第2話

私は帝王、お父様の命で森へ調査に行っていた最中にある卵を見つけた。



それを最初は私たちは警戒していたのだけれど先に行って調査をしていた騎士からの報告によるとこの卵は伝説の竜と呼ばれる魔物の中でも一番強いと言われている種族だった。



親の竜はたまたまいないのかと最初は私も思ったのだけれど卵が発見されてから1週間経っても親が来ないのでその卵をどうするのかという話だった。



卵は森の中にある泉の近くに一つぽつんと置かれ卵の色は緑色で覆われていた。



そして私が近づこうとすると近くにいた卵を狙う魔物が私に襲いかかってきた。



「これはゴブリン!」



ゴブリンを見つけた私はすぐに杖を取り出そうとすると近くにいたゴブリンに杖を弓で破壊されてしまう。



まずい、卵がゴブリンの手に渡ったらもしかしたら悪戯で壊されてしまうかもしれない。



そんなことを考えていると目の前にゴブリンがいてナイフを突きつけられそうになると急にゴブリンの持っていたナイフがツタに絡まれてそのまま持っていかれると今度は森自体がガサガサと動きはじめる。



「これは魔術。なの?」



森にある木々が急に揺れ始めると周囲にいたゴブリンをまとめて見つけだしそのままツタで倒していく。



その間私たちはただなぜこれが起ったのか理解することができなかった。



騎士たちにも被害はなかったがあれがいったいなんだったのかは後で知ることになった。



その後私たちは一部の騎士は調査のために戻り、その他は私の護衛として城に戻ることになった。



卵は無事に回収して少し魔物研究科に送られ健康状態の確認を受けた後、私自身でその子を迎えに行った。



どうやらこの子は自然魔術と呼ばれる植物魔術や土魔術といったものが得意な竜種らしい。



そして比較的温厚な性格のせいか全く人里にも姿を見せることはないらしい。



「大丈夫よ。私がちゃんと面倒を見てあげるわ」



私はその日から魔物研究科の研究員の力を借りながらなんとかこの子を無事に孵化させるために毎日、王妃になるための勉強をしながらその合間にこの子の世話をした。



どうやらこの子発見された時から既に風前の灯火だったそうで数日間は私もなんどこの子が倒れるかと思うとそわそわしたものだったわ。



そしてあの厳しい王妃教育を終えた私は部屋に戻るとそこには緑色の綺麗な竜の赤ちゃんが卵から出ていたのだ。



卵から孵ったのを直接見ることは出来なかったけれど私はすぐにその子の側に行った。



「キュールル」



その鳴き声を聞いた瞬間私は凄く嬉しかったわ。

今まで魔物を育てたことはあったけれど、この子が無事に産まれて来てくれて本当によかったわ。



でもこの子全く私に気がついてないのかと思いきやこっちに気がつくと急に固まって動かなくなってしまった。



お腹でも空いたのかしらと思い、普段は寄らない調理場に向かうとそこで私は今夜出るはずだった夕食の私の分を上げようとしたらまだ歯が生えてないことに気がついて自分の配慮のなさに気がついたわ。



気がつくと机の上に置いてあった鏡を見てすごく驚いていたわ。



意外と竜も自分の姿を見たことがないものなのね。



次はまた動き出すと今度は紅茶の近くにあった花柄の絵が描かれた小さい容器の中に入ると勢いよく中に入っていたミルクを飲み始めた。



「あ。そうだったわ。産まれたらミルクよね」

「キュル?」



既に飲み終わったのか竜はこちらを不思議そうな目で見てくる。



なんなのかしらこの気持ち。

あの御方にすら感じたことのない気持ちが私の中で溢れている。



「あなたの名前は。そうね。ルルよ」

「キュル?」

「私は、ネアンテよ。よろしくねルル」



私がルルと名付けるとルルは凄く喜んで翼を広げてそのまま宙に浮いていた。

余程嬉しかったのね。

気にいってくれて嬉しいわ。



「お嬢さま。ご夕食のお時間です」

「...はい。わかりました。少し支度を済ませてから参ります」

「ごめんね。ルル。終わったらすぐに戻ってくるわ」

「キュー?」



そんな心配そうな目で見ないで。

私は大丈夫だから。

それにきっとあのとき助けてくれたのもあなたなんでしょ。



恥ずかしくて口には出せなかったけど、魔術を使えない私を守ってくれてありがとう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る