花水月の恋
牡蠣
### 第1話: 運命の出会い
青空が広がる春の日、燕国の都・青雲城は、桜
の花が舞い散る美しい光景に包まれていた。風
に揺れる桜の花びらは、まるで舞い踊るように
彼方へ流れ、城の周りには淡いピンク色の絨毯
が広がる。そんな華やかな日に、主人公の紫穂
《しほ》は、父親の命令で近くの市場へ出かけ
ることになった。
*
紫穂は、その美しさから城中の話題となってい
る若い女性だった。肌の白さは雪のようで、長
い黒髪はまるで月の光の下で輝くかのよう。彼
女の透き通るような瞳は、まるで深い湖に映る
星空のように神秘的で、ふとした瞬間には周囲
の人々を魅了していた。やわらかいピンク色の
着物をまとい、優雅に歩く姿は、まさに春の女
神と呼ぶにふさわしい。
*
市場へ向かう途中、紫穂は友人の李梅《りば
い》とともに楽しげに話しながら歩いていた。
二人は笑い声を響かせながら、色とりどりの
品々が並ぶ店を眺め、寄り道をしながら心を躍
らせた。
「紫穂、あれを見て!」
李梅が指差す先には、名高い武道者の放つ声が
響いた。店の前で剣を振るう青年、陸風《りく
ふう》がいた。彼は身体が引き締まり、無邪気
な笑顔を浮かべていた。その姿は、美男と評さ
れ、若者たちの憧れの的だった。
「すごくかっこいい!」
と李梅が目を輝かせると、その声が彼の耳に入
ったのか、彼は振り返り、二人を見つめた。瞬
間、紫穂の心臓は大きく跳ね上がる。彼の目
は、まるで深い森のような濃い緑であり、不思
議と彼女の心の奥底に触れるような感覚を覚え
た。
*
目が合ったその瞬間、紫穂は不思議な縁を感じ
た。まるで運命的な引力に引き寄せられるよう
に、彼は紫穂のもとに歩み寄り、
「今日はたくさんの人がこの市場に来ています
が、あなたのような美しい方に出会えるとは思
いませんでした」
と、優雅に頭を下げた。
*
恥じらいを感じながらも、紫穂は微笑み返す。
「ありがとうございます。でも、陸風さんもとて
も魅力的です。」
陸風は目を細め、少し照れくさそうに笑った。
「私の魅力は剣の腕前だけですけれど、あなた
の美しさには敵わないようです。」
紫穂はその言葉に照れくささを隠せず、心が高鳴
った。彼と話すたびに、何か特別な感情が芽生
えていく気がした。そしてその日は、彼と二人
で市場を巡り、さまざまな品々を楽しみなが
ら、言葉を交わすうちにしだいに距離が縮まっ
ていった。
*
帰り道、紫穂は心の中で思った。今日の出会い
が運命であれば、きっとまた会える日が訪れる
と信じて。色鮮やかな桜の花びらが舞う中、彼
女の心は希望に満ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます