魔物に支配された日本から異世界転移でレベルアップ出来るのは俺達だけな件〜でも戦うたびに幼馴染がスキルの副作用で発情するので困ってます〜

第十四話 屈服完了

「あぅ……コタロー。クレハはコタローにならいつどう使われてもいいぞ……でも、外でいきなりは少し恥ずかしいんだ」

　頬を赤く染め、恥ずかしそうに俺を見てくるクレハ。

　そんな彼女は現在、俺に組み敷かれる形で地面に倒れているわけだが。

　もじもじ。

　もじもじもじ。

　と、クレハは視線を何度か左右に。

　そして、身体を恥ずかしそうに少し動かしたのち、そのまま俺へと言ってくる。

「コタロー、クレハが欲しいのか？」

「え？」

「クレハ、知ってるんだ！　男の人はその……我慢できなくなっちゃうことがあるって！　母様が言ってたぞ！」

「……」

「だからその……な？」

「な、なにが？」

「コタローがクレハのことがほしいなら、クレハ……クレハをコタローにあげるぞ……」

「つ、つまり？」

「く、クレハのこと……めちゃくちゃにして、その……それで、クレハにコタローの子供……産ませてもいい、ぞ？」

　言って、俺の手へと手を重ねてくるクレハ。

　クレハの言葉が衝撃的すぎて忘れていたが、俺の手は現在クレハの胸の上——要するにクレハのこの仕草はつまり。

「もっと、揉んでもいい……ぞ？」

　そういうことぉおおおおおおお！？

　いや待て。

　待つんだ俺。

　そもそもこの状況は不可抗力。

　さらにクレハは俺のことを信頼してくれてるんだ。

　おまけにちょっと無知な感じがしないでもない。

　ダメだ。

　耐えろ、俺は——。

「琥太郎のエッチ！！」

　ズビシッ！

　と、俺の後頭部に決まる可愛らしいチョップ。

　天音だ。

「離れてください！　琥太郎はいま犯罪行為をしてます！！」

　ぐい、ぐいぐい。

　ぐい〜！！

　と、俺のことを後ろから羽交締めにし、クレハから引き離そうとする天音。

　というか勘違いだ。

　俺はむしろ離れようとしていた。

　そう、実はすでに体勢を整えて離れようとしていたのだ。

　そこを天音が羽交締めにしているのが現実。

　すなわち。

「いや、お前が羽交締めにしてるから動けないんだよ！！　結果的に、クレハにマウントポジション取って怪しい構図が続いてるんだよ！！」

「嘘です！　琥太郎はエッチな顔してました！」

「してねぇよ！！」

「してました！」

　くっ！

　これでは話が平行線。

　ここはクレハに助けを求めるしかない。

「な、なぁクレハ！　俺は別にエッチな顔してないよな！？」

「……」

「く、クレハさん？」

「コタローになら……いいんだ、されても」

「な、なにを？」

「エ——」

　と、何かを言いかけるクレハ。

　これを言わせたらマジでやばい。

　俺は直感的に理解——天音の拘束を振り切って、クレハの口を抑えるのだった。

　余談だが。

　この一連の騒動が収まるのは夕方過ぎまで続いたのだった。

　さてさて。

　そうして時は進んで夕方なわけだが。

　なにもずっと遊んでいたわけではない。

　みんなでモンスターを倒したり、モンスターを倒したり、モンスターを倒しまくったりしていたのだ。

『比翼連理』に頼らなくても、ある程度の戦闘ができるようになったこと。

　そして何より、クレハの存在によって俺たちは連戦によるレベル上げが可能になっていたのだ。

　そう。

　俺たちはレベリングしていたのだ。

　結果。

　俺は11レベルに。

　天音は13レベルに達していた。

　俺と天音のレベル差がさらに開いた理由は簡単だ。

「どんなスキルを取得できましたか？」

　場所はコテージ。

　俺の向かいの席から、そんなことを言ってくるのは天音だ。

　一方。

「これでコタローはまた強くなるんだな？　クレハはとっても楽しみだ！」

　と、俺の隣に座っているクレハ。

　要するにそう。

　俺はクレハとの模擬戦の経験を活かし、スキルを取得していたのだ。

　なお、天音はまだ耐久能力などに問題があるため、素直にレベルを上げさせた。

　それはともかく。

「スキル」『硬化』か」

　その能力は——。

　スキル『硬化』

　一時的に身体の一部を硬くできる。

「なんともまぁ微妙なスキルだな」

　使い所が防御くらいしか思いつかない上、硬くできるのが身体の一部というのがまた。

　仮に刃物を防ぐ際など、読み負けて別のところを固くしたら、普通に刃が刺さってしまう。

「というか難しいな……」

「琥太郎はやっぱり攻撃系のスキルがよかったですか？」

「そうだな。攻撃系は使いやすいし、形勢逆転に最も使いやすいからな」

「今回のスキルで形勢逆転するとしたら、カウンターとかですかね？」

「そうなるだろうな」

「たしかに琥太郎の言う通り、取り扱いが難しい気がします。なんというか……ただ単に使っただけでは勝利に直結しないというか」

　天音の言う通りだ。

　これで勝ちに行くには工夫が必要になる。

　今はそれよりも単純に勝てるスキルを手に入れ、戦力を簡単に増やしたかったところだが。

　などなど、俺がそんなことを考えていると。

「殴ればいいぞ！」

　ぴょこん！

　と、狐耳をぴこぴこクレハ。

　彼女はまるで宝物でも見るような瞳で俺を見ながら。

「拳を硬くして殴ればいいんだ！　コタローは読み合いの事を気にしてるんだろ？」

「わかるのか？」

「当たり前だ！　獣人族は戦闘センス抜群なんだ！　だから、コタローが気にしてる事くらいすぐわかる！　だから殴るんだ！！」

「防御じゃなくて、攻撃に使うのか」

「そうだ！　こっちから殴るなら、タイミングがどうのなんて関係ないぞ！　だってタイミングを決めるのは、殴ると決めたコタローだ！」

　なるほど。

　たしかに『硬化』は防御スキルと捉えていた。

　けれどクレハの言う通り、攻撃スキルとして使えばいいのだ。

　例えるなら盾だ。

　盾は当然、盾として使えば盾だ。

　当たり前すぎて意味不明なレベルの当たり前さ。

　だがしかし。

　盾を鈍器として使えばどうか。

　防御の武器でも、盾でぶん殴ったりすればかなりの威力になるに違いない。

　ありだ。

　さすがはクレハ、獣人族だけあって俺とは比べようがないセンスだ、

　今更だけど。

　さっきの模擬戦でよく勝てたな。

　多分、クレハも心のどこかで油断していたんだろうな——俺は人間だし。

「うぅ……なんだか使えそうなスキルで羨ましいです」

　はぁ、とため息をつく天音。

　気持ちはわかる。

「でも天音は『比翼連理』のせいで身体能力が下がってるからな。レベルを上げたおかげで、もうその辺の人間より強くはなってるだろうけど」

「だったら！」

「一般的なブレイバーよりは遥かに弱いだろ？　ゴブリンに一対一で勝てるようになるまではレベル一択だ」

「そんな…….あたしもスキルを覚えて、魔法とか色々使ってみたいです……その方が琥太郎の助けになりますし」

「今は我慢だ。それに天音は十分俺の助けになってるよ」

「本当ですか！？」

　ふりふり。

　なんだか天音が尻尾を振っている幻影が見える。

　なでなで。

　なでなでなで。

「ふ、ふぇ……」

　と、なにやら気持ちよさそうな顔をする天音。

　いかん、ついつい撫でてしまった。

　一歩間違えばセクハラだ。

　これからは気をつけ——。

「ずるい！　クレハもなでなでして欲しい！！」

　と、抱きついてくるクレハ。

　あれだ。

　クレハにはちょっと人間の感性を教えた方がいいかもしれない。

　とまぁそれより……と、俺はクレハを元の位置へと戻し。

「で、本題なんだけど」

「クレハが一緒にコタロー達の世界に行けるか試すんだな！？」

　要するにそういうことだ。

　実はすでに一つ試してることがある。

　コテージに戻る間に、召喚獣『クレハ』を帰還させたらどうなるのかもやってみたのだ。

　結果。

『なんだか居心地のいい場所に浮かんでる感じだった！』

　クレハ曰くとのことだ

　おそらく召喚獣は帰還させると、専用の空間に戻されるようなのだ。

　さらに。

　クレハを帰還させた場所から離れた場所で、クレハを召喚すると。

『さっきの場所と違うぞ！？』

　と、驚いた様子のクレハが出てきた。

　要するに、召喚すればクレハは問答無用で俺の側にでるようなのだ。

　つまり、これを利用すればほぼ確実にクレハを日本に連れて行ける….だから試すのは別のことだ。

「クレハを召喚したまま日本に戻る。そうしたらどうなるのか試す」

「ドキドキ！　ってやつだな！？」

「まぁ、こっちも二つに一つだけどな」

　クレハがその居心地がいい世界に帰還するか、クレハが出たまま日本に行くか。

　このどちらかだろう。

「琥太郎、それじゃあ準備はいいですか？」

「いや待った！」

「な、なんですか！？」

　ビクッとする天音。

　俺が止めた理由は簡単だ。

「コテージを片付けないと！」

　コテージとはすなわち、俺たちが今いるここ。

　天音のアイテムであるコテージだ。

　その能力は。

アイテム『マジックコテージ』。

　能力は瞬時に魔物避け能力を持ったコテージを建てられるアイテム。使用制限はなく、その都度内部に食料がリポップする。

「使用制限はないって書いてあるけど、片付けないで放置していいものかはわからないからな」

「あ、そっか……放置したら捨てた扱いになって、消えてしまうかもしれないという事ですね？」

「そういうことだ」

「さすが琥太郎です！　全く気がつきませんでした！」

「あんまり褒められると照れるな……」

　さてさて。

　そんなこんなで場所は移ってコテージの外。

　天音は現在、コテージを片付けすっかり準備完了。

『帰還しますか？』

　と、意識を集中させると浮かび上がる文字。

　こちらも準備完了。

　あとは。

「クレハもいいか？」

「大丈夫だ！！」

　と、俺の左腕に引っ付いてくるクレハ。

　すると。

「むぅ！！」

　と、何故か反対側に引っ付いてくる天音。

　なんだかよくわからないが、とりあえず戻る準備場整った。

「行くぞ？」

「はい！」

「了解だ！」

　俺はそんな彼女達の声を聞きながら、『戻る』と強く意識する。

　すると次の瞬間。

「戻った、な」

　視界に映るのは俺の部屋。

　要するに日本へと帰ってきたのだ。

　まず右確認。

　天音よし。

　次左確認。

　クレハよし。

「成功……というか、やっぱり召喚したまま日本に転移できるんだな」

「すごいです！　みんな琥太郎の言う通りです！　さすがあたしの幼馴染です！」

　きゃっきゃっ！

　と、はしゃいでいる天音。

　相変わらずこうしていると可愛らし——。

「な、ななな、なんだこれ！？」

　と、俺の思考を打ち消すように聞こえてくる声。

　クレハは凄まじい速度で部屋中を見たのち、俺から離れて色々なものを触りだす。

「すごい！　すごいすごい！！　見たことないものがたくさんあるんだ！！」

「そっか異世界にはないもんな」

「なぁなぁ！！　外も見に行っていいか！？　見に行くぞ！　クレハ我慢できない！！」

　非常に運悪いことに、都合よく開けっぱなしだった窓。

　そして、そこから外へと飛び出すクレハ。

「ちょ——」

　同時俺は理解したのだった。

　事前にクレハに色々説明していなかった自らの過ちを。