第7話 室生犀星 後編

立原「あの、もしよければ我々の組織に所属する試験を受けてみませんか?」


室生「いやだ。」


立原「まぁ少し話を聞いてください。」


室生「いや、だって貴様ら軍警のものだろう。」


立原「そうですけど…。」


室生「貴様らはどうか知らんがこのあたりの奴らは嫌いだ。何もしていないのにゴミを見るような目で見てくる。社会的地位をもっていなければ何をしてもいいと思っている。我々を殺しても唯仕事を終えたと言わんばかりの顔で去っていく。ここでの最大の敵は飢えでも雨風でも、ましてや違法組織の奴らでもなく、正義を盾に平然と刀を振り下ろす国家権力だ。」


立原「…」


室生「用がないなら帰れ。」


立原「俺は、いや俺らの組織は違う。」


室生「何がだ。」


立原「俺らは弱者を虐げるような事はしない。国の平穏を手にするために俺ら自身が鉾となり、盾となり、鎧となり、牙となる、それは無辜なる民を守るためだ。」


条野「私は、大丈夫なんですか?」


立原「貴方だって、昔はそうだったかもですけど今は被害者を優先して加害者に強く当たってしまっているだけでしょう。」


室生「そうか…。では、条件を付ける。」


立原「どんな条件ですか?」


室生「一つ、ここにいるもの達を一般的な社会的地位につけるようにしろ。子供たちは学校に行きたい者には行かせて、養子や良質な孤児院に連れていけ。動物たちもだ、猫はともかく犬は他の者にも危険が及ぶ。」


立原「分かりました。」


条野「ちょっ大丈夫なんですか?」


立原「給料はだいぶ貰ってますからね。もともとできるならやりたいと思っていましたし。」


室生「二つ、このあたりの軍警、またそのような性格のやつを無くせ、首にするなり更生させるなりなんでもいい。」


立原「分かりました。」


条野「そんなことできるんですか!?」


立原「違法性を指摘して上に報告すれば何とかなるでしょう、最悪マフィアとしての活動中に更正させてやります。」


条野「大丈夫ですかそれ…。」


室生「約束だからな。」


条野「でも立原君、なぜわざわざこの人にしたんですか?」


立原「もうこんなチャンスないですよ! 日は落ちようとしているし、半日以上探して、一人だけしか適任が見つからなかったんですよ!」


条野「それはどこぞの探偵社員のせいな気もしますけど…。」


立原「あとはなんだか信用できるんですよね、それに三十五人殺しに強いって言われるのなんだかかっこよくないですか!」


条野「因みに室生さん、あなた何歳ですか?」


室生「十四だ、俺も捨て子だったから、おそらくだがな。」


立原「え、十四って軍に入れるんですか?」


条野「確か本人から言い出せばよいという話だった気がしますね。」


室生「じゃあ大丈夫だな。」


立原「そういえば、その眼帯ってどうかしたんですか?」


室生「よくぞ聞いてくれた!我が右目には封印されし悪魔が…。」


立原「やっぱ面倒だから黙っててくれ。」


条野「この後どうしますか?」


立原「とりまこの子たちを安全なところに届けましょう。話はそれからです。」


福地「ならば儂に任せなさい。」


条野「隊長⁉ いつの間に?」


福地「なに、残業している部下たちを労いに来ただけだ。」


立原「この子たちを任せてよろしいのですか?」


福地「安心せい。儂は顔が広いからな、子供にも好かれやすいし。」


室生「この人は?」


立原「俺たちの組織の長、福地桜痴さんだ。」


室生「あーね。」


福地「反応薄くない!?」


条野「知らない人からしたらその程度ってことですよ。」


その後、福地は子供たちを連れてどこかへ行った。

他の三人は真っすぐ本部へ向かった。

その後条野もすぐに帰ってしまった。

日は完全に沈んで夜となった。


立原「室生はこの後どうするんだ?」


室生「家が無いからな…。どうすればいいのか俺も分からん。」


立原「調べたけどお前家どころか戸籍も無いぞ。」


室生「今更だがそんな奴が軍に入れるのか?」


立原「あぁ、普通に入れそうだ、しかっし家が無いのか…。じゃあ俺の家に来るか?試験で明日から北米に行くから家はその後でいいだろ。」


室生「は!? 北米に行くのか!? そんなん聞いてないぞ! まあ別に問題は無いが…。」


立原「悪い、言うの忘れてた、で、俺んちに泊まるか?」


室生「お前がいいなら別にいいが…。」


立原「んじゃ、決まりだな、あと言葉遣いには気を付けたほうがいいぞ。俺は別に気にしないが副長に同じことしたらキレるだろうし、隊長にやったら社会全体にバッシングされるかもだぞ。」


室生「…分かった、今後は気を付ける。」


そうして二人は帰路に就いた。


立原「そういえば、お前が貧民街の子供達を助けてた理由に友達との約束って言ってたろ?」


室生「あぁ、そうだな。」


立原「その友達ってどんな奴なんだ?」


室生「既に死んでいる。」


立原「っ、わりぃな、嫌なこと聞いちまって。」


室生「大丈夫だ、悲しんだらアイツも嫌がる。」


立原「仲良かったんだな。」


室生「あぁ、俺の三つ上で、別に苦しい暮らしをしてる訳でもないのに一緒に遊んだり飯をくれたりしていた。」


立原「優しかったんだな。きっとお前もその友達に似たんだよ。」


室生「それなら少し嬉しいな。」


立原「にしてもなんでそんな人が死んじまったんだ?」


室生「俺が六歳の時、誰かに撃たれて死んじまった。でも、他に誰がいたとか周りがどんな状況だったか一切思い出せない。その撃ったのが誰かも、思い出そうとすると強い頭痛に襲われる。」


立原「それはたぶんあれだ、解離性健忘ってやつだ、ひどいトラウマとかで起こるやつ、普通に病気だからカウンセリングとか受けたほうがいいぞ。」


室生「そうなのか、でも生活に支障がある訳ではないから後ででいいだろう。」


立原「ま、それもそうだな。」


室生「ちなみに、晩飯はどうするんだ?」


立原「忘れてたぁー…。適当に家にあるものでいいか?」


室生「いいだろう。」


立原「何様だよおまえは。」


そうして二人は人気ひとけのない道を歩いた。

年下を相手にすることかこの頃なかった立原、室生と一緒にいることで少しだけ大人になれたような、兄に近づけた気がした。

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オリキャラ紹介


名前・室生犀星


年齢・15歳


異能力・あじゃり

問いかけに答えなかった者を操る能力

ただし、問いかけが聞こえてなかったり問いの内容が分からない場合は答えなくても操れない


能力元ネタ・あじゃり

阿闍梨っていう雰囲気だけで周りを和ませることができる僧侶?てきな人がいて

主人公が会ってみようとする話

室生さんの詩、小説含めた作品で一番ゾクっとする

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