第2章

第12話

 今日も目覚めは完璧だった。



 何時もの様に、肌触りの良い寝具に全身を包まれながら、小鳥の囀りで目を覚ます。


 季節は夏。


 睡眠の敵ーー酷暑が猛威を振るう季節だが、意外と夜間は冷え込む為、寝苦しさは一切感じない。


 夏なのに冷房なしで快適な睡眠なんて。

 前世:日本だったら考えられない事だよね。



「ふぁ〜ぁ」



 豪快に欠伸を噛ましながら身体を起こす。


 うん。非常に気持ちの良い朝だ。


 今の寝具に変えて以降、身体の凝りも全くない。

 流石は人類の叡智。よくやった。


 なんて適当な事を考えながら、ベッドから降りる。

 そして。


 今日はどんな服にしようかな?


 ルンルン気分で衣装棚へ向かおうとした。

 その時だった。


 アレ?


 唐突に。そして突拍子もなく。

 漠然とした違和感を覚えた。


 何だろう?


 上手く言葉では説明できない。

 だが確かに違和感があるのだ。


 自分の直感を信じながら改めて周囲を見渡すと。


 ある事に気付いた。

 それは目線の先。部屋の隅で鎮座する小さな棚だ。


 あんな棚。あったっけ?


 お花が彫られた木製のアンティークな小棚。

 見た目が可愛くて正直好みなのだが。


 全く見覚えがないのだ。


 それだけじゃない。

 至る所に配置された家具。

 その全てが俺の知らない代物だった。


 まさか、、。


 脳が覚めた今なら分かる。いや分かってしまった。


 そう此処はーーこの部屋は。


 俺の知らない場所だ。

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