その聖剣の名前は『グルメの18号』
たんぜべ なた。
第1話 召喚されました?
瞬きすると、眼前に広がっているのは、ローブを纏った人々やプレートメール姿の騎士らしき人々、そしてメイド喫茶で見かけるような服装の人々も混じっている。
かがり火が焚かれた石造りの部屋は、西洋の王城を想起させる。
自分の周囲を見回せば、自分と同じスーツ姿の男性を始め、制服姿の高校生男女の団体に、OLさんも散見され、ざっと見た感じで人数にして二十名程度。
「よくぞ、我々の声に応えてくれた、勇者の卵たちよ!
我々は貴殿達に感謝する!
さぁ、身支度を整え、我が前に集うのだ!」
偉そうな言葉を大声で叫ぶ、バルコニーに立っている中年太りの白髪の老人。
綺羅びやかな服に、短パン白タイツ。
王冠と指には、イヤラシク輝く宝石たちが散りばめられ、やたらと長ったらしいマントを付けた…たぶん、やつが王様なのだろう。
彼の両脇には、同じようにギラギラに着飾り、お高くとまった女性達が居並んでいる。
女性の年齢を顔立ちで判断するのは失礼かもしれないが、大方王妃や王女たちが従っているのだろう。
「お前たち、さっさと移動しろ!」
高位文官のような男性に促され、俺達は言われるままに応接室へ通される。
身支度を整えるなどは名ばかりで、ローブ姿の人々の前を歩かされた挙げ句、整列先を振り分けられる。
女性の中から、器量の良さそうな五名程度がメイドたちにエスコートされて、応接室でも一段と品格の有りそうな場所へ移動し、俺達は一緒くたにまとめられ、玉座の前に整列させられた。
程なくすると、
王様が玉座に座ると、先程俺達をここへ連行してきた高位文官が話はじめる。
まぁ、長ったらしい話が続いてくれるのだが、正直なところ、年代や王政などはどうでも良い話であり、俺の灰色の脳細胞に留まるような話は殆どなかった。
とりあえず、高位文官の話した内容を掻い摘むと
1) この世界には魔王がいる。
2) 魔王は世界を治めようとしており、それに抗うべく勇者を募っている。
3) この世界の人間では力不足であり、別の世界から力のある勇者を募っている。
4) 勇者は元の世界へ帰還することも可能である。
どうも4番目の話は胡散臭そうなので、考えないこととして。
どうにも話が安直すぎる、
文官のお話に感動したのか、召喚された全員が歓声をもって応えるのである、それも盛大に!
その様子を見て満足気に微笑む王様。
まぁ、白髪のタヌキジジイが微笑む構図なんぞは、どうせ碌な結果を招かないのが相場というものだ。
しかも、このタヌキジジイの綺羅びやかな見た目が、俺の第六感に訴えかけてくる…『こいつは、ヤバイ』ってね。
だが、俺も一応は他の連中と歩調を合わせる。
何せ、この世界のことは何一つわからない上に、下手に反抗した結果、自分に不利な状況が発生するのはご遠慮したい。
「それでは諸君の奮闘を期待する!」
最後の激励を発し、席を立つと満足げな面持ちで控室へと退く王様。
粛々と王様に従う王妃達…年若い王女様達は複雑な表情で姿を消した。
「では、勇者にふさわしい剣を!」
文官の言葉に合わせ、俺達は武器庫へと連行されていくことになる。
因みに品格の有りそうな方達は、別室へと連れて行かれたようだった。
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