第2章 32話 シーファウの水色の瞳③

 アイリーナはシーファウが使者に会いに行ったときのことを思い出す。


 だから、門が開く音はしなかった。使者が来た気配はなかった。


 初めから誰も来ていないから。


「あれ? だいじょうぶ? アイ。……みかんが頭をぶつけたら、アイはなんていって護るのかな? やっばり痛いの飛んでけかな」


 シーファウは空に向かって飛ばす。いつものうれしげな、麗しい微笑みだった。


 や、やっぱりシーファウは闇王子だ。


 もう、家に帰るっ。


 アイリーナは叫ぼうとした。


 シーファウは本当にうれしげに目を細めている。金の髪に映える水色の瞳がきれいだ。


 出かかっていた言葉が消え、アイリーナは目をみはる。


 なんで?

 わたし、本当に魅了されたの?


 アイリーナは動けず、ただシーファウを見つめていた。

 白い壁と水晶の、美しい離宮。そこに立つシーファウは本当に儚げで、深窓の王子に見える。


 目の前の光景がまぶしくて、アイリーナは目を細めた。





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