第4話 初恋の相手にモヤモヤした今日この頃

キーンコーンカーンコーン

僕は姉ちゃんが服を買ったあと、お母さんに頼まれていた夕飯の材料を買って、家に帰った。


「湊音!おっはよー!」

「おはよ、川崎。なんか今日テンション高いね」

「フフーン、今日の朝ね、生物部にいるうさぎのうーちゃんいるじゃん?」

「うーちゃん?あーあの子うーちゃんって言うんだ!うーちゃんがどうかしたの?」

「あのね、私がね『うーちゃーん?おーいーでー!』っていったらね?走ってきてパンチしてきたの!かわいかったなー」

「川崎、、多分それ、嫌われてるぞ」

「へぇ?」

川崎は昔から動物が好きで、この高校の生物部に加入した。

「ねぇ?湊音も生物部入らない?」

「うーん、どうしよっかなー」

俺はまだ、どの部活にも所属していない。1年生の入部届け締切はあと1週間だ。

「体験入部してみる?先輩たちもみんな優しいよー!」

「1回行ってみようかなー」

「いいね!じゃあ今日の放課後、校庭の飼育小屋にきてね!」

「わかった!」

「うっふふーん!」

川崎はルンルン気分で去っていった。

「ねえ、い、和泉くん?」

「ん?どうしたの?」

後ろを振り返ると、水野さんの姿があった。

「和泉くんって彼女いないの嘘でしょ?」

「え?彼女いないなんて言ったっけ?」

「あ、えっと、岡田?って人から聞い、、じゃなくてなんか言ってたのよ。和泉くんと仲良さそうだし?」

「確かに俺は彼女いない歴=年齢だけど」

「ふ、ふーん?そっかー、で、でもじゃあ昨日デートしてた女の人はだれ?」

「あれは姉ちゃんだよ」

「えっ?和泉くんにお姉さんいたの?」

「うん、用が済んだならもう移動教室だから、行くよ」

「ねぇ、ちょっと...しょぼーん.....」


俺は川崎に言われた通り、飼育小屋にむかった。

「おー!湊音!こっちだよー早く!」

俺と川崎は、

「この子だよー!うーちゃん!」

「うぉー!可愛ええ〜!!!」

「でしょー!」

てこてこてこ、スンッ。キラキラキラキラ☆うーちゃんは、湊音の目の前で、目をキラキラさせて座った。

「あー!目がまぶしー!目の前に座りに来るとか、かわ良すぎだろー!メロメロ」

「な、湊音にめっちゃ懐いてる...なんか悔しいー!」

「川崎、俺生物部入るわ」

「ほんと?嬉しいー!」

「うさぎって、近くで見るとすげー可愛いんだなー」

「湊音もうさぎの尊さに気づいちゃったねー。今日から湊音も仲間入りだね!」

「そういえば、先輩たちは?」

「いまうーちゃんの餌を買いに行ってるよ」

「そうなんだ〜、部室って確か多目的室だったよね?」

「そうだよ。くる?」

「うん。行きたい!」


ガラガラガラ

「失礼します、」

ドアを開けると、そこには輝かしいイケメンの人がいた。

「おー、川崎。おつかれ」

「お疲れ様です。先輩。」

「初めまして、和泉湊音です。」

「初めまして、僕は3年の神里輝かみざとひかるっていいます。君のことは川崎から聞いてるよ。部員が2人だと廃部になっちゃうから、是非この生物部に入って欲しいよ。」

「生物部って今、川崎と神里先輩しか居ないんですか?」

「そうだよ」

確か川崎、先輩たちって言ってたような、、

「俺、今日からこの部活に入ります!これ、入部届けです!」

「ありがとう!これからよろしね」

「はい!」


それにしても、あんなにかっこいい人が生物部なんて、ギャップが凄いなー。

そういうことで、俺は生物部に入ることとなった。


※※※


私はいつものようにベットに寝転がって、彩と電話をしていた。

「脈ナシかくてーじゃーん...私に対して素っ気なさすぎじゃない?」

「いやいやー、まだ分からないよー」

「和泉くん、なんだか女の子と話している時、全然動揺しないからさー、他の子と話してるの見ても」

「フッ、甘いねー。そんな理性を抑えられる思春期男子はこの世に存在しないのだー」

「そう言い切れる根拠はあるの?」

「へ?かんかくー」

「彩って感覚信じすぎじゃない?」

「だって感覚で生き抜いてきたもん。そう、例え血の嵐が巻き起こっても、己に宿る感覚を信じて何度でも立ち上がった...」

「前世どっかの将軍だった?」

「それはさておき、和泉くんを惚れさせるためにちょっとは頑張らなきゃいけないでしょ」

「話しかけるだけで、私は相当勇気を出したんだけどなー、、、」

「わたしをみてー?くらい言わなきゃ」

「そ、そんなのできっこない、、」

「そっかー、じゃーざんねーんだねー。もうおわったねー。」

「や、やればいいんでしょやれば!」


翌日の朝...


「お、おはよう和泉くん。」

「おー水野さんか、どうした?」

「あの、え、えっと、、、わ、わた、わたし、を、、」

「わたしを?」

「わ、わたしをみ、み、みん、みみ、みみみみみみtみみt、、.....」

「・・・はい?」

私は顔を真っ赤にして石のように固まった。


「うわぁー〜ん!彩ぁー!」

「どんまい☆」

「もう最悪ぅ.......死にたーい...」

「勇気が足りないんだよー雫は」

「そういう彩は言えるの?男子に向かって」

「それは言えるとも、でも好きな人に向かってじゃないと言えないかなー。私、自分に嘘をつけない人だからさ」

「彩って好きな人いるの?」

「いるよ」

「どんな人なの?教えて?」

「優しい人だよ。心も顔もイケメン。」

「そうなんだ、その人との恋は実った?」

「それがまだ、気持ちを伝えてないんだよね」

「じゃあ告ったら?」

彩は軽くため息をついた。

「そんな勇気があったらいいのにな」

「彩も自分の気持ちを伝える勇気がないんだね」

「そう、だから雫にあんなこと言える立場じゃないんだよー本当は」

「そっか、お互い頑張ろ!」

私はそう言って電話を切った。

和泉くんの前であんな変なことして、落ち込んでいたけど、彩も恋愛してるって考えると安心して気が楽になった。和泉くんに対するモヤモヤも無くなり、私は明日から頑張ろうと思った。


一方その頃...


※※※


「なあ、秀也。水野さんがなんか変なこと言ってたんだけど」

「なんて言ってたの?」

「わた、わわわ、わたしを、、みみみみみんみんみーんみんみんみん、、、みたいな?」

「いや、セミやないかーい」

「水野さん、どうしちゃったんだろう、、、」

「きっとな、みなっちがかっこいいから緊張して上手く話せないんだよ」

「そんなことあるか?」

「もっと自分に自信をもてって、何回も言ってるだろー」

「え、てことはさ、水野さん、、俺に脈アリってこと?」

「そう。もう確定してると思うよ。」

「でも、黒髪ロング姿の水野さんを知っている限り、もう俺は、、、」

「じゃあ頼んでみたら?」

「なにを?」

「黒髪ロングになってくださいって」

「はい?」


次回、初恋の相手に頼む今日この頃



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