花水月の恋

牡蠣

### 第1話: 運命の出会い

青空が広がる春の日、燕国の都・青雲城は、桜


の花が舞い散る美しい光景に包まれていた。風


に揺れる桜の花びらは、まるで舞い踊るように


彼方へ流れ、城の周りには淡いピンク色の絨毯


が広がる。そんな華やかな日に、主人公の紫穂


《しほ》は、父親の命令で近くの市場へ出かけ


ることになった。



紫穂は、その美しさから城中の話題となってい


る若い女性だった。肌の白さは雪のようで、長


い黒髪はまるで月の光の下で輝くかのよう。彼


女の透き通るような瞳は、まるで深い湖に映る


星空のように神秘的で、ふとした瞬間には周囲


の人々を魅了していた。やわらかいピンク色の


着物をまとい、優雅に歩く姿は、まさに春の女


神と呼ぶにふさわしい。



市場へ向かう途中、紫穂は友人の李梅《りば


い》とともに楽しげに話しながら歩いていた。


二人は笑い声を響かせながら、色とりどりの


品々が並ぶ店を眺め、寄り道をしながら心を躍


らせた。


「紫穂、あれを見て!」


李梅が指差す先には、名高い武道者の放つ声が


響いた。店の前で剣を振るう青年、陸風《りく


ふう》がいた。彼は身体が引き締まり、無邪気


な笑顔を浮かべていた。その姿は、美男と評さ


れ、若者たちの憧れの的だった。


「すごくかっこいい!」


と李梅が目を輝かせると、その声が彼の耳に入


ったのか、彼は振り返り、二人を見つめた。瞬


間、紫穂の心臓は大きく跳ね上がる。彼の目


は、まるで深い森のような濃い緑であり、不思


議と彼女の心の奥底に触れるような感覚を覚え


た。



目が合ったその瞬間、紫穂は不思議な縁を感じ


た。まるで運命的な引力に引き寄せられるよう


に、彼は紫穂のもとに歩み寄り、


「今日はたくさんの人がこの市場に来ています


が、あなたのような美しい方に出会えるとは思


いませんでした」


と、優雅に頭を下げた。



恥じらいを感じながらも、紫穂は微笑み返す。


「ありがとうございます。でも、陸風さんもとて


も魅力的です。」


陸風は目を細め、少し照れくさそうに笑った。


「私の魅力は剣の腕前だけですけれど、あなた


の美しさには敵わないようです。」


紫穂はその言葉に照れくささを隠せず、心が高鳴


った。彼と話すたびに、何か特別な感情が芽生


えていく気がした。そしてその日は、彼と二人


で市場を巡り、さまざまな品々を楽しみなが


ら、言葉を交わすうちにしだいに距離が縮まっ


ていった。



帰り道、紫穂は心の中で思った。今日の出会い


が運命であれば、きっとまた会える日が訪れる


と信じて。色鮮やかな桜の花びらが舞う中、彼


女の心は希望に満ちていた。

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