閑話4
「状況は?」
「街は完全に壊滅。そしてご当主のアストラ伯を初め、多くの住民が奴等により殺害されました」
「そうか」
駆け付けたギルフォードへ状況を説明するクレア。
此処はロアの街の後方。森を抜けた先にある山の麓。
人族の襲撃を受け、街を追われた者達は身を寄せ合いながらもこの場所へと避難してきたのだった。
「幸いにもアストラ伯の御息女メリル様は無事に保護されています。アストラ伯が命賭けでお守りになったおかげかと」
「そうか」
苦虫を噛み潰した様な表情のギルフォード。
彼にとって人族の怪しげな動向は察知していた事。
襲撃に備えて南側の警備も強化していた。
にも関わらず完全に手薄な北側ーー不意を付かれた状況。
想定外だった。
クソっ。
悔いても悔やみきれない。
「この後はどうしますか?」
「まずはこの場で暫く休憩した後、山を超え隣町へ向かう。そこに支援物資の運搬を行い、緊急の避難所を開設しろ」
「分かりました」
直属の部下へ指示を出すギルフォード。
街が占拠された以上、拠点にされる事は間違いない。
何時、内地への侵攻が始まるか分からない今、一刻も早くこの場を離れる事が優先だった。
ギルフォードの指示に従い、準備を進める部下達。
そんな中。
「ところでリリィは?」
話は変わり、大事な妹の所在を確認するギルフォード。
それに対し、バツの悪そうな表情を浮かべるクレア。
まさか?嫌な予感がよぎる。
「リリィ様は行方不明となっております」
「なんだと!」
つい感情的になってしまうギルフォード。
「大変申し訳ございません」
「いや、すまない。何があった?」
だがすぐに落ち着きを取り戻し、冷静に事の顛末を確認する。
「人族の襲撃の一報を受け、リリィ様と共にこの地の脱出を試みました。しかし部屋を訪れた際には既に姿を消しており、使用人総出で捜索に当たりましたが、発見には至りませんでした」
「そうか」
拳を握り締めるギルフォード。
努めて冷静を装うが、怒りが滲み出てしまう。
当然だ。大事な妹なのだから。
だが流石は立場ある人間。すぐに切り替える。
「状況は分かった。何より到着が遅れてすまなかった」
「いえ。こちらこそリリィ様の事は大変申し訳ございませんでした」
「この状況では仕方のない事だ。それに死亡したと決まった訳ではないのだろう?」
「そうですが」
「今回の事は警備を手薄にした我々の責任でもある。先ずはお前が無事で良かったよ」
「はい」
ユリウスにとって。クレアは幼い頃からの友人。
大切な人に違いはなかった。
「何にせよ。今回の事で我々も黙ってはいない。必ず奴等に復讐する」
「それでは」
「あぁ。始めようか」
全面戦争を。
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