出会い

 シュンは吐き捨てるようつぶやいた。 

「別にそんなに怒ることないじゃないか」 

 シュンは、両親共にさる大学の教授だということを除けば、ごくごく普通の少年である。彼はぶつぶつと文句をいう

「ちょっとテストの点が悪かっただけだろ。母さんも父さんもすごい人だし、の凄さもわかってるよ。でも、僕だってそんな言われたらイライラするし。」

 そんなわけで、いまシュンは広い家の中のやけに豪華な扉の前にいる。怒られた腹いせに両親に入るなと言いつけられている部屋に入ってやろうとしているのだ。

 ゆっくりと観音の扉を押すと、ぎしぎしと重い音をたてながらゆっくりと開いていった。意外と簡単に開いて、シュンは少し拍子抜けした。しかし、内側からドアチェーンがかかっていて、10センチほどしか開かなかった。

 シュンは、あらかじめ持ってきていた懐中電灯で、部屋の中を照らした。

 

 その細長い部屋の中には、女の子らしい____死語に近い言葉だがこれ以外で表現のしようがなかった___人形やぬいぐるみ、ふわふわした服、たくさんのかわいい小物などだった。

 シュンは、きっと母さんに少女趣味があったのだろう、もしかしたら父さんのかも、どっちにしろそれが恥ずかしかったのでこの部屋のことを隠したのだろうとどこか拍子抜けした気持ちで思った。

(別に隠すことないだろう。)

 シュンが戻ろうとしたその時、部屋から物音がした。なんだと思って振り向くと、部屋の奥に少女がいるのが見えた。どくどくと心臓が高鳴って、ごくりと喉仏が動いた。もしかしたらこの少女がこの部屋の秘密なのかもしれない。

 懐中電灯の光に照らされたその少女は、日に焼けたことのないような白い肌と、雪のような白さの長い髪を持っている。しかし、特に印象深いのはその目である。血のように赤いその目は、かのエネルギー体を思い起こさせた。片目には包帯を巻いていたが、肌の白さ故にすぐには気づけなかった。少し少女趣味の服を着て、部屋の奥に座っていた。

「それを消して頂戴?眩しいのだけど。」

 少女は少し傲慢に言った。

「ごめん。ええと、君は誰?」 

「シャルロットと言うわ。」

 暗闇の中でシャルロットは微笑んでいた。ベットから立ち上がるとこちらに近づいてくる。

「あなたの名前はシュンでしょう。ご両親に怒られてきたのなら、早く帰ったほうがいいわよ」

「なんでそれを…。」

 シャルロットは扉を閉めながら言った。

「またきてくれる?ここに一人だと退屈なのよ。この事は他の人には言わないで。」

 シュンの目の前でとびらがしまった。彼は夢から覚めたよう気がして、扉を見つめ続けた。



 

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