親友の秘密
「彩葉、今日の放課後話せる?」
「え、う、うん」
隣の席の由香子が急に改まって聞いてきたから驚きを隠せず私は声が詰まってしまった。
いつもなら「今日一緒に遊ぼー!」や「昼休みのとき先生に提出するものあるからついてきて~」などと気楽にみんなに聞こえる声で話すのだが、今日は違う。
私はそんないつもと違う由香子に動揺が隠せず、授業中ずっと奇々怪々な動きをしていた。
部活の先輩と廊下ですれ違って、先輩が「おはよう、彩葉ちゃん」と言ってくれたのにもかかわらず私は「あ、はい」とわけの分からない言葉を発してしまった。
またまた、数学の授業中、先生にあてられた時も「えーっと、十七?」と適当な数を答えてしまった。
しかし、聞かれていたのは先生の雑談に関する質問だったそうで、「先生は今動物を飼っている人になんの動物を飼っているのか聞いているんだぞ?」と言われた。
いや、なんでやねんっ!とツッコみたくなった。
おかげでこっちは学校のアイパッドで「十七」という動物を検索する人が大量発生することになり、とても恥ずかしかった。
(みんな~十七っていう動物はいないよぉぉ)
私はそんな大変な学校生活を送りながら待ちに待った放課後がやってきた。
「みなさんさようなら」「さよーなら」
みんなで声を合わせてホームルームを終わらせた。
「彩葉、ちょっと来て」
由香子に呼ばれてついていく。
由香子は人気のない場所へとずんずん進む。
私たちは第二校舎の階段の踊り場で話すことにした。
「え、で、どうしたの?」
私は由香子がなかなか話し始めないから沈黙に耐え切れなくなって聞いた。
すると由香子は少し顔を赤らめて目をそらした。
「実はね…」
私はごくりとつばをのむ。
「わたしっ中学二年生の星宮翔太先輩が好きになっちゃったの!」
「えーーー!」
「しっ!声がでかいよ」
「あぁごめん」
私は思わず大声を出してしまった。
まさか由香子が恋をするとは!
私は色々と詳しく聞きたくなった。
「で、なんでなの?」
「なんでって?」
「なんで好きになったの」
「そりゃあもう、部活で星宮先輩がフルートを吹いている姿がかっこよくて頭がいいし!」
由香子は目をキラッキラにさせて少し恥ずかしがりながらも情熱的に語っている。
理由を聞いたのは私だが、少し悲しくなってしまう。
だって私たち二人は恋愛には興味なし!修学旅行だって恋バナは聞く専門をつらぬいてきた。
だけど由香子がそれを卒業するのだ。
「そっか…」
「うん。だから人のいない場所で言いたかったの」
「なーんだ!よかった」
「なんで?」
可愛く首をかしげる由香子に私は笑って見せた。
「なんかもっと深刻なものかと思って!」
「なにそれーっ」
「あはは、由香子、ついに好きな人ができたんだね」
「うん!」
そうやってうなずいている親友はとても輝いて見えた。
少しうらやましいな…でも!
「応援するよ!」
「ほんと!?ありがとぉぉ」
「いえいえ」
私は恋する由香子を見て、精一杯応援すると決めた。
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