リアルな夢を見ているのでしょ??

(トイレ行きたいな)


尿意を感じて目を覚ますと、部屋の中が薄暗い。遅刻する夢がやたらリアルだったな、なんて思いながら身を起こすと、またあのレースの付いたベッドが見えるではないか!


(目覚めても変わらない!寝すぎて頭が痛くなる感覚もあるしこれはリアル!?)


またパニックになりながらあたりを手探りすると、ベルがベッドから転がり落ちる音が響いた。アっと思った時には部屋に人が近づいてくる気配がした。


「お嬢様、お目覚めですか?お部屋に入りますがよろしいでしょうか?」


先ほどのメイドの声がする。静かにドアが開いたと思うと、ベッドサイドのランプが灯される辺りが明るくなる。レースのカーテンを開けて私の様子を伺っている。


「今日は何も召し上がってらっしゃらないので、スープお持ちしましょうね」

「ありがとうございます。でも、まずはトイレに行きたいのですがトイレはどこでしょう?」


トイレに行きたかった私は、思いきって話しかけた。


「お嬢様、いつもとお話の仕方が違いますね?トイレは寝室の横にありますよ。お食事お持ちしますので少々お待ちください」


何やらメイドは怪しみながら部屋を出て行く。マズかっただろうか。うつむくと髪の毛がハラリと前に落ちる。改めて自分の髪の毛の色や手の形が以前の自分とは異なるのを認識する。


これはよく小説や漫画にある異世界への『転生』とか『転移』というものではないかと、うっすら思い始めた。まさか自分の身に起こるとは…。


ひとまず、用を足すべく寝室の隣に続くウッディな扉を開くと、西洋風のトイレとバスルールがあった。照明のスイッチを探すと元の世界と同じように壁にスイッチがあり、押してみると明かりがついた。用を足して一安心すると、便座に座ったままの状態で改めて自分の置かれた立場を整理してみる。


(エレベーターに乗っておばあさんにウィンクされて、気づくとここにいた。自分の紫の髪の毛なんて元の世界で見たことが無いし、ここは明らかに元の世界とは異なる世界だよね。あのおばあさんは何者だったのかしら?)


今の置かれた状況を見る限り、私はどうもお嬢様みたいだからお嬢様を演じなくてはならないのかもしれないと感じる。


以前読んだライトノベルの内容では、転生者は転生したことを話したら信じてもらえず正気じゃないと修道院に入れられる流れだった。


修道院は厳しい環境だったはずだ。元の自由な世界に慣れた私が適応できるとは思わない。それに、こちらの世界に来た謎を解くためにも、修道院送りにされるわけにはいかないだろう。


色々なことが頭をグルグルと巡ると、こんな状況にも関わらずお腹が空いてきてしまった。


先ほどのメイドはスープを持ってきてくれると言っていた。スープだけで足りるかな?なんて思ってしまった。しかし、腹が空いては戦えぬ!腹は背に代えられない!


ということで、私はメイドがスープと共に美味しそうなお肉など持ってきてくれはしないかなと期待することにしたのだった。

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