第35話 チームが必要らしい

いろいろと考えてみた結果、自分でストリートバスケのコミュニティに参加することがベストだと判明した。その後、一応三年の先輩方には報告し、「俺も遊びに行くから絶対にチームで来たら、声かけろよ」と凄んで宣言された。硬く握手をする羽目になったが、よき先輩だなと思う。

その後、先輩を引き連れて何故か先生の所へ。先生に報告したら、「頑張りたいところが見つかったなら、次はそこで踏ん張ってみればいい。何、迷ったり疲れたりしたら、遠慮なく頼れ」との、ありがたいお言葉をいただくことができた。

なお、バスケ部三軍に関しては所属したままでOKらしく、これまで通り練習も参加できるし、マネージャーの真似事も続けてよいらしい。これは非常に助かる。


ストリートって言っても、学校の部活じゃないからな。平日は普通に学校で練習した方が時間を無駄にしないし、できるだけシュート練習などは室内でやりたい。外だと、やっぱり風の影響とか、考えることが多い。感覚を正しく高精度に保つなら、やっぱり室内の方が良い。先生はできるだけ配慮してくれるっていうか、今まで通り活用してくれたらいいって話してくれた。


そして、俺は一つの問題に直面していた。


「チームどうしよう………」


当たり前だが、三軍メンバーに声をかけたところで睨まれて終了だった。というか、「知るか」と突き放される分には未だマシ。無視暴言はあたりまえという、結構ハードモードな世界だった。

三年の諸先輩方はこれから受験真っただ中で、この手先が一瞬で真っ赤に染まり今にも取れるんじゃないかって勘違いしそうな中、必死に勉強をしているらしい。いつしか見せていた余裕は完全に消え去り、余裕なく勉強に励んでいる。


さて、そうなってくると本格的にメンバーに困るぜ問題が生じてしまった。俺に人望と人脈、せめて伝手くらいあればいいのだが、そんなものはない。中学時代の人に連絡を取る気もないし、かといって既存チームに連絡したところ「片足の子をねぇ」とやんわりと拒否された。

既存チームに加入が絶望的な以上、やはり作るしかないのだろう。探す作業はやめる気はないけど、望みが薄すぎる。


「はぁ」

「どうしたの?」

「あれ、城崎さんまだ残ってたんだ。今日は練習は良いの?」

「うん、今日はいつも使わせてもらってる体育館が使えないんだって。今日というか、今秋と来週が、かな。大会の関係らしいよ?」

「なるほど、それで今日はこの時間でもここにいるのか」


自主練習を切り上げ、もう帰ろうかという時間でも城崎さんは残ってくれていた。学校では基本的にマネージャーをしているが、自主練時間は女子に交じって練習をするようになっている。女バスの中でも城崎さんは一目を置かれているようで、勧誘を断るのが心苦しいと、前にこぼしていた。


「そえで、どうしたの?」

「実は、学校の他にも城崎さんみたいにバスケをしようと思ってね」

「じゃあ、コーチの道は諦めたんだ。ストリートってこと?」


彼女の問いに「うん」と言いながら、これまでの状況を説明した。今のところ、多分「雪さんと加奈ちゃんだけかな」ってこぼすと「私も手伝おうか?」と乗り気な言葉をいただけた。

とはいえ、彼女は多忙極めるJKである。そこまで図々しいお願いは、そう簡単にできない。


「一応、自分の方でも探してみようと思ってるんだ」

「でも、見つかるの?最低でもあと一人は必要だよ?」

「う~ん、正直厳しいかなぁ。となると、身内のノリで適当にミニゲームもどきをして遊ぶだけになるかな」

「なるねえ」


城崎さんは大学に入れば本気でバスケを再開する予定だと聞いている。今はマネージャーをして勉強をしつつ、体力は増やして過度な運動をしないで技術の向上を図っているらしい。うちの高校も、全国では強豪校だから練習を盗み見して自分でやるだけでも結構違うはずだ。


「チームが必要だって言われても、どうしようかなってなったんだ」

「なら、うん。いいよ、私が入る」

「気持ちはうれしいけど、君は忙しいでしょ?」

「関係ないよ、ほかの用事は。私は、君に会うために、君から技術を学ぶために、君の技術を盗み出すためにここにいるの。サークル活動的な感じなら、男女混合でも問題ないっていうか、既にあなたのチームは女しかいないでしょ?」

「うっ!」


痛いところを的確についてくるな、そうですよ。どうせ、何故か知らないけど、今は女子しかいないよ。なんで俺は最近、異性との交流ばっかりなんだ。いいじゃないか、もう少し同性の友達が欲しい。

こんなことを考えているから、俺はいつまでたっても男からは舌打ちだけされるんだろうなぁ。



目下様々な問題があるものの、結局は俺、雪さん、城崎さん、加奈ちゃんでチームを結成することになった。あと一人は必要だから、探さないといけないが。以外にも城崎さんも、雪さんたちも乗り気だった。

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