第四話 はるか北の地にて
少年とオミが話をしている頃。
大森林より遠く離れた地、石造りの部屋の中で交わされた会話。
「南方へ行かせた耳長の部隊と接続が切れました。おそらく全滅したものかと」
痩せた男が告げると、体格の良い大男が顔を顰める。
「これで三回か?」
「はい。今回も視界共有術が突然切れております。全員同時に、です」
「獣にやられたにしては手際が良すぎるな」
「その通りです。しかも今回、視界共有が途絶える直前、何かが視えたと術師が言ってまして」
「何かとは?」
「詳細は不明です。小さなものが恐ろしいまでの速さで飛んできて視界が潰れた……そう申しました」
「なんだろうな。何にせよ、南には耳長をすぐに葬り去る何者かがいるわけだ」
「次はいかが致しましょう?強化術を施した耳長を派遣すべき頃合いかと思われます」
「そのことだが、跳ねっ返りの姫がいるだろう?」
痩せた男の肩が僅かに動く。
「紫姫さまでしょうか」
「前にな、あれを遣わすと皇帝から打診が来た」
「お受けに?」
「元より皇帝は南を本気で欲しておらん。そこにどんな意図があるか、俺にはわからんのだ。耳長を遣わすより良き結果を持ち帰るだろうという程度の期待やもしれん。
或いはこちらを探るのが目的か」
「……後者の場合、あまりにも目立つ間諜かと」
「それとも別の目論見があるのか」
「…………」
皇族に対する不敬は重罪であるがゆえに、痩せた男は沈黙を持って賛意を示す。
「護衛部隊が一緒に来るであろうが、こちらからも兵をつけろ」
「承知しました」
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