魔法を特訓しよう
和やかな夕食が済むと、居間に移動してお兄様から魔法の基礎からみっちりと指導してもらった。
魔法とは簡単に言えば、一人一人の中に眠る魔力をコントロールすることにあるらしい。コントロールするには地道な訓練が必要なんだそうだ。
「目を閉じて手のひらに熱を集めるような意識を持つことが大切だ。血の巡りを意識すると発動しやすい」
「オレの手のひらに触れててごらん」
お兄様が私の手を重ねるように自分の手のひらに置く。あまり異性と触れ合ったことがない私は、ドキドキしてしまう。
(セイリーンのお兄様なのよね。兄にドキドキするなんて怪しまれるわ。平然としていなくちゃ)
意識を集中するように目を閉じると心が少し落ち着いた。やがて、お兄様の手のひらがじんわりと暖かくなるような感じがしてきた。
目を開けてみると光の球体がお兄様の手のひらの上に現れ、私の手のひらとサンドイッチみたいに包まれている。
「これが魔力エネルギー?」
「ああ。キレイだろ?今度はセイリーンがやってみよう」
魔法なんて意識したことが無いが、私の中にも魔力があるというならば同じようにできるはずだ。血の流れを意識して手のひらに集中する。
「セイリーン、眉の間にシワが寄っているよ。もっとリラックスして。深呼吸でもしてみようか」
深呼吸すると身体の力が抜けて気持ちが安らいだ。そのまま手のひらにエネルギーを集めるようにイメージすると、不意に手のひらから何かが浮かび出るのを感じた。そっと目を開いて確認すると、手のひらの上に丸い淡く光る球体が確認できた。
「うわぁ。出ました!」
「そうそう、その調子。魔法を使うにはエネルギーが弱いが、練習を重ねて感覚を取り戻せば自在に使えるようになるよ」
「魔法は呪文を唱えるのでしょうか?」
「ああ、そうだ。熟練すれば唱えなくても魔法を発動できるぞ。ちなみにオレはできる」
「スバラシイ」
お兄様は分りやすく得意気にニンマリすると、魔法の初級だという"浮遊”や"移動”について熱心に語り始めた。魔法指導は初日から2時間を超える講義をしてもらうことになり、いささか疲れを感じて来たのでお開きにしたいと思い、お兄様の様子を伺うことにした。
「魔法を使うのは集中力がいるのですね。私、ちょっと今日は限界かもしれません。本日はこのあたりにしませんか?お兄様は明日も仕事なのですよね?」
「ああそうだな。確かに今のセイリーンには負担がかかるよな。また明日か明後日にでも魔法レッスンしよう」
魔法レッスンがお開きになりお兄様に送られて自室に戻ると、メイドに促され入浴をした。今日は魔法実践で疲れたので、人に洗ってもらうお風呂がとてもラクだ。最初は人に身体を洗ってもらうなんて抵抗があったが、3日もすると慣れてくるから人ってスゴイ。
最初は、自分で洗うと言ったら"そんなのありえない”などと言ってオランジェと言い争い?になりかけ、仕方なく私が折れたのだ。どうやら令嬢は洗ってもらうのが常識らしいと理解した。
高級エステに来たのだと思えば案外悪くない。身体を洗うだけでなく、顔から身体まで全身のスキンケアまでしてくれる。貴族って至れり尽くせりな生活なのねと感心しつつ、慌ただしい1日を終えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます