第34話 事情説明
エンジェルマナフィンのルーナに再会したはいいけど、正直私の指示もテイムもなしにセイレーンを従えるようになってるなんてびっくりだ。
確かに、ルーナのスキルには《混乱の歌》っていう、周囲の敵性キャラを操って同士討ちを誘発するものもあるんだけどさ……。
『いえ、この子や他のセイレーンは、私に従属する代わりに他のモンスター達から守って欲しいと言われたので、遠慮なく私の手足として動いて貰っていただけです』
「そ、そうなんだ……」
まあ確かに、うちのルーナはレイドボスみたいな例外を除けば、野生のモンスターには絶対負けない強さがある。
そんなルーナを見付けたら、多少なりと知恵のあるモンスターなら庇護下に入ろうとするのはおかしくない……のかな?
「じゃあ、なんでセイレーン達に人間を海に引きずり込むなんてことさせてたの?」
一番重要なのはそこだ。
犠牲者が出なかったとはいえ、危ないことには違いないんだし、ちゃんと問いたださないと。
『もちろん、マナミを見つけるためです!! この広い海から探し出すのは、私一人ではとても手が足りないので』
「それは分かったけど、なんで引きずり込むなんて危ない方法を取ったの? ってこと」
そもそもなんで私が海にいると思ったんだろう、って疑問もあるんだけど、まずそこをハッキリさせないと。
そんな私に、ルーナはこてん、という感じに体を斜めに傾けた。
『海の中に入って貰わないと、マナミかどうか分からないので』
「溺れたら危ないでしょ?」
『溺れる……?』
「……へ?」
まさかそこで通じないとは思わなくてびっくりした私は、人は海の中じゃ呼吸出来なくて死んじゃうんだよ……ってことを伝えると、ルーナは愕然としていた。
『そんな……マナミはいつも海の中に会いに来てくれていたから、てっきりみんなそういうものだって……』
「えー……」
いや、確かにルーナ……エンジェルマナフィンは完全な水棲タイプで、しかも本来は深海に棲むモンスターだ。私がゲームで呼び出したのも、会いに行ったのも、全部海の中だった。
加えて……ルーナって、私がタマゴから育てたモンスターだから、最強クラスの力は持ってても実は子供なんだよね、多分。
いやでも……そっかぁ、それは盲点だったなぁ……。
『マナミよ、従魔の教育はきちんとしなければいかんぞ』
「うん、これは反省だね」
まあ、ゲームではそんな教育なんて出来ないから、反省のしようもないんだけど……これから気を付けることくらいは出来るはず。
……そうなってくると、一気に他の子達も心配になってくるなぁ、みんな強いし。
「とにかく、また落ち着いたら会いに来るから、これからは海上の人間に手を出すのはメッ! だよ!」
『分かりました、気を付けます……』
しょぼーん、と落ち込むルーナに近付いてヨシヨシしてあげると、嬉しそうに海中でくるくる回り始める。
ひとまず、元気そうなのは良かったよ。
「それじゃあ、私は一度戻るから」
『もう行ってしまうんですか……?』
「これからはいつでも会えるよ。ファームで待ってて」
ララの時もそうだったし、こうして門番のルーナに会えた今、水棲ファームへの道は開いた。
海上で待たせちゃってるミレイさん達のことも心配だし、一度戻って事情を伝えないとね。
「また会えて嬉しかったよ、ルーナ。それじゃあ、また後でね」
一旦ルーナとお別れした私は、ヴァールに頼んで海面まで上がって貰う。
うっかり船の真下から出ると危ないから、慎重に浮上して貰わないと。
『グオォォォ!』
「ヴァール、そんな叫びながら浮上しなくてもいいんだよ? なんで叫ぶの?」
『気分だ』
気分なんだ。
そんな風に思いながら、なんだか久しぶりな気がする外の空気を吸っていると……ヴァールの背から見下ろした先に、私がここまで乗ってきた船が見えた。
「あ、みんなー! ただいまー!」
とう、と船に向かって飛び降りると、そんな私にミレイさんが必死に手を伸ばした。
「マナミ!!」
「わっと……ミレイさん?」
こんなにびしょびしょになってるのに、私を抱き締めて離さないミレイさんに首を傾げていると……耳元で、小さな嗚咽が聞こえてきた。
「良かった……マナミが無事で……」
「ミレイさん……心配かけてごめんなさい」
最悪ヴァールがいるし、というのはずっと思っていたから、セイレーンに引きずり込まれた時もそこまで危機感は覚えてなかったんだけど……ミレイさんは違ったみたい。
なかなか上がってこない私を本気で心配してくれていたミレイさんに謝って、私からも抱き返す。
そうしていると、隣から声をかけられた。
「お、おい……なんで人魚に引きずり込まれていって、こんなヤバそうなモンスターと一緒に戻ってくることになるんだ? どうなったのか説明しろ!」
「あ、そうだったね」
ベベルさんに促された私は、海に潜った後のことを語って聞かせる。
人魚の正体がセイレーンだったこと、セイレーンを従えていたのはやっぱり私の従魔で、私を探していたってこと。
そして、水中で溺れないために、ヴァール……海竜リヴァイアスを召喚したこと。
それを全部聞き終えたベベルさんは、引きつった表情で一言。
「お前……本当にすごい奴だったんだな……少し、見直した……」
……疑われてたんだ、私。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます