2 橋頭堡の戦い

ドーバー海峡に朝日が昇り始めると、激闘の夜を越えたドイツ軍は、彼らが確保した橋頭堡を拡大するために、次々と援軍を送り込んでいた。フェルディナント・シェルナー将軍の指揮のもと、第6山岳師団は、初期の困難を乗り越え、リデン・スパウト周辺で確固たる足場を築いていた。ドイツの兵士たちは、厳しい訓練によって培われた山岳戦の技術を駆使し、崖を登り、イギリス軍の防衛線を次々と突破していった。


その一方で、ハーバート・ロック将軍の第17歩兵師団は、サンドゲートとハイスの間で苦戦していた。彼らが直面したのは、海岸線に配置されたイギリス軍の頑強な抵抗だった。遊歩道を越えて内陸部に進もうとするドイツ兵は、小火器と砲火の嵐の中、身を低くしながら前進を続けた。ドイツ軍の新型PzKw III 潜水戦車が浜辺に上陸し、その頑丈な装甲と機動力でイギリス軍の防衛を突破していった。


しかし、イギリス軍もただ手をこまねいていたわけではなかった。ソーン将軍とリアデット将軍は、ドイツ軍が孤立し、その補給線が断たれることを期待して、あらゆる手段を講じて反撃に出た。イギリス海軍の巡洋艦と駆逐艦は、夜間の海峡に潜むドイツのUボートとSボートを避けつつ、敵の輸送船団に猛攻を仕掛けた。特に、ノールから出撃した2隻の巡洋艦と16隻の駆逐艦、そしてポーツマスから出撃した8隻の駆逐艦が、ドイツの海上輸送を一時的に妨害し、ドイツ軍に大きな損害を与えた。


ドイツ空軍は、制空権を確保するため、再び最大限の努力を払った。ケッセルリンクの指揮下、戦闘機と爆撃機が昼間のイギリス空軍基地を無慈悲に攻撃し、広範囲にわたる鉄道網と道路を爆撃して交通網を麻痺させた。だが、イギリス空軍も必死に応戦し、激しい空中戦の末にドイツ軍機を多数撃墜した。Bf 109戦闘機とHe 111爆撃機がイギリスの空を埋め尽くし、その対空砲火と戦闘機によって撃墜される様子は、空に炎と煙の帯を残した。


しかし、この激闘の中、フォークストンとドーバーがドイツ軍の手に落ちたという報がイギリス軍参謀本部に届いた。アイアンサイド将軍は、この敗北を受けて、計画通りにGHQラインへの撤退を命じた。彼の考えでは、これ以上の無駄な犠牲を避け、戦力を再編成して次の防衛線で持ちこたえることが最良の選択肢であると考えた。


だが、ウィンストン・チャーチル首相はこの決定を即座に否定した。彼はアイアンサイド将軍を解任し、ブルック将軍を新たな司令官に任命した。チャーチルは、敵を殲滅するために直ちに反撃を開始するよう強く命じた。特に、第1機甲師団に対し、ドーバー西部でのドイツ軍の橋頭堡に対して大規模な反撃を行い、その拠点を粉砕することを求めた。


ドイツ軍は、夜が明けるとともに、橋頭堡をさらに拡大し、補給を続けるために全力を尽くしていた。Ju 52輸送機が再びパラシュート部隊を投入し、彼らはリデン・スパウトから内陸へ進軍していた。PzKw III戦車が次々と上陸し、砂浜から丘陵地帯へと進出していく。彼らの背後には、海峡を越えて絶え間なく送られてくる補給物資と援軍が控えていた。


だが、ドイツ軍の計画はまだ完成していなかった。彼らが陥落させたドーバーとフォークストンの防衛拠点は、まだ完全には確保されておらず、イギリス軍の反撃が迫っているという情報がもたらされた。ドイツ軍の将校たちは、海峡を渡ってくる続く増援と共に、次の大規模な攻勢の準備を整えていた。

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