### 第2話: 別れと再会
青雲城の街外れ、紫穂は、心に住む不安を抱え
ながら父の元へ向かっていた。彼女は前の日、
陸風との素敵な出会いを報告したものの、父は
それを受け入れなかった。紫穂の心には、彼と
の再会を願う気持ちと、父の厳しさが交錯して
いた。
*
重い空気の中、紫穂は父の書斎の扉をそっと開
けた。そこには、威厳を持ち、厳しい眼差しを
持つ父が待っていた。
「紫穂、今すぐ陸風のことは忘れなさい。彼は
身分の低い武道者だ。お前の未来には相応しく
ない。」
「お父様、でも…」
紫穂は言葉を続けようとしたが、父の冷たい視
線に阻まれた。心が引き裂かれそうだった。彼
女は陸風の優しい笑顔を思い浮かべ、その存在
を失うことが耐えられなかった。
「私が決めることよ、紫穂。」
父の声は静かだったが、同時に
「従え」
という強い意志を感じさせた。紫穂はうなだ
れ、父の前でひざをついた。
「申し訳ありません、ですが…」
「即刻、大人しくするのです。」
父は無情に言い放ち、その場の空気をさらに冷
たくした。
*
その日の夜、紫穂は月明かりの下で涙を流して
いた。このまま陸風と別れなければならないの
か、彼との運命の出会いは一時の夢だったのか。
「諦めたくない…」
と呟いた瞬間、心の中で何かが燃え上がった。
*
時が経つにつれ、紫穂は陸風のことを思い続
け、一度でも会いたいと強く願った。数ヶ月
後、ある日、紫穂は友人の李梅と一緒に青雲城
の外で花を摘んでいた。ふと、その時の春の香
りに心を躍らせていると、遠くから聞こえる武
器の音に引き寄せられた。
*
音のする方へ近づくと、そこには陸風が剣を振
るっている姿があった。彼は周囲の人々から称
賛の声を浴びていたが、紫穂の姿を見つけた瞬
間、目が合った。まるで時間が止まったようだ
った。彼の背後には桜の花が咲き誇り、その美
しさは二人の再会を優しく祝福しているかのよ
うだった。
「紫穂!」
驚きと喜びが交錯する声で彼は呼びかけた。紫
穂は心臓が高鳴り、飛び跳ねるように彼の元へ
駆けつけた。
「会いたかった!」
二人は言葉を交わすことなく、ただその胸に飛
び込んだ。
*
その瞬間、懐かしさが溢れ出し、全ての不安が
消え去った。運命の出会いは続いている。再び
手を握り、二人は金色の夕日を背に歩き出す。彼
女たちの心には希望が満ち、道は新たな愛の旅
に向かって続いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます