第七話 王に会いに行く

 露天風呂は最高です。


 傭兵部族『き』共同浴場

 転生少年 ローカルガイド クチコミ1件

 ★★★★★ 1日前


 大自然を満喫出来る露天風呂です。

 男女混浴で無料ですがその代わり少し労働をする必要なあります。

 今のところ唯一のお風呂なので★5とします。


 ……ってレビューしたくなるぐらい俺は満喫している。


 河原。

 川の水をすぐ引き込める場所に穴を掘る。

 大人たちにも手伝ってもらった。

 水を溜めながら石を積んで焚き火。

 熱せられた石を次々と放り込む。

 風呂の完成だ。 

 山でキャンプした時にやったことあるのよ。


 ただし。今は問題がある。

 俺の横にはミサ、反対側にはオミ、正面にはディザ帝国の皇女さま。

 絵面だけ見たら天国かって思うけど、思春期の身体を持つ身としては辛いんだよ、これ。


 こっちじゃ社会通念によって刷り込まれた倫理観が無い。

『性=後ろめたいこと、恥ずかしいこと』ではないんだな、これが。

 開けっぴろげ。フリーダム。

 おおらかで奔放だ。


 オミと皇女さまからは目を逸らす。俺の身体の一部がヤバいからだ。

 ミサはいいなぁ。中学生ぐらいだから色気なし!

 ほんと娘だよ。俺の癒し。

 ミサは少し恥ずかしそうにして俺の目線を確認しながら、オミと皇女さまのおっぱいを見ているけどな。


 さて皇女さまーー名前はユリーカーーの処遇はどうなったかと言うと『き』預かりとなった。


 中央部族の使者とユリーカ皇女が交渉した内容は以下の通り。


 ・亡命を希望する


 ・転移出来る距離は最大で帝国の端から端まで転移できる(数百km?)


 ・もしも帝国が奪還、或いは暗殺に来た場合、国境近く(つまり『き』の拠点)にいる方が対処もしやすい


 ・また戦闘においてこの国トップである『き』の拠点にいる方がより安全である


 さすがは皇女さまだね。


「さて、お前に尋ねたいことがある」


 おっと皇女さま、俺の方に寄らないでくれるかな? 肉体年齢思春期の男子としては困ります。


「私が転移のことを話した時、お前だけが驚きもせず、わかったような顔をしていた。それはなぜだ?」


 あちゃー。そうかー。そうだよなー。


「皇女さま」

「もう皇女ではない。ユリーカで良い」

「えーではユリーカさま、俺がこれから話すこと信じてもらえます?」

「話してみよ」


 そして俺は地球で生きていた記憶があると告白する。

 ミサやオミを始め『き』の人々はもう知っている。


「それでですね、娯楽としての空想物語がそれこそ星の数ほどあります。そんでもって転移はそういう異能の定番なんです」

「ほぅそうか」

「違う星へ転移するのとかもありましたからね」 

「天の星々へか」


 空をら見上げる皇女さま。


「星々は恐ろしく遠い距離にある。想像もつかないな」


 帝国、天文学も発達してそうだな。


「それよりお前、改まった口調はもうよい」

「え、いいの? あわわ」


俺は社会人だったからな。高価な身分の方にはそれなりの言葉遣いになるさ。


「話が澱みなく進む方がいいのだ」

「あっ、はい。じゃ遠慮なく」

 

 話にオミも入ってくる。


「なんだかすごい話だねぇ」


 オミが感心したように言う。


「オミ、物語はたくさんあったんだ。書物だけじゃなく、芝居とか。祭りの時にやるだろ? あれをいつでもどこででも観ることが出来るように色んなものが発達してたんだ。俺はそういうのが好きで子どもの頃からよく観てた」


 オミ達は今ひとつ理解ができないようだけど、俺はお構いなしに捲し立てる。


「オミ達みたいな存在も空想上ではいたんだよ。ライカンスロープってやつ。獣の姿に変身するの」

「ケモノつきはいなかったの?」

「いなかった。ひょっとしたらどこかにいたかもしれないけど」


 英国陸軍の部隊と狼男達が戦う映画、また観たいなぁ。少し懐かしくなる。

 しかしここでは俺にとっての日常が空想物語そのものだしな。


「それでさ、他の皇族ってどんな能力持ってるの?」

「それを発揮して役職に就いた者以外、ほとんどが秘匿されている」

「雷を落としたり、手から光線出したりとかある?」

「何だそれは?」

「異能の定番だよ。例えばさ、空を飛べる人いる?」

「人は鳥のように飛べんよ」

「そっかー。あ、できたとしても隠すわな」

「能力を知られることが命取りになる場合もあるからな」

「あれ? 今更だけど……なんで転移で逃げなかったの?」


 ユーリカさま、微笑みながら答えてくれた。


「大森林より北、この大陸はほぼ帝国の支配下でな、何処へ行こうと必ず見つかる」

「うはぁ! ほんまに大帝国なんだ!」

「特に私のような目立つ容姿の小娘が誰にも見つからずに過ごせると思うか?」

「まぁ……無理かも……」

「そういうことだ」


かといってここらの森林地帯でサバイバル生活……も無理か。肉食の獣がウロウロしているし。

それにしても大陸のほぼ全てを支配する大陸かぁ。興味が出てきたぞ。

そんな好奇心をつい口に出してしまう。


「観光で帝国へ行ってみたいなぁ」

「だ、だめだよ!」


 ミサが反応する。


「だってローマ帝国かモンゴル帝国並みの大帝国だよ? 興味あるじゃん」


 俺は好奇心を抑えきれないでいる。


「よそへ行っちゃだめなの」


ミサは横に首を振って俺を睨む。


そしてさらに込み入った質問もしてみた。

帝国の野心だ。


 ユーリカ曰く、帝国は南進する政策はとらないだろうとのこと。


俺は安堵して胸を撫で下ろす。よ、良かった。


 長耳達を派遣した目的、最初は単なる調査だったそうだ。しかし南へ向かった長耳は必ず消息を断つので、ユーリカはその原因調査を命じられたそうだ。

 

あーうん。オミ達が片っ端から始末してたからね。


 今回の長耳達の不審点、警戒心の無さや非力な者が来たことについて ユーリカに話したところ『術をかけられていたのだろう』とのこと。


 帝国では意識を乗っ取り、遠隔で人を操る能力持ちがいるとのこと。

 何それ怖っ!


「まぁとにかく帝国がここに対して領土的野心を持ってないのは安心材料。かな?」


 険しい山脈と大森林を抜けるにはコストがかかり過ぎる。よほど魅力的な旨みがあれば別だろうけど、そんなものないし。ないよな?


 それを言うとユーリカは感心したようにいう。


「お前はそこまで考えが及ぶのか」

「だって兵士は移動する間も飯も食うし、報酬もいる。戦はとにかく大金が動く。その金を使うのに見合うだけのものがなけりゃ施政者は軍を動かさないよ」

「確かに心は子どもではない、か」

「ねえ? お金ってなに?」


 オミが質問する。知らなくて当然だ。ここでは貨幣はなくて物々交換が基本なのだから。


 それの解説をユーリカに振ろうとしたら、ぐいっと俺に近寄ったかと思うと『お前が教えてやれ』とおっしゃる。


 あっユーリカ様、困ります! それ以上近寄らないでください。その豊かなものを隠してください!

 あーっ! 困ります。俺の身体、その一部が大変なことになってるんです。


 目を逸らしたら、ミサと目が合う。するといきなり俺の腕に抱きついてきた。


「どうした」

「なんでもない!」


 そんな俺とミサを微笑みながら見ているオミとユーリカ。


 俺はオミとミサに貨幣制度を簡単に説明する。そのうちこの国でも採用されるのは間違いないだろうし。


 ついでに部族のシステムをユーリカに解説しておく。


「部族単位の分業か。確かにまとまれば力のある国になりそうだ。それに許婚として男女を一緒に育てる仕組み、なかなか面白いやり方をしているな」


 あ、また見ちゃった。いかん何か他のことを考えないと!


 そうだ。帝国は南進に関心がないとすると、大巫女様の占う『北の良くない気配』ってなんだろう……気になるなぁ。


 政変? 災害? わからない。


 ユーリカが俺の真正面へと来て『何を考えている?』と聞いてきたので、俺は股間を押さえて外に出る。


「ちょっとぬるくなってきたので、石を追加するね!」


 オミはお見通しだよと言いたげな顔で笑ってるし、ミサは膨れっ面。

 ちょっとユーリカのわがままボディは文字通り目の毒だ。


 冬も終わり、春の息吹を感じられる頃、この国の頂点、つまり王からの呼び出しが来た。

 ユーリカに。


 護衛にオミ達。なぜか俺とミサも同行することになったけど、いいのかな?

 往復で一週間ぐらいの距離だから、その分の仕事をそれはもう頑張った。


 兵糧丸のアイデアいただいた携行食が好評だったので、それも大量に作らされた。

 そりゃ戦する人間にとって飯は大事だよね。


 出発の日。

 特に何があるわけでもなく歩いていく。馬は貴重だから。


 大森林。

 どこまでも続いているように見える山々。森が埋め尽くしている。

 直径が数メートルもある大木、苔だらけの岩、剥き出しの大自然だぜ。

 道とかは無いので歩きやすいところを選んで進むだけだ。


 出発した翌日。俺たちは再会した。

 誰とだって?

 サイだよ、ユーリカが乗ってたやつ。


 いきなり森の中に佇んでいたから俺たちは驚いた。

 ユーリカを見つけるとゆっくり近づいてきて、鼻先をこすりつける。なんか可愛い。


 バボって種類の草食獣だそうだ。帝国ではクロカン4WD扱い、つまり不整地専用の移動手段や装甲を施し戦車として運用するらしい。

 ふむ。スピード以外は馬じゃ勝てんな。


 それでこいつは、辺境へ行かされることの多いユーリカの専用騎獣。

 子どもの頃から一緒に育ったそうだ。


 この森には熊っぽいのや猪っぽい獣が割といるんだけど、まぁこいつには敵わないだろう。体重が違いすぎる。ユーリカも全く心配してなかったしな。


 俺とミサも乗せてもらい、道中は楽になった。やっぱ大人の歩幅に着いていくのは少しきつい。


 三日目の朝、王がいる支配部族『まと』の砦に到着。

 さぁ王はどんな人物かな?

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