第2話『猫ASMRを聞かせてくれるドジっ子お姉さん』

「…あ、あー、あー、マイクテス、マイクテス」


「…よしっ!ん、んっ…」


「や、やっほ~?キミの大好きなお姉さんだよ~?毎日お仕事お疲れ様」


「あ、え~っと…この前はごめんね…?あんまり癒やしのASMRじゃなかったかも…」


「だから~…今回は前回の反省を生かして!ちゃんと!ちゃんとASMRのリベンジをしたいと…思いま~す!」


「そう、お姉さん理解をしたわ」


「食品系ASMRは私には向いてないかもしれないってことを!」


「だから今回は…じゃ~んっ!」


「使っても大惨事にならない道具を色々用意してきたわ!」


「それじゃあ…早速………」


「…今日は大丈夫よね…?美優の声は………」


「………聞こえない、おっけー」


「さて…それじゃあ、まずは耳かきからやっていくわね?」


「じゃあ…ほら、ね?」


ポンポン(膝を叩く音)


「膝枕、してあげるから…ね?おいで?」


「…ふふ、良い子良い子。それじゃあ、じっとしててね…?」


カリ…カリ…(耳かきでマイクを擦る音)


「ふふっ、大丈夫?痛くない?」


「…良かった、それじゃあ続けるわね?」


カリ…カリ…(耳かきでマイクを擦る音)


「結構溜まってるわね…ちゃんと定期的に掃除しなきゃ駄目よ?」


「あ、もし自分でやるのが難しいなら…いつでも家に来てくれても…」


「………な、なんでもないわ!続けるわね?」


ぽふ…ぽふ…(梵天を当てる音)


「うふっ、どう?気持ちいい?」


「…うん、それは良かったわ」


「それじゃあ…そろそろ仕上げね?」


ふぅ~っ…(マイクに息を吹きかける音)


「…ふふっ、びっくりした?」


「あはは…ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど…」


「…その、キミが喜ぶかな…って思って」


「………や、ごめん!その…わ、忘れて!」


「………えっと…そ、それじゃあ反対側を…」


ドタドタ…(遠くで誰かが走る音)


『お姉ちゃ~ん!まるそっち行ったから相手してあげて~!』


「えぇ!?み~ゆ~!今お姉ちゃんちょっと収録中なんだけど~!?」


『そんな事言われてももうそっち走ってっちゃったよ~!?』


「えぇ~!?ちょっと…文句言ってこないと…」


「あはは…ごめんね?今回も騒がしくて…」


「すぐ終わるからちょっと待っててね?」


「んしょ…」


とすとす…(部屋の中を歩く音)


カチャ(ドアを開ける音)


「ちょっと美優~?まるがこっち来たって言われても…」


ドタドタドタ…(何かが走ってくる音)


ンミャー!(猫の鳴き声)


「えーっ!ちょ、ちょっと!今は駄目だって!駄目駄目…」


ニャー!(猫の鳴き声)


「あーっ!駄目だって!今は入ってこないでーっ!」


ドタバタ…(部屋に猫が入ってきて動き回る音)


「あーっ!だ、駄目駄目…せめて大人しくして…ね…?」


ミャア(猫の鳴き声)


「あ、あわわ……」


たすっ(猫が机の上に乗る音)


んみゃ…(猫の鳴き声)


「や…やめてね…?マイク壊すのだけは駄目よ…?そうでなくとも今収録中だから…ね?」


………


みゃあ(猫の鳴き声)


カリ…カリ…(猫がマイクを引っかく音)


「ひいっ!」


カリ…カリ…(猫がマイクを引っかく音)


ゴトッ!(猫がマイクを倒す音)


「ひっ!や、やめ…」


ふみゅ…(肉球でマイクを踏む音)


ふみゅ…(肉球でマイクを踏む音)


みゃお…(猫の鳴き声)


「あっあっあっ…」


たすっ…(肉球でマイクを押す音)


ざり…ざり…(マイクにじゃれ付く音)


「ひぃ…」


「こ、このままじゃ大変なことに…」


「………ハッ!そ、そうよ!これよ!」


「ほ~ら、まる~?こっち見て~?」


みゃ…?(猫の鳴き声)


チリンチリン(鈴付きの猫のおもちゃを動かす音)


「まるの好きなおもちゃだよ~?だからこっちに来てね~?」


みゃう!(猫の鳴き声)


タタッ!(猫が飛びつく音)


「わっ!?ちょ、ちょっと!そんな急に動かないで…!」


マーオ!(猫の鳴き声)


「ちょ、まる、激しすぎ!に、逃げないから…逃げないから…」


んみゃんみゃんみゃ(猫の鳴き声)


「ちょ、暴れないで…」


ドスン!(お姉さんが尻餅をつく音)


「あ痛っ…!」


「ふぐっ…痛………ぐうう……」


「………うう~………お尻いったい………」


みゃう(猫の鳴き声)


とすっ(猫がお姉さんの頭に乗る音)


「あうう………」


トントントン…(誰かが階段を登る音)


ガチャ(ドアを開ける音)


『ねえお姉ちゃ~ん?凄い落としたけど大丈…えなにそれ!?』


「うう…美優ぅ…」


カシャ(カメラの音)


「え!?ちょっと!なんで撮ってるの!?」


『え~、だってすっごい可愛いじゃん~!』


「可愛くは…」


『あ、この写真お兄ちゃんにも送っとくね~』


「え!?あ!?ちょっと美優!?それは駄目」


『え~、もう送っちゃったけど』


「ガーン!」


『え、何その反応…』


「だ、だってぇ…あの子に失望される…」


『あはは~!お姉ちゃん考えすぎだって!だっていつもドジな姿見せてるじゃん!可愛いって思ってくれるって~』


「そういう問題じゃなくて…うう……ふええ……」


『ぅえ!?ちょ、お姉ちゃん!?ご、ごめんって…』


「うえ~ん…やだよぉ…嫌われたくないぃ…美優のばかぁ…」


『ちょ、お姉ちゃん…本当ごめんって……でもお兄ちゃんはさ、お姉ちゃんのそういう所も含めて受け入れてくれると思うよ?』


「………うう、本当?」


『本当!本当だって!そうじゃなきゃもうとっくにお姉ちゃんの事見限ってるはずだし………』


「…うっ、ふぐぅ~………」


『だからさ…ね?お姉ちゃん、機嫌直して…ね?』


「うう………わがったぁ…」


『ふぅ~………今回はちょっと意地悪だったかな…あ!今日のASMRはここまでね!お兄ちゃん…今度会ったらお姉ちゃんのフォローしてあげてね?それじゃ!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る