第4話 王国を滅ぼした者.3


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「何なのあれ? あったまきちゃうっ! てか、何で領地ほっぽりだしてこんなとこいるのよ!」

「わかってたことだろ? そんなことは。ユサの父ちゃんが、あんなのってことくらい。ユサもそのことで心を痛めてる」


 ヨシハとイナンナは屋敷を出て、王都中心にある広場に向かっていた。


「私たちは国の英雄でしょ? 国王から直々に名誉と報酬をもらったっていうのに」


「ひっそりとしたやつな」

 ヨシハは笑った。


 国王に面会。それが王都にやって来た、もう一つの理由だった。戦った三人と、レム村の長も招かれた。ただ、黒竜については、徹底された情報統制のため、知り得るのは国の権力者のみで、このことが民衆に知れ渡ることなど決してなかった。


「そんなことよりせっかく王都に来たんだ。いろいろ見て行こう。お金も手に入ったことだしな」

 

 二人は住宅地を抜け、王都中心にある大きな広場に出た。

 中央の噴水は、日差しを浴びてきらきらと輝き、周りはたくさんの人で賑わっている。肌が赤っぽい色の人、青、緑、小人など、人間とは異なる種族も、ちらほら見受けられる。ここは大陸一、活気のある場所だ。


 物珍しく魅入られたように通り過ぎ、商店街に入ると、イナンナが目を輝かせた。

「ヨシハっ! 見て見てっ」

「いてー、いてー、引っ張るなっ」

 ヨシハは、耳がもげる思いをしながらも、どこか嬉しげだった。


 それは、子供のようにはしゃぐイナンナの姿のせいかもしれない。


 色とりどりの布や宝石、香辛料や薬草、魔法の道具や書物。目の前の屋台や露店では、二人が見たこともない物が並び、人々は賑やかに値切ったり、交渉したり、笑ったりしていた。

 イナンナは、あれも欲しい、これも欲しい、と言いながらと駆け出した。


「イナンナー。もらったお金は旅の資金だから、見るだけだからなーー」

 イナンナは振り返り、飛び跳ねて叫んだ。

「わかってるってーー!」

 二人は、まるで一生分の楽しさを詰め込むように楽しんだ。



 ◇◇◇



「——で、あなたたちは、ここへやって来たと」


 窓の外をじっと眺め、二人の話に耳を傾けていたソフィーは、そっと口を開いた。

 そして二人の方を向いて問いかける。


「ここは……? ベルガリオン国?」

 

「そうだ。アルベニアを抜けて来た。それと、この家は、ドーヴェルニュの家だ。ユサんとこの」


 ソフィーは思った。

 おそらく、私をめた者の背後には強大な何かがあり、その一つが、アルベニアの同盟国のベルガリオンではないかと。

 お兄さまもきっとこの国に……。


「アルベニアの人間だろ? 何があったんだ?」

 真っ直ぐソフィーの目を見て訊いたヨシハだったが、そのあとの言葉を聞き、目を丸くした。


「……何があったって?」

 ソフィーは呆れたように笑みを溢し、話を続けた。

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