第2章 33話 眠れない夜①

「眠れない……」


 アイリーナは目を開ける。ベッドの中でゴロンと体勢を変えた。


 目に映るのは薄桃色のリボンがついた、だが上品な印象の天蓋だ。自分の好みにぴったりのそれを、アイリーナはそっと撫でた。


 ベッドから下りて窓の前に立つ。カーテンをめくると夜空が広がった。

 銀の星と、きれいな黒の夜空。


 異世界の空気は澄んでいる。夜空も星も泣きたくなるくらいにきれいだ。


 みかんがベッドから下りて、アイリーナのとなりに立った。一緒に夜空を見上げた。


「ねえ、眠れないね。みかん」


 みかんはふしぎそうな顔をした。


「ねえ、なんでだと思う?」


 明日はやっと屋敷に帰れる。一安心で、今日はゆっくり眠れるはずだった。


 だが、うれしさと一緒に淋しさも込み上げてくる。シーファウやサフの顔が浮かぶと胸の奥がチクンとする。


 みかんがドアまで駆けていって、ノブの下の辺りを引っ掻く。アイリーナの頬は緩んだ。


「そうだね、みかん。夜の散歩に行こうか?」


 みかんとの散歩は大抵、夕方だが、星や月を見に行くこともあった。


 穏やかな気持ちになれる夜の散歩が、アイリーナはわりと好きだった。

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