第13話 ブドー・フォン・トヨス7世帝国皇帝陛下②
ムサーシ皇帝陛下とブドー殿下
宮殿内食事処の個室で報告打合せを兼ね18時から2人で会食予定。
20分程遅れると皇帝陛下にスマホ(上級神レベルスマホ・皇族専用)で連絡済み。
「遅かったなノー残業デーじゃ無かったのか」
「仕事は16:30に完了したのですが、海軍の夕食に焼肉を出しまして5万人分で70トン程w」
「叙々苑か(ヨダレ1)」
「はい、但しシャトーブリアンは抜きですw」
「シャトー抜きでもあれだけの極上焼肉、この世界で食べられる場所など絶体に無いぞ(ヨダレ2)」
「確かに。皆頑張ったので生ビール樽20literも1万樽置いてきました」
「冷えたジョッキでか(ヨダレ3)」
「ジョッキはキンキンじゃなきゃ生ビールと呼んではいけません」
グーーー
皇帝陛下の腹の虫が盛大に音をたてた。
「「……」」
テーブル呼び出しベルを押す。
「「はい承ります」」
秒で執事長とメイド長が現れる。
「宮廷料理長に直ぐに伝えよ。今日の料理はキャンセルだ。ブドーとの打合せは余の執務室で行う。料理長の事だ準備は整っておろう。皆の夕食の足しにするがよい。」
「畏まりました。」
「あ~それとな。帝国の行く末を左右する大事な話し合いだ。人払いするゆえお主らもメイド達も執務室控えの外に出ておれ。用があれば携帯(一般用)で連絡する」
「畏れながら食事抜きでは体に悪うございます。サンドイッチ等軽食でもお持ち致しましょうか?」と気が利くメイド長。
「よい。ブドーが何か取り寄せるゆえ」
「畏まりました。それでは失礼します。」
執事長メイド長揃って外に出た瞬間
「もう我慢限界だブドー取りあえず生一丁」
「ハイ毎度あり~皇帝陛下
生一丁入りましたー よろこんでw」
トヨス帝国No.1とNo.2愉快な親子である。
**********
我慢出来ず宮殿内食事処でキンキンに冷えたジョッキ中生とカクテキを味わった後、皇帝執務室に移動。親子2人で牛を食い尽くす…
「あ~美味かった牛だけどうまかった」
「…父上も若いですね10kgペロリ」
「絶品のうまさだからな、うしだけど」
「……ジョッキ中生も8杯ですもんね」
「焼肉とサイコーに合うからうまいんだよ、うしだがな」
「………」
「げっ、げふん。ところでブドー譲位の件だが余の退位は年内に必ず行う。これは決定事項だ。」
親父ギャグをスルーされ何とも言えない空気の中、ムサーシは皇帝らしい真剣な鋭い目でブドーに申し渡した。
「しかしロシプ王国の件もあります。それが片付いてからでも遅くはありません。」
「普通ならそうだ。種族が人間ならな。お前の上級神力ならロシプの若造王子と3将軍を、今すぐ帝国牢にぶち込むのも可能であろう?」
「居場所は探知出来てます。今は3ヵ所にいますね。1ヵ所3秒として10秒あれば牢内で対面できます。」
「そういう事だ。要はお前が上級神である今後約2000年は軍事力に差がありすぎてな、もう戦にもならんのだ。」
「ですが父上、その若さで引退されて何をするおつもりですか?」
「46歳 皇帝を退位するには確かに若い。だがなブドー、人外のお前と違い人間である余は残り40年前後の寿命。ここらで16歳の頃から夢見た研究に没頭したい。」
「えっ!!父上が研究?その身体で?」
「おい人を脳筋みたいに言うな。」
「みたいに…失礼しました。研究とは具体的にどんな分野でしょうか?」
「うむ、医学だ。医学を極め1人でも多くの命を救いたいのだ。」
厳しい目付きから温和な暖かい視線に変わる陛下。
「父上も皇帝として6世担当スィッタ神より与えられし最強ステータスをお持ちです。創世神級の光魔法が使えるではないですか。」
「そこが問題であり我が帝国最大の弱点である。 」
「弱点?」
「良いかブドー人は何時か必ず死ぬ、それは自然の理。例えば余が今死んだとして創世神級光魔法の使い手は居なくなる。まあ人外のお前を除いてだがw父上ヤマート先代も退位と同時に、属性は3つとなった。それでも創世神級の火 水 土魔法をもっておれば余以外に遅れを取る事は無いがな。」
「それは神より帝国皇帝陛下のみに代々伝わる約定と父上より教わりました。」
「そうだ、その帝国皇帝陛下"のみ"が問題なのだ。例えば日本はどうだ?
医療において大蔵家当主"のみ"に頼っておるか?違うだろ。
余が祖父様に聞いた話しだと、全世界に相当数の医者がいて医療に携わる人々も大勢いると。魔法の無い世界ゆえ医学科学他あらゆる分野が発展しているそうではないか。」
「確かにそうですが魔法の様に骨折等を一瞬で完治させる事は出来ません。」
「それで良いではないか。手術と言ったか?医師が処置をし看護師他の医療従事者・薬等の助けを借り予後を良くする。理に叶い自然治癒力も向上するであろう。
余は皇帝や皇族貴族・魔法の才能を持つ一握りの者達に頼っていては、地球のような発展は永久に来ないと確信しておる。
日本人はどうすれば出来るのかを考え勉学に勤しみ研究に明け暮れる。多くの失敗例の積み重ねから長い時をかけやっと結果に辿り着くと聞く。」
ブドーは初めて見る皇帝陛下いや父親の熱弁する姿に深く心を打たれていた。
「しかも日本人の凄いところはその先だ。やっと掴んだ結果に満足せず、改良改善を重ね更なる進歩を掴み取る。
これこそが社会全体の発展に繋がり自ずと国民の民度を高め、平和を目指す成熟した世の中の礎となるのではないかとな。」
ブドーに出してもらった暖かい食後の緑茶を1口すする。
「16歳の誕生祝いの席で父上が正式に世継ぎとして余を公表した際、祖父様から日本の事を聞いたのだ。
その時からずっとトヨス帝国でそれを成す為に余の生涯をかけようと、その為なら皇帝の座を降りても構わんと決意したのだが現実は厳しくてな。
26歳で即位して今日までの20年間、広大な領土と1億の帝国民の日々を守るのに忙殺され、いつの間にか忘れておった。言い訳だがなw」
寂しい笑みを浮かべる父親の姿にブドーはかける言葉が出て来ない。
「余が自ら医学の勉学研究を重ね学んだ末に、日本で言う病院なるものを作りたい。
それと同時に医学専門学校も開き多くの医療従事者を育てる。
学ぶ情熱さえあれば貴族も平民も関係なく受け入れる。
勿論人の命を預かる仕事ゆえ厳しい選抜試験を設ける。
1度不合格でも2度3度挑み這い上がる者も出てくるであろう。
その志が大切なのだ。
その環境を余が作ってやりたいのだ。
帝国国民の99,5%は魔力が乏しく初級生活魔法しか使えない。
その者達に魔力が無くとも研鑽を積めば道は開けると、生きていく希望の光を与えたいのだ。」
そして目の前で信じられない光景が!!
「ブドー頼む。余に16歳時の決意を叶えさせてくれ。それをやらねばこの世に生まれた意味が無い!!」
そう言って帝国皇帝陛下が頭を下げる。
それに対しブドーも慌てて跪く
「皇帝陛下、某ごときに頭を下げる等どうかお止めください。これでは話が出来ませぬゆえ。」
「そうかそうだな…つい熱くなった、ブドーも座りなさい。」
お互い改めて向き合い真剣な表情で語り合う。
親子二人の出した結論は
魔法ありきの生活が当たり前の国民気質だが、医学で結果を出せば社会に劇的変化が訪れ他業種もそれに続くのでは無いか?
それは18~19世紀英国の産業革命に匹敵するかもしれない。
そこでブドーは腹を括った
「このブドー・フォン・トヨス帝国第1皇子。皇帝陛下の民を思う揺るぎ無い決意に感服致しました。譲位の件、謹んでお受け致します。」
父親ムサーシ・フォン・トヨス6世帝国皇帝陛下の思いに感銘を受け、
年明け早々のブドー・フォン・トヨス7世帝国皇帝陛下即位を謹んで受けたのである。
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(創世神級の最強ステータス)
当代帝国皇帝陛下にのみ与えられるステータス。
退位する日に属性3種を自身で選び、それのみ創世神級が継続される。
他属性は伝説級に格下げとなるが、そもそも伝説級はこの世界に10人しかいない。
歴代皇帝のステータスが如何に強大かが分かる。
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