第7話 もう一人のイカれ女、パッチ登場!!

 金髪ロングミニスカ白マントの女がラミュを指さした。


「ようやく見つけたわ、ラミュ・メチャカワイイ!!」


 どうやら狙いは私じゃないらしい。

 ん、幸いにもベッドは無傷だ。


 横に寝転がって瞼を閉じる。


「お別れだラミュ。人様に迷惑をかけるなよ。おやすみ」


「ちょちょちょちょ、ちょちょちょちょちょちょ〜〜〜〜!!!! なあに寝ようとしてるんですか。自慢のパニッシュメント魔法で助けてくださいよ〜!!」


 無視する。

 なにがなんでも無視する。


 金髪の女よ、頼むからラミュを拉致ってくれ。

 地球の反対側まで強制連行してくれ。


 女が高らかに笑った。


「あーはっは!! さあ、おとなしく私に捕まりなさい!!」


「ひぃ!! だ、だいたい何者なんですかあなたは!?」


「私はパッチ。Dr.パッチ・サンダンス。元王宮直属魔法研究科主任よ!!」


「魔法研究科? しかも元だし。なんでそんな人が私を……」


「あらゆる悪役令嬢が持つ悪役令嬢パワーを集めて、最強の悪役令嬢を作るためよッッ!!」


「なにいぃぃぃぃぃ!!??!!?!?」


 なにが『なにぃ』だ。

 意味わかっているのか。

 私はわからん。

 こいつが何を言っているのかさっぱりわからん。


 悪役令嬢パワーってなんだ。


 嫌な予感がしてきた。

 もしやこいつも、ラミュと同じタイプの人間か?


「パワーを取られたらどうなるんですか?」


「一気に老化するわ。運が悪ければ死ぬ」


「そんなの嫌ですぅ!!」


「さあさあ、年貢の納め時よ。大人しく私の研究材料になるがいいわ〜!!」


「うぅ〜。フユリンさーん。私たち友達じゃないですか〜!!」


 まったく、しょうがないなあ。

 これじゃあ、うるさくて眠れやしない。


「パッチ、残念だがラミュはもうターゲットじゃない」


「え?」


「悪役令嬢協会から追放されている。家からも勘当されて、令嬢でもない。ただのうるさい子供。悪役令嬢パワーがなんなのか知らないが、少なくともラミュはもう、悪役令嬢ではない」


「そうなの!?」


 ラミュが勢いよく首を縦に振った。

 振りまくった。

 そのままポロッと落ちてくれると助かる。


「まぁ、こっちとしてはお前が一人でも多くの悪役令嬢を潰してくれるなら、ありがたいけど。こっちの手間が省ける」


「手間?」


「私はすべての悪役令嬢を潰す。そのために旅をしているから」


「つまり私のライバルということ!?」


 なにがつまりだ。

 勝手にライバル認定するな。


「ふっふっふ、あなたを野放しにしていたら、私が悪役令嬢パワーを奪う機会が減るということね!! ならばあなたにはここで……再起不能になってもらうわ!!」


 やる気かこいつ。

 面倒だな。


 とりあえず場所を移す。

 これ以上部屋をめちゃくちゃにするわけにはいかない。





 外に出て、改めて対峙する。


「フユリンさん大丈夫なんですか? 相手は悪役令嬢でもその協力者でもないんですよ?」


「なんとかなる」


 パッチが手をかざした。

 目を凝らしてみれば、小さな白い球が出現していた。


「さあ、来なさい!!」


「……ハイスピードホーリーボール」


 光の玉を豪速球で放出する。

 魔女との契約ではなく、自力で会得した攻撃魔法だ。


「ふぎゃ!!」


 当たった。

 簡単に当たってしまった。

 しかも顔面。


「な、なかなかやるじゃない」


 頭部に当たったのなら、一撃で気絶するくらいの威力はあるはずなのに、意外とタフだな。


 ふと、先ほどの白い球を見やる。

 少し大きくなっていた。


「ふっふっふ、気付いたようね!! これぞ私が開発した究極魔法『アースプロジェクト』よ。放たれた魔法からちょっとずつちょっとずつ魔力を吸収し、巨大な魔力の塊に進化させるのよ!!」


 なるほど、パッチがタフだったのではなく、アレでホーリーボールのパワーを削ったから威力が落ちたのか。


 おそらく、悪役令嬢パワーとやらを集めるのも、あの魔法を利用するのだろう。


「くくく、さあ、どんどん魔法を使うがいいわ」


 パッチに近づく。

 間合に入ったところで、腹パン。


「うごっ!!」


 さらにビンタ。


「ぐえっ!!」


 脳震とうを起こして、パッチは気絶した。

 要は魔法を使わなければいいだけの話である。


「さすがですフユリンさん!! ヒューヒュー!! かっこいい!!」


「ん」


 それからパッチを街の保安官に預けた。

 宿の部屋に爆弾を投げた犯罪者として。


 その後、宿に戻って今度こそ就寝。

 ぐっすり眠った。


 一夜明けて。


「ふう、良い天気だな」


「私の悪役令嬢復活計画のための旅、再開ですね!!」


「あー、はいはい」


 結局、悪役令嬢パワーとは何だったのだろう。

 まあいいか。もうあいつに会うこともないだろうし。


 ないよな? あってくれるな頼むから。





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※あとがき


あると思います。

シリアスすぎても湿っぽいので、定期的に今回みたいな話をやりたいですね。


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