第17話 五日後の絶望(シィーン視点)


 五日後、シィーンが宮殿へ戻るが異変に気が付く。

 荒れた庭に、激怒し大騒ぎしてシィーンに詰め寄るエリザ姫。

 二人の侍女は土下座して、命乞いをしている。


「エリザ! 何故ここにいる!?」


「ガザルシィーン!! あの遊女はなんだ!? 私に剣を向け逃げた!! 即刻に打ち首にしろ!!」


「黙れエリザ。俺の宮殿で何をした? 迎賓館か自分の城へ戻るがいい。此処へは二度と来るな」


「貴様!! 婚約者の妾をないがしろにして!」


「婚約者だと!? 俺は君を婚約者だと認めたことなど一度もない!」


「ぐ……! しかし!」


「静かにしろエリザ。ハルドゥーンを脅し、一般市民の占い師を強制的に連れ出すと脅した一件。俺は注意だけで済ませたな。しかし今度ばかりは注意だけでは済まんぞ」


 静かに……だが、心の底からの怒りを抑えたシィーンの瞳に睨まれたエリザは硬直して動けなくなった。 

 そんな姫には目もくれず、シィーンは宮殿内でマキラを探す。


「マキラ!! どこだ!? 怪我はないか!? どこにいるんだ!! マキラーーーー!!」

 

 しかし、慌てふためいている使用人達を見れば、探し続けても見つからないのはすぐに理解できた。

 

 寝室には残されたままの、エンゲージリング。

 二匹の仔虎は、マキラを求めて悲しく鳴いている。


「マキラ……」


 本来ならば、入るのも出るのも、難しい覇王の城。

 しかし彼女なら、この宮殿を囲む城からも逃げ出せる……!


 察したシィーンは、すぐにマキラの家へ向かった。


 そして、マキラの玄関の貼り紙を見たシィーンは全てを悟った。


 エリザ姫とのやり取りで、彼女はシィーンの正体を知ったのだ。

 そして傷つき、宮殿を去った――。


「……マキラ……最悪な知られ方をしてしまった……」


 この地域では珍しい時期に、雨が降り出した。

 愛するマキラを探すため、歩き出すシィーン。


 探す当てなど、何もない――。


「でも、俺は絶対に君を諦めたりしない……必ず君を、探し出してみせる……!」


 雨は激しく、覇王ガザルシィーンに容赦なく降り注いだ。


 

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