな。もうサンカエル王国から抜けて、別の国に亡命してやろうか!?こんな国になんも未練なんてねーからよ!もっと俺の実力を認めてくれるところで…」


言葉の途中で、ハイゼンは近くの椅子を勢いよく蹴り倒した。


二人きりの部屋にガコンッと転倒する音が響いた。




「……何をしている?」


不意に部屋の外から声が聞こえた。


途端に身体全身に圧がかかったような息苦しさに包まれる。


(この圧は…)


部屋の扉が開き、金色の鎧に身を包む男が一人入ってきた。


「これはこれは、ノリエガ殿。この部屋に何かご用で?」


国将ノリエガがジロリと二人を品定めするような視線で見並べていた。


「…先程は会議の出席ご苦労だった」


ノリエガの入室の意図は分からない。シュバルトの方を向き言葉を続ける。


「……残念だったな。お前らのことは国将に推薦していたんだがな。国王からよい評価が得られなかったようだ」


「何が言いてーんすか?慰めの言葉ならいらないっすよ?」


「我々は自身の実力が不足しているということで納得している。これからも精進するのみです」


そうは言ったが、内心納得はしていない。しかし、この場を早く収めたいため、ノリエガに本心と真逆のことを伝える。


「…お前らには実力がある。しかし、国将に必用なものはそれだけではない。軍の統率力、国民からの信頼・人望、人間性……そして王からの信頼…」


「王…?」


「…ハイゼン、お前は優れた固有魔法を持っている。しかし、国民や軍の人間からの信頼は絶望的だ」


「なっ…!?」


「…森の奥で魔獣を飼っているそうだな?それを見たやつが教えてくれたよ。魔獣は危険な存在だ。そんなもの見られたら、不信感を抱かれても仕方がないだろう?」


「ぐっ…ああ、そうだな」


その後、ノリエガはシュバルトの方へジロリと視線をやる。


「……シュバルト、お前は軍人としての成績はとても優秀だ。部下からの信頼も厚く、軍もよく統率されており、多くの戦果を上げている。次将として、申し分のない実力を、持っていてる。だが…」


シュバルトは黙ってノリエガの話に耳を傾ける。

ノリエガの言う通り、自分はサンカエル王国のため、申し分のない働きをしている。しかし、なぜ評価されないのか…なぜ国将になれないのか…

回答の出ない疑問がぐるぐるとしている。


その答えがいま聞かされる。


「……お前が…“ストロングシールド家”の人間だからだ」


…なに…!?

なぜ、こいつが“ストロングシールド”を知っている!?


「……アルベイラ・サンカエル国王と対立していた一族である“ストロングシールド”の末裔。それだけの理由でお前は国将になれていないんだ」


そんな…

それだけの理由で…


シュバルトは言葉を発さなかったが、怒りで微かに拳が震えていた。


「………悔しいだろう?お前が“ストロングシールド”の人間というだけで、お前を昇格させなかった。これはアルベイラ国王の…いや国の意思だ」


「それなら…我々にも考えがある。この国を出て行き、サンカエルを破滅させよう。我々も軍人である前に一人の人間。自身を評価してくれる組織に属したいと考えるのが普通だろう?初めからそうすればよかったのだ!」


シュバルトはノリエガに背を向け、その場を立ち去ろうとした。

その背中にノリエガが言葉を投げかける。


「……『千人魔法』を知っているか?」


「『千人魔法』…?」


聞き慣れない言葉に一度歩みを止める。


「……ああ…『千人魔法』だ。千人分の魔力を使い、一つの固有魔法の効力を何倍にも引き上げる魔法だ」


「聞いたことねぇな。で、その魔法が何をなんだってんだ!?」


「……世界中の人間を支配し、サンカエルに忠誠を誓わせる。『千人魔法』でならそれが可能だ」


淡々と話すノリエガに、シュバルトは疑問をぶつける。


「ノリエガ殿、一つの固有魔法と言ったな?誰の固有魔法を使うのだ?」


「……『反則の魔女』」


「あの女の魔法か?ついさっき国将になったばかりの!?」


「……そうだ。そのために・・・・・国将に推した。戦場から目が届くとこにいてもらい、いつでも死体が回収できるようにな」


「死体?」


「………固有魔法の元になる魔法使い・魔女の肉体は“依代”よりしろと呼ばれる。『千人魔法』の発動にはその“依代”が不可欠なのだ。


そして使用するのは奴の固有魔法てある『反則魔法』…それは、どんな魔法でも使うことができる。しかし、どの魔法も生涯に一度しか使えない。奴の反則魔法から奴隷魔法を抽出し、千人の魔力で力を増幅させ、世界中の人間を服従させる。その場合、“依代”と千人の魔法使い・魔女は死に至るがね」


「だが、それだけの犠牲を出せば……世界を支配できるってわけか!」


「本当に上手くいくのか?そんな魔法本当にあるのか?過去に成功した例はあるのか?」


「……サンカエルの古い文献に『千人魔法』を成功させた記録は残っている。だが、千人と一人を犠牲にする非人道的な魔法のため、公には伝えられてはいないがね」


その後、ノリエガはこの部屋に来て、初めてグニャリと口元を歪め、笑った。


「……まぁ、仮に失敗しても人が大勢死ぬだけだ。こちらに損はない。試す価値はあると思わんか?」


「大勢が死ぬだけって…!」


さすがのハイゼンも言葉を失っているようだった。


「……サンカエルがこの世界の頂点になり、アルベイラ国王がこの世界の王として全人類の頂点に君臨する。お前らも協力してくれたあかつきには、それなりの地位をやろう」


「地位か…」


(確かにこのままここでは、人生くすぶって終わるだけだ。ノリエガの話に乗り、『千人魔法』の発動に協力したほうが、いいんじゃねーのか…?)


話のスケールが大きく、いまいち現実味のない話だが、ノリエガはつまらない嘘をつくような男ではないことも知っているため、ハイゼンは決めきれないでいた。


シュバルトの方をちらりと見る。


腕組みをしてノリエガの話を黙って聞いている。

そして…


「協力しよう」


「マジか…?」


「…賛同してもらえたようでよかったよ」


「かねてより戦争の終結はわたしの望むところではありましたからね。どんな形であれ、無駄な争いの起こらない世界にするため、わたしも協力しましょう」


「……そうか、いい返事をもらえてよかったよ。…まぁ今日はもう遅い。また後日詳しい話をさせてもらおう。今日はゆっくり休みたまえ」


ノリエガはカツカツと足音を鳴らし、扉の方に歩いていく。


「……ではまた」 バタン


扉が閉まり、再び二人きりになる。

ノリエガの足音が遠ざかると、すかさずハイゼンが口を開いた。


「おいおい!シュバルト本気かよ!?ノリエガに協力するのか?お前戦争のない世界なんて望んでいたのかよ!?」


「協力?するさ」


「お前、国王のこと憎んでるようだったから、絶対協力しねーと思ってたぜ」


「協力……途中まで、ね」


「途中?」


「“依代”となるキールの死体が出に入り次第、ノリエガを殺し、王も殺す。『千人魔法』は俺が使う…!」


「!?……やっぱさすがだわ。その野心を買ってんだよ、俺は!やつらが『千人魔法』の条件を揃えたところで、横から掻っ攫うんだな!」


「その通り。俺にとって、国王に忠誠を誓うなど、天地がひっくり返ってもあり得ないんだよ」


ちげーねー!」


カッカッカッとハイゼンは高らかに笑う。


「『千人魔法』とやらを俺も調べてみよう。本当に実在するなら、使わない手はない。アルベイラ・サンカエル…サンカエルの一族への復讐するための最高のカードになるだろう…!」


「奴らに一泡吹かせてやろうぜ!ついでにキールも殺せれば、今日の鬱憤うっぷんも晴れるってもんだ!」


「ああ、そうだな。協力してくれるかい?ハイゼン」


「当然さ!お前について行きゃ、おもしれぇことになりそうだ!この国もサンカエルもノリエガもキールもぶっ潰してやろうぜ!」


「おおとも。そして、我々が世界を支配する。そしたらまずアルベイラ国王を俺の前にひざまずかせてやろう」





待っていろ、ストロングシールドの祖先達よ。

貴様らの悲願は、この俺が叶えてやろう。


もう少しだ…もう少しだけ、道化を演じよう。

再び、ストロングシールドの名前が称えられる世の中になるまで。


こうして、シュバルトとハイゼンの静かなる画策が始まったのだった。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る