第3話 その頃(株)大蔵道場総本山

「警察、自衛隊、世界中の門下生達、これだけの人数を動員して見つからないとは一体どうなってやがる。」悔しそうに呟く巨漢。

 大蔵柔術総本山本部長 大蔵 たける 34歳

 205cm 140kg 体脂肪12%

 本家を除くと全世界で10名しかいない超特級師範代資格を持っている。

 武蔵の弟、武道の叔父である。

 甥っ子を生まれた時から可愛がり

 当主である兄から直々に守役を命じられた。

 強くて優しい叔父を「たけにぃ」と呼び武道も懐いている良き理解者でもあった。

 特に女性関係には手取り足取り…(自主規制)


 20✕✕年8月1日若が突然消えた。

 大蔵柔術6代目当主で

(株)大蔵道場代表取締役・大蔵武蔵の嫡男若き天才武道家・大蔵武道が文字通り消えたのである。


 何時もは早朝5:30東陽町総本山を門下生合わせ30名程で15kmランニングをスタートするのだが、その日に限り「25km走るから1人で行ってくる」と門番に伝え「お供致しますのでお待ちを」と止める門番を振り切り、4:00に単身で仙台堀川公園方面に走り去られた。


 門番5人も必死に追いかけたがフルマラソン2時間6分台で完走する若のスピードに付いていけず見失う。

 すぐにスマホで連絡を取り

 総本山宿舎に住込み修行している屈強な若手門下生数十人が自転車・バイク・車で堀川公園や荒川周辺を探し回ったが見付ける事は出来なかった。


 本部長の自分はオーストラリア出張を急遽切り上げ、失踪当日夕方から大蔵柔術門下生達の陣頭指揮を取った。

 警視庁本庁は勿論、城○警察署、深○警察署、小○川警察署の合同捜査本部が設立され徹底捜査が行われたが1ヶ月経った9月1日現在、目撃者1人足取り1つ見つからないという。


 このニュースは全世界のあらゆるメディアSNS等から即日発信された。

 何せ世界120ヵ国、門下生250万人の大蔵道場次期7代目当主の蒸発事件なので、海外からも大量の門下生達が来日、都内下町を上から下から横から斜めから(斜めって何だよw)探し回り、1,000人を超える自衛隊所属門下生達も血眼になって駆けずり回った。それこそ斜めから…失礼しました。


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「武蔵これはアレかもしれんな」

「ということは父さん1・4・7(イッスッチー)理論が証明された事になるのかな?」

「うーむ悔しいがそのようだな。我等5代目6代目には今日まで起きなかった訳だからな」

 東陽町総本山ビル29階にある会長室。

 大蔵大和5代目前当主の個室に備えられた豪華なソファーに深々と座り、意味深な話をしている親子2人。


 **********


 大蔵一族の初代当主、大蔵柔術の創始者・大蔵巌流は亡くなる前日、嫡男2代目当主 大蔵 三笠みかさに自分はトヨス帝国初代皇帝であり、日本への転生者であることを打ち明けた。

「良いか三笠この話は嫡男で次期当主にしか伝えてはいけない。一子相伝の掟を破ったら大蔵一族は滅亡する」

「はっ!!父上肝に命じます。嫡男で次期3代目当主になる長門ながと以外には決して話しませぬ。長門にも厳命致しますゆえ。」

「うむ、それで良い。2代目はわしが作った組織を安定させねばならぬ。

 ここまで巨大化しては厳しい規律と優秀な部下が今以上に必要だ。それを成すには相当な覚悟がいる。組織秩序を乱す者は長年の腹心ですら切り捨てる覚悟がな。

 お前には苦労をかけるが後の事は宜しく頼む」

「はっ!!天地神明トヨス帝国ワーヒドゥ神に誓い大蔵柔術と組織力を持って、日本国の安寧と発展に命懸けで挑む所存でございます。父上お疲れ様でした、どうぞ安らかにトヨス帝国にお帰りくださいませ。」

「ああ次はまだ見ぬ4代目の時じゃな。1、4、7(イッスッチー)理論…

 お前と長門は残念だったな。

 では三笠よさらばだ、明治維新の英雄西郷○盛とも酒を酌み交わせた。

 土方○三の説得には失敗したがなあ。

 日本に転生して本当に良き人生じゃった…」

 巨星墜つ大蔵巌流・享年78歳

 トヨス帝国から日本への転生は、寿命が人類平均値を大きく外れる事はない。

 がしかし、亡くなった後の魂はトヨス帝国に帰ると伝えられている。4代目は日本からトヨスに行くのか?あるいはまたトヨスから日本に来るのか?

 それは大蔵一族代々当主でも分からない。


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「では父さん武道の件は年内を目処に警察・自衛隊等の捜査、捜索範囲縮小とマスコミの報道規制を強く政府に命じておくので。」

「うむ、やんごとなき御方には私が伝えておこう。どうやら今回はトヨス帝国に渡った初のケースになったようだとな。」


「そういや4代目当主のお爺さんも向こうから日本への転生だったね」

「父上も近代化した日本を満喫しておったわ」


「懸念するのは嫡男20歳の誕生日に一子相伝として伝えるのが間に合わなかった事。まさか18歳で消えるとはいささか早過ぎて向こうに何かあったのかな?」

「う~む何せ向こうに渡るのは初のケースで誰も経験者がおらん。武道の代りをいつ送ってくれるのか?

 サブァア神から何かしらメッセージがあるまで当面7代目不在としておくしか無いだろうなあ。」


「やんごとなき御方とは、その辺りもお話になるので?」

「いや今回は報告のみだ。サブァア神の件は何かしら動きがあった後に話す。その時は現当主であるお前も同席しなさい。」


「了解しました。ではその時まで自分は涼子りょうこ(妻)や子供達他、一族郎党を何とか宥めておきますよ。政府関係者と内○府には大蔵一族の軍事力をちらつかせ、ソフトランディングといきましょうw」

「やり過ぎるなよwお前のソフトランディングは核弾道ミサイルより破壊力があるからな。現当主のみ使える力だから煩くはいわないが、ソフトに頼むぞ」


「ははは父さんにやり過ぎるなよと言われる日がくるとはwこれだから人生は面白い」

「抜かせwでは政府を動かしての捜査縮小、マスコミ沈静化対応任せたぞ」


「はいかしこまりました。にしても、めんどくせぇなほんとww」

「おいおい武道の口癖お前が言うかまったくwでも確かにめんどくせぇな」

「「わはははははは」」

 

 その日29階会長室は2人の笑い声が響き渡り、嫡男蒸発事件未解決なのに皆不思議がっていました。


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【大蔵 巌流がんりゅう三笠みかさの会話】


 自分がんりゅうがトヨス帝国初代皇帝で日本への転生者という事実は一子相伝の掟で代々の嫡男にのみ、伝える事になっています。神との約定なので破ったら大蔵一族は滅亡します。


 それ以外の異常なステータス、スキル、ギフト等地球には存在しない魔法 パワーは隠す必要なく必要な時に自由行使できます。但し巌流は社会混乱起こさぬよう、スキル使用は隠密に行えとの戒めがあります。

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