4歩目 有能な相棒


「罠、仕掛けないと…」

 クリスは思い出したように足元の道具へと視線を移す

『罠?何の罠だよ』

 ククルも視線を罠へと向ける

「ネズミ」

『ふーん。罠を設置するやり方知ってる?』

 ククルが聞く

「知らない」

 クリスは堂々と答える

『仕方ないなー、僕が教えるてあげるよ』

 そんなクリスに呆れながらも丁寧に教え始める

『まず、木の根の近くを軽く掘る』

 そのククルの言葉に従い、木の根にしゃがみ土を少し掘る

『そのくらい。で、罠を仕掛ける。あー、ここは見せた方が早いかな』

 ククルは肩から飛び降り、罠を設置し始める

『ここをこうしてー、次はこう。んで、最後に土を薄く被せて完成。分かったか?』

 ククルはすぐにと罠を張り終わると、肩の位置へと戻った

「多分」

『まずは実戦!ここより少し離れた場所で2個目を作るかー。あ、その前に目印をつけとかないとなー』

 ククルはもう一度肩から降りると、手早く木に引っ掻いた

『よし、行くぞー』

 ククルは再びクリスに乗って、楽しそうに言う

 ククルからは、自分で歩こうとする気は感じられない







「ここは、こう…」

『あ、待って』

 その言葉でクリスは止まる

『あともう少し、ちょーっとだけ深く木の枝を刺さないと。じゃないと、少し風が吹いたぢけで倒れるよ』

「分かった」

 ククルに言われた通りに木の枝を少し深く刺す

『うん。いい感じ、このまま残りも頑張って』

「ん」

『じゃあ僕は、を取りに行ってくるから』

「」







「ふぅーー」

 大きなため息が吐かれる

「終わった…」

 慣れない行動をしたためか、もう日が暮れかけている

『お疲れ様』

 いつのまにか帰ってきていたククルは大きな赤い果物を持って木の幹に立っている

 その言葉を聞いて、クリスはそちらに視線を向ける

「なに?それ」

 クリスはククルを木の幹から自分の手へと移して話しかけた

『リルラの実って言ってね。高いところでしか取れないから、木に登れる動物しか知らない甘くて美味しい果物だよ!』

 クリスはへーと曖昧な返事をしながら、リルラの実を見続ける

『そんな見なくても一緒に食べる為に持ってきたからあげるよ』

 その言葉にクリスは目を輝かせる

『ほら、半分に割ってよ!早く!』

 そんな催促を受け、クリスはリルラの実をククルから受け取る

「ぅんっ!……ふぅ、」

 筋力が少しついたクリスは少し時間はかかったが、何とか果物を割ることができた

『ありがとー』

 ククルは半分になったリルラの実にすぐに喰らいつく

「シャリッ」

 クリスもリルラの実を食べると、そこからは水々しい音が聞こえる

『どう?美味しい?』

「ん」

 クリスは短く返事をしながらも、リルラの実を食べ続けた

『食欲に忠実だなー。あ、そーだクリスって何歳?』

「知らない」

 ククルが世間話を振るも、クリスは適当に返して話を広げようとしない

『あー、僕は2歳の春生まれ。クリスはどの季節?』

「多分…冬。雪、降ってた…」

『生まれた頃の記憶あるんだ』

「何となく、だけど」

 そんなクリスの反応で、なんとなくだがククルは褒められ慣れていない事を察した

『記憶力があるのはいい事だよ。さっき教えた罠もすぐ覚えたしねー』

 最初の生意気な様子から打って変わり、クリスを甘やかす

 まるで、クリスを弟であるかのように褒めた

「ん、終わった」

 そんな状況から逃げるためか、誤魔化すように食べ終わったことを報告する

『お、食べ終わったか。僕はここで食べ続けるから街に向かうか』

 このまま聞き続けるのも良くないと思い、ここで褒めるのをやめる

「ん」

 クリスはてくてくと小さな体で歩き始める

 その横で、ククルはクリスの情報を聞き出し続けた

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