第35話 水中ファーム
「はい、それじゃあみんな、ごめんなさいして」
『ごめんなさい』
『『『ゴメンナサイ』』』
「うん、よし」
ルーナや、その指示で動いていたセイレーン達を見つけ出した私は、ヴァールをアクアレーンに戻した後で獣王ナルムさん達を海に招いて、みんなにごめんなさいして貰った。
それを見て、よし、と頷いた後、私自身も頭を下げる。
「うちの子が本当にご迷惑おかけしました……」
「いや……幸い犠牲になった者もおらんし、被害らしい被害も出ていないからな、構わんよ」
少しポカーンとしていたナルムさんだけど、私の謝罪に気が付くと戸惑いながらも受け入れてくれた。
ああしかし、とナルムさんは顎に手を添える。
「何のお咎めもなしでは示しが付かんな……獣議会で採決をした後、アクアレーンに手紙を送ることになっているのだが、その仕事を頼まれてくれるか?」
「はい! 任せてください!」
お咎めって言ってるけど、アクアレーンからの手紙を届けた私が、その返事を持ち帰るなんて普通のことだ。多分、後腐れがないように適当な口実を付けてくれたんだろう。
ナルムさんの優しさに感謝しつつ胸を叩いて請け負うと、場を包んでいた空気が弛緩する。
ひとまず、その獣議会? は招集と議決に一週間はかかるそうなので、それまではここで自由に出来そう。
つまり、やっと商売らしい商売が出来る! 多分!
「というわけで、食材とアイテム素材を採るために、ルーナが守ってくれてたファームに行こうと思います」
集まった人達が解散したところで、私はミレイさんとネルちゃんにそう伝える。
人魚騒動はもう解決したんだし、ネルちゃんは私に無理に付き合わなくてもいいんだよ?
え、ナルムさんもしばらく会議で忙しいだろうから、それまで私のお手伝いするって?
ありがとうね、ネルちゃん。
「ファームに行くのはいいけれど、何があるの?」
「水中とか、海の近くでしか採取出来ない素材がたくさんありますよ! 空気草とか!」
え、なんで水の中に入るためのアイテム素材とモンスターを、水の中のファームに入れたんだって?
ゲームでは問題なかったの!! まさかファームへの転移禁止状態でゲームの世界に放り込まれるなんて誰も思わないじゃん!!
「そっか、ここは漁師が多いから、エアポーションの需要は大きそうね」
「はい! それから、泳ぎをサポートする浮輪装備を作るのもいいかなって思ってます」
浮輪に使う素材さえあれば、クラフト系スキルで何とかなると思うし。
道具も必要だけど、今の私ならそれくらい買えるはずだ。
「本当になんでも出来るわね、マナミは。頼もしいわ」
「えへへ……」
ミレイさんに褒めて貰って思わず表情を緩めながら、私はルーナに頼んでファームへの道を開いて貰う。
ルーナが門番を勤めるファームは、水中に作られた透明なドームで覆われた空間だ。
水中とは言っても、海の中というわけじゃなくて、海の中で築かれた異空間っていう設定だったから少しややこしいけど。
このドームの中に、水が半円状に地面からせり出したような場所がいくつかあって、ここで水中でしか採取出来ない素材を育てられるようになってる。
ドームの外には当然、水棲モンスター達が自由に動き回っていて……もはや懐かしさすら覚える顔ぶれに、私は駆け出す。
「みんな、久しぶり!! 元気だった!?」
海中を泳ぐウミヘビみたいなモンスター、シャークマリナのスネルに、ちょくちょく体に変なアイテムを引っ掛けて運び込む《もの拾い》スキルを持つ巨大亀、ブルータートルのガメメ。
知らないうちにルーナが従えていたセイレーン達もテイムしておいたので、ちゃんとここに集ってる。
そんな従魔達と存分に戯れる私を、ミレイさんはニコニコと、ネルちゃんは少し意外そうに見つめていることに気付いた。
こほん、と一つ咳払いした私は、改めて二人に声をかける。
「そ、それじゃあ……採取始めよっか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます