第2話 聖剣を頂戴しました?

 さて、サヤに収まった聖剣達が剣立てに置かれた広間に通されました。

 高位文官は高らかに宣言する。

「これより、聖剣の受領を行う。

 なお、受領に際しては、諸君の運を把握するため、簡単なカードゲームに参加してもらう。」

 五人毎に組分けされた勇者の卵たち、車座に座り、渡されたのは『トランプ』。

 どうやら、ババ抜きで早抜けしたものから順番に好きな聖剣を受領できるらしい。


 早速始まる、早々に抜け出し聖剣を受け取り下野していく勇者の卵たち。

 残された人々は集められ、改めて車座になり、ババ抜き続行!

 一人一人と勇者の卵は去り、遂にオレだけが取り残されてしまった。

「ふむ、君は相当に運が無いようだね。」

 冷ややかな目線を感じながら、残された聖剣を受け取り、オレが王城の外門を抜ける頃には、陽もとっぷりと暮れていた。


「さて、小金と情報は貰っているから…。」

 王城の外に広がる王都の街並みに歩き出そうとした時。

『おいっ!』

 低音のバリトンがどこからともなく聞こえ、つい周囲を見回すオレ。

『おいっ!』

 再び響く低音のバリトン…声はオレの腰元から聞こえてくる。

『おいっ!聞こえてるんだろっ?』


 声の主がということにやっと気づいたオレは柄に手を置き語りかける。

「何だい、相棒?」

『殊勝な心がけだな、少年!』

「ははは、少年と言うには歳を取ってるけどね。」

『ふん、ひよっこの男勇者なんざ、呼ばわりで十分さ。』


 人通りのまばらな王城の前で、剣の柄に手をかけ話している怪しい男…それが今のオレの状況。

「近藤 いさお、オレの名前だ。」

『イサオ…いい名前だ。

 ワシの名前は18号だ。』

「じゅ・・・じゅうはちごう?」

 思わずコケを決めるところだった。

『ああ、18号だ。

 よろしくな相棒!』

 その言葉を最後に聖剣は黙った。

 気を取り直し、オレは文官から指定された宿屋へ向かうのだった。


 つつが無く宿屋へ到着し、割り当てられた部屋に入りベッドに腰掛ける。

 改めて聖剣の姿を見ると、サヤと柄の間から見える黒い刀身。

「へぇ~、黒い聖剣なんて、初めて見るなぁ…。

 それとも、というのは、聖剣に似つかわしくないというのはオレの偏見かな?」

『…』

「まぁ、いいさ。

 魔王を倒すとか興味はないし、どうせ元の世界に帰れる見通しはないんだ!せいぜい余生を愉しむさ。」

 ベッドに倒れ込むと、まどろむように睡魔に襲われ、そのまま眠りについた。


 翌朝、朝日が差し込み始めた頃、ドアを軽やかにノックする音で起こされる。

「どなたですぅ?」

 ベッドから声を掛けるがドアから返事は無い…が、人の気配はドアの向こうに確かに感じる。


 寝惚けマナコを左腕で擦りながらドアの方に近づき、ドアのロックを外す…。

 と、盛大に大きな音を立てて開かれるドア!

 内側に開いたドアの勢いで、ベッドへ飛ばされるオレ。

「ハァ~~イ!みんなのアイドル…じゃなかった、あなただけのサポーター、キャッシーよぉ!」

 ようやくベッドから這い上がり、ドアの方へ視線を送れば、パツキンビキニアーマー女がポーズを決めてウィンクまでカマしてくる。

『おもり役の登場か。』

 18号がボヤけば

「あら、18号!おっひさぁ~。」

 そう言って聖剣にウィンクする女戦士。

「ねぇねぇ、18号、今回の犠牲者…もとい、勇者の卵君は…」

 そう言いながら部屋の物色を始めた女性と程なくオレの視線が交錯する。

「あらぁ~、可愛い坊やかと思ったら、なかなか男前じゃない。」

 両手を合わせ、ウンウンと頷くキャッシーさん。


「近藤 いさおです。」

 オレが名乗れば

「改めまして、キャスリンよ!

 よろしくね。」

 有りもしないスカートの裾を軽く持ち上げカーテシーをするキャッシーさん。

 変な聖剣と、怪しいお姉さんの知り合いが出来てしまいました。

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