第5話 初恋の相手に頼む今日この頃

シャカシャカシャカシャカ

ガラガラガラガラ、、ぺっ

昨日の秀也からの提案は驚いたな、、

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「じゃあ黒髪ロングにしてくださいって頼めばいいじゃん」

「はあ?そんなこと頼めないよ、そんなこと言えるほどの仲ではないし、、」

「黒髪ロングの水野さん、見たくないの??」

「はぁ、まあダメ元でやってみるわ」

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水野さんは、黒髪ロングの清楚な人から金髪ギャルに変身してしまった。それ以来、俺は水野さんのことを意識しなくなった。

俺は歯を磨き終わったあと、体重計に乗った。

「うわ、60キロ、、、このペースだと半月もすれば元に戻るぞ、、」

俺は身長170cmで、そこまで高身長という訳では無い。そう思うと60キロは標準体重くらいだろうか。でも2週間前までは56キロでとても痩せていたため、この体重増加ペースではまずい。

ダイエットを頑張っていた理由は水野さんを惚れさせるため。でも今ははモチベーションが上がらず、だんだん体重が増え続けている。

「俺はこのままで、いいのかな」

鏡の中の自分に問いかけた。返事は当然返ってこない。俺は何かを失っている気がした。


「おはよっみなっち」

「おはよう」

「今日は昨日言ったように水野さんにお願いしろよー、それでみなっちがまた水野さんにメロメロになったら、上手いこと行くに違いないからな」


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キーンコーンカーンコーン

俺は水野さんの席の前に立った。

「ねぇ、水野さん」

「い、和泉くん?どうしたの?」

「水野さんって昔、俺と同じ中学だったの覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」

「その時さ、水野さん。黒髪でロングだったじゃん?その時みたいに黒髪になってよ」

「、、ごめん、私、用事あるの思い出した。」

水野さんは顔を暗くして席を立ち、教室を出ていった。俺、まずいこと言っちゃったのかな、、、。


今日は部活には行かず、アスファルトが夕日に照らされる中、俺は浮かない気分で家に向かって歩いていた。

水野さんのあんな暗い顔、初めて見たな、、、


「あー!あんた和泉くん?」

俺は声をかけられ、下を向いていた目線を上げた。

「えっと、君は確か、鈴鹿さんだっけ?」

「そう!鈴鹿彩!水野雫の親友やらせてもらってまーす!」

「それで、俺になんで声をかけたの?」

「ええっと、話すと長くなるんだよね、、、和泉くん、今暇?」

「暇だけど、、」

「じゃあちょっと着いてきて」

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カランカラン、いらっしゃいませー

「はぁ、ファミレスってあんまり来ないかもなー」

「そーなの?私雫と行きまくってるよー」

「そんなことよりさ、話ってなんなの?」

「それがさ〜」

鈴鹿彩はドリンクのストローをくるくる回しながら話し始めた。

「雫の様子がおかしくってさ、なんか雫とあった?」

俺は鈴鹿さんに今日の出来事について尋ねられ、思わず下を向いた。

「、、俺が中学校の時って黒髪ロングだったよねって言ったら急に暗い顔して教室出てった」

「そういう事か、、、」

鈴鹿さんは、水野さんのことを完全に理解しているかのように納得した表情をした。

「雫がギャルになった理由知ってる?」

俺は顔を横に振った。

「雫が中学の時、転校したのは虐められていたことが原因だったんだよね」

「水野さんが、、?」

「雫ってさ、一見気が強そうに見えるかもだけどさ。自分の気持ちを伝えるのが下手で、か弱い女の子なのよ」

鈴鹿さんは、真剣な表情をして水野さんについて語った。

「虐められたから、自分のことが嫌いになったらしいの。それで私がいた中学校に転校してきて、私に出会ってギャルにイメチェンしたことによって、昔の自分とはおさらば出来たってわけ。だから、雫は中学の時の話はあんまり好きじゃないんだ」

「そんな過去があったなんて、、、」

後悔と心配が僕の心の中を支配していた。あんなこと、言わなければよかった。

転校した理由は親の仕事の関係ではなく、水野さん自身にあったなんて、、、

「でもね、鈴鹿さん。俺はね、、」

「なに?」

「いや。なんでもない。水野さんに辛い思いをさせてごめん。親友が落ち込んでいるのに、真剣に俺に事情を教えてくれてありがとう。」

「いいよいいよーそれくらい。あとさーもうひとつ聞きたいことがあるんだけどー、いい?」

なんだか弾圧的な雰囲気を漂わせて、俺に尋ねた。

「う、うん」

「和泉くんさぁ」

「ゴクリ」

「太った?」

「はい?」

「太ったよね?」

「ま、まあたしかに太ってけど、それがどうしたの?」

「辞めないでよ、ダイエット」

「え?どうして?」

「和泉くんのこと、みてる人がいるから。その人のガッカリした姿、見たくないの。」

鈴鹿さんの言葉に、心を動かされた。俺の事を見てくれてる人がいる。そして、俺に期待してくれる人がいる。その事実を知って、俺はやる気が少し起きた気がした。

「見てる人ってだれのこと?」

「それは内緒」

「内緒ね。分かった、ダイエット頑張ってみる」

「ホント?約束だからね!」

彼女はそう言って俺の手をギュッと握った。

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「ただいまー」

「帰ったか、我が弟よ。くんすかくんすか。なんだか女の匂いがするぞ、お前まさか、、、女遊びを覚えたのか?!」

「そんなわけないだろ姉ちゃん、あんまそういうこと言うのは辞めてくれよ、、」

「そうか、それなら良かった。いや、良くないか」

「良い悪いなんてどうでもいいだろ!」

「ところで弟よ、今日は目が優しさに包まれているように見えるのだが」

「そうかな、、、」

「この調子で行けばモテると思うぞ。」

「ホントかな、、でも今はあんまり恋愛する気じゃないんだよね、、」

「弟よ、我が1つアドバイスをあげよう」

姉ちゃんは人差し指をピンと立てた。

「恋愛する気分じゃなくなっても、自分を磨くことは決して辞めるな。」

「なんでなの?」

「お前に大切なものが出来た時、いつの間にか目の前から消えてしまうかもしれないからだ。我は昔、好きな人と付き合ったことがあってな。その方に夢中になりすぎて、自分のことをすっかり忘れ、だらしない人間となってしまった。そしてそのだらしない姿を見て、彼は我の前から去ったんだ。弟には俺の二の舞にはなって欲しくないんだ。」

「わかった。」

そう言われた俺は階段に向かい、自分の部屋に戻った。


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─次の日─

今日も水野さんは暗い顔をしていた。俺は声をかけた方が良いのか分からず、そのまま放置してしまった。明日こそは謝らなければならないな、、、

「おはよう、湊音くん。」

「おはようございます。神里先輩」

「湊音くん、川崎さんは知らない?」

「係の仕事があるから先に行っててと言ってました」

「そうか、じゃあ先にうーちゃんにあいさつするか」

そう言って飼育小屋に神里先輩は入っていった。うーちゃんは神里先輩のもとへ走った。

「か、かわいいいーーーー♡」

「神里先輩?!」

神里先輩はあのクールなイケメンの格好からうーちゃんに対してデレデレになっていたのだ。これぞ、ギャップ萌えというのか、、、

「神里先輩、うーちゃん好きなんですね」

「うん!大好き!」

うん。センパイかわいい。

「それよりさ、今日部活入部届の締切でさ、ギリギリで出しに来た人がいてさ、今日からその人もこの部活の仲間入りなんだよ、歓迎してくれるか?」

「もちろんです!」

新入部員かー、楽しみだなー

「あ、もうそろそろかな?いいよー入ってきてー。」

飼育小屋のドアが開いた。

「どうも、初めまして。1年1組の水野雫です。って、和泉くん?!なんでここに?」

「こっちが聞きたいよ!」


うちの部活に新たな新入部員が入ってきたのであった。

次回、初恋の相手をお世話する今日この頃




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