### 第4話: 隠された想い
陸風の勝利は青雲城中で話題となり、紫穂の父
も彼の姿を見て驚いた。しかし依然として、彼
は陸風に好意を持たないようだった。趙恒は敗
北したが、彼は紫穂に対して未練を残し、粘り
強くアプローチを続けていた。
*
ある夜、紫穂は城の屋上で月を見上げ、亮《あ
かり》の光に照らされた自分の心を思い巡らせ
た。彼女の心の奥には陸風への愛が芽生え、大
きな希求があった。だが周囲の期待と父の存在
に押しつぶされそうになり、どこかぶつ切れた
感情を抱えていた。
*
その頃、麗しき歌声が耳に届いた。振り向く
と、そこには趙恒がいた。彼は、紫穂の前で歌
を披露し、彼女の心を揺さぶろうとしていた。
「紫穂、私の願いを聞いてください。あなたと
私の運命を信じてほしい。」
「申し訳ありません、私は…」
彼女は言葉を詰まらせた。この瞬間、心の奥底
で陸風の顔が浮かぶ。
「陸風しか見えていないのに、どうしてこうも
痛むのか…」
趙恒は、彼女の心を引き裂こうとするように近
寄った。
「私のことを振り返ることはないのか?私の愛
は純粋だ、紫穂。」
紫穂は焦りを抱えながら、彼に優しく微笑む。
「あなたの気持ちは感謝しますが、私の心は決
まっています。」
その言葉が彼女自身の心をも強くする力を与え
た。
*
数日後、紫穂は陸風と秘密の場所で再会し、彼
に自身の思いを伝えることを決意した。彼を思
い、心の奥から溢れ出す感情を抑えていた自分
がいた。花が咲き誇る森の中で、長い髪を揺ら
しながら待っていた彼女は、やがて彼の姿を見
つけた。
*
「陸風!」
彼女は手を振り、笑顔を見せた。彼はその瞬
間、紫穂の声に驚いて駆け寄り、一瞬で彼女の
心に光が差し込んだ。
「お待たせしました、紫穂。あなたのことを考
えていました。」
彼女は彼の目を見つめ、
「最近、言いたかったことがあるの。私の心は
陸風にしか向いていないの。あなたに全てを捧
げる覚悟はできているの。」
陸風の目が大きく見開かれる。
「本当に?私も、あなたへの気持ちが止まらな
い。けれど、君のために何かを成し遂げなけれ
ば…」
「この愛を大切にしたいの。相手があなたであ
ることに変わりはないから。」
紫穂は心の奥底からわき起こる言葉を伝え、二
人は互いの想いを知り、運命を共にすることへ
と決意を固めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます