第15話 フェイト③ 同情はしない
※まえがき
一人称です。
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早朝だし、フェイトはまだ寮にいるだろう。
そう考えて、裏口から侵入することにした。
なにやら外でいざこざが起きているみたいだから、ちょうどよかった。
騒ぎに便乗してフェイトに接近できるから。
ラミュの魔法で裏口を爆破し、中に入ったときはさすがにギョッとした。
大勢の男女がいたからだ。しかし、侵入が察知されていたわけではないとすぐにわかった。
あちらさんも驚動していたからだ。
たまたま、偶然集まっていたのだろう。
おそらく生徒であろう者たちが、私たちをじろじろと見つめる。
「だれ?」
「フェイトの仲間?」
「どの学年の子?」
ひそひそと、私たちの正体について考察しあっている。
さて、どうするか。
「お前ら、この学校の生徒じゃないな」
「悪役令嬢協会の者だ。フェイト嬢に呼ばれてやってきた」
「なに!? 悪役令嬢協会だと!?」
男子たちが剣やら杖を構えた。
妙だな。
「くそっ、コーロどうする?」
金髪の、爽やかな顔立ちの男が姿を見せる。
「殺すしかあるまい。悪役令嬢協会は俺たちの敵だ」
「敵?」
「あぁ、僕たちは
「なるほど、噂は聞いたことがある。なら正体を偽る必要もないな」
「?」
「私も似たようなものだ。悪役令嬢を潰しにきた」
足を動かし、人ごみをかき分ける。
物置として使われている部屋に、目当ての女がいた。
長い桃色の髪をした、寝巻き姿の女。
彼女がフェイトだろう。
それと、胸を貫かれ死亡している、別の女子。
「フユリンさん、なんか修羅場って感じですねっ」
「静かにしていろ」
「はいっ!!」
フェイトは悪魔に取り憑かれたような、鬼気迫る表情で、こちらを睨みつけていた。
「来るなら来い!! ひとりでも多く道連れにしてやる!!」
いままさに殺されようとしていたのだろう。
それほど『悪い女』だったわけだ。
コーロが前に出る。
「まさか君ら、どこかの反悪役令嬢のメンバーかい?」
「違う。私に仲間などいないし、必要ない。群れるのは嫌いだ」
「ふーん。敵じゃないならいいさ。でも申し訳ないが、こいつは僕が殺す。悪を屠った英雄にならなくてはいけないからね」
剣を構えた。
瞬間、フェイトがコーロに飛びつく。
押し倒して、首を締め付ける。
「お前だけは!! お前だけは!! お前だけは!!」
「くっ、悪役令嬢拳法か!! だ、誰か!!」
他の男子がフェイトを蹴り飛ばした。
打ちどころが悪かったのか、フェイトは腹部を抑え悶絶している。
「コーロさん、さっさとやっちゃいましょうぜい」
「そうだな」
フェイトが上半身を起こした。
「なんで、なんでこんな目に……マイリンさんは、何も悪いことをしていないのに!! うああああああ!!」
「ふん、君に手を貸したあいつが悪い。悪役令嬢の時代が終わり、僕の時代になるというのに」
「マイリンさんは、誰よりも、誰よりも優しくて、素敵な人だったのに」
「イジメていたお前が言うか? だいたい、長距離マラソンのゴール手前に虫がいたら、構わず踏みつけるのは普通だろうがァ!!」
「マイリンさんは虫じゃない!!」
ラミュが私の腕を引っ張ってきた。
困惑している様子だった。
「フユリンさん」
「どんな理由があろうと、悪役令嬢に同情する気はない」
「うぅ……」
「だが」
コーロに質問する。
「こいつはそんなに悪いやつだったのか?」
「あぁ、殺すに値するほどにね。そうじゃなくても、フェイトは悪役令嬢協会会長、マリアンヌと親しい。殺せば、さすがのあいつも恐れることだろう。僕たち反対勢力の存在をね」
「なに!? マリアンヌと親しいだと!?」
そういうのは早く言え!!
今度はフェイトに詰め寄る。
「おい、マリアンヌはどこだ!! どうすれば会える!! 答えろ!!」
「知りません!!」
「なっ……」
コーロがフェイトに向けて剣を振り上げる。
いよいよ殺す気か。
「ええい、くそっ!!」
私は魔法で光の弾を発射して、コーロを吹っ飛ばした。
「な、なにを!! 君は僕の味方じゃないのか!?」
「味方になったつもりはない。勘違いするな」
「じゃあ、なぜ!?」
「事情が変わった。こいつにはまだ死なれては困る」
「僕らの邪魔をするのなら、生かしてはおかないよ。良いのかい? せっかく英雄の仲間になれるチャンスなのに」
「黙れ!! さっきからぺらぺらと鬱陶しい!! 私はお前みたいなお喋り野郎が一番嫌いなんだ!!
「こ、この僕に向かって、引っ込んでろだと!?」
「この悪役令嬢は、私が守る!!」
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※あとがき
フェイト編、次回で終わりです。
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