第7話 試合開始!
朝五時、いつも通りに目を覚まして、ボールと戯れる。空き時間に、少しでもいいからボールとのふれあい時間を増やして、いろんな角度、方法でボールを掴む事になれる。この前、ドリブルをして判明したことだけど、ハンドリングがかなり落ちていた。まるで、ボールが自分の手から離れていくことを容認しているみたいで、なんだか嫌だった。
昔はもっと、ボールが手のひらに指先に吸い付くような感じだったのに。ブザーが鳴るその瞬間まで、ボールはずっと俺の手に収まっているのが当たり前。そんな感じだった。
「はぁ、悲しんでる暇なんてないな。それこそ、城崎さんの言ってた通りだ」
自分には負けないようしないとな。せっかくバスケできるんだし、楽しまないと損だろ。
「おっ、来たな。お前が、城崎の言っていた夏樹君か?」
「はい?」
ついて早々、なんか良く分からないけど茶髪のイケメンに話しかけられた。と思ったら、全力でにらまれて、敵視されているような気がするんだけど。
というか、城崎さん?え、何かしたの?この短時間で?
「ふぅ~ん、なんかビミョーだな。君、本当に中学の時は強かったの?なんか、強者の匂いがしない」
「ふぇ?多分、人違いでは?僕はそこまで強い選手ではありませんし、そもそもこの身長ですよ?見間違えじゃないですかね?」
「だよなぁ~」
なんだこの人、失礼というか俺に興味ない癖になんで敵意向けてくるんだろ。何かしたかなぁって思うけど、たぶん何もしてない。というか、この人三軍の人か?
そう思ったら、なんだか見たことがあるような気がしてきた。かもしれない。
「あの、どこかでお会いしましたかね?」
「いいや、気にしなくていいぞ。ちゃんと初対面だ」
「そうですか、それはよかった」
うん、何がよかったんだろう。でも、笑う顔までイケメンだなんてずるいなぁ。なんだろう、俺に何の用があるのか知らないけど。敵意持ってくれても、困るなぁ。
喧嘩しても、なにしても俺が絶対に負けるじゃん、こんなの。無理でしょ。
とにかく、今はこの場所を去ったほうがいいな。
「では失礼します」
それだけ言って、俺は足早に撤退した。まだ部員はほとんど来ていないけど、できる準備をしていかないと。マネージャーの人が本格的に来るまでに試合の準備をして、あとはドリンクとかの準備だけにしたい。俺がいなかった間に三年生は引退したけど、まだ一か月のブランクしかないからなぁ。
どんなプレイを見せてくれるのか、楽しみだ。
監督が来て、部員が各々アップを初めて気が付いたことがある。俺に話しかけてきた、あの不思議な人は三年生であるということ。監督が三年生と顔合わせの時間を作ってくれた時に、なんと相手側にいた。「稲荷崎 俊哉。ポジションはPFになる。今日はよろしく」と言って、それはもうイケメンオーラ満載の笑顔を浮かべてくれましたよ、ええ。なんか、俺だけ睨まれていたような気がしなくもないけど、気のせいでしょ。
個人個人でアップを済ませて、簡単な練習をして。そして、ついに試合開始を迎える。三軍は全部で40人程いるのだが、その内ベンチ入りできるのは僅か15人。マネージャーが一人座れて、そこには今日は城崎さんが選任で座る。
「ねぇ、夏樹君。今日は私が試合を徹底的に見てるから、期待してるよ?」
「いや、昨日自分で言ってたじゃない。俺は試合に出られないって、だから無駄だよ?むしろ、貴重な練習試合で無意味に俺を出す必要もないでしょ。今日はサポートに徹することになるけど、それでも学びは深そうだしね。高校バスケのレベルが知れる、いい機会だ」
ほんと、普段からNBAしか見ていないから高校バスケのレベルが正直わからない。中学の時も、一人だけ完全に浮いてたからなぁ。
「へぇ、高校生は興味ないんだ?」
「というか、単純にNBAが好きなの。高校生の試合とか、ちゃんとフルタイムで見れる動画が少ないからねぇ」
「確かに、そうかもしれないね」
それっきり何か考え込み始めてしまったので、俺は彼女を放置して自分の観戦エリアに向かう。といっても、得点版の後ろだけど。プレーをしてみるとわかるが、電光掲示板よりも、昔ながらのペラペラめくるタイプの得点板は見やすくて目にも良い気がする。
パッと見でわかるのは、余計な情報が少ない得点板だ。
「それでは、三年生と三軍の試合を始める。礼」
「「「「「「「「「シャスッ!」」」」」」」」」」
互いにコート中央で礼をして、すぐさまコート中央に二人を残して布陣を完成させる。なるほど、こっちのCは身長は高いけどジャンプ力に自信がないのか?線から一歩引いた所にいるし、三軍のメンツはみんなすぐにディフェンスに走れるようにしている。
相手は一応ディフェンスにも走れる位置に陣取ってるけど、明らかにオフェンスより。なるほど、こっちの分析はできてるってことか。
ピィィィィィィーーーーーーーーーーー!!
笛の音と共に真上に放り投げられたボール。そのボールを追いかけるように、二人の巨人が垂直に飛び上がる。だが、予想通り先輩の方が反応が良くてファーストタッチは簡単に捕られてしまった。
そのまま先輩方ボールで試合が始まる。
さぁ、ここからどうする?
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