第2章 31話 シーファウの水色の瞳②

 これからも離宮にいる……。

 それがいいのかもしれない。みかんだって離宮が気に入っている。


 アイリーナは頷こうとする。


 そのアイリーナの肩を、誰かが掴んて引き止めた。

 いきなりだったので、体が震えた。


「待ってください。アイリーナさま」


「サフさん?」

「もう、お芝居はやめましょう。シーファウさま」


「ばらしたらだめだろ、サフ」


 シーファウは息をついた、ゆっくりと椅子にすわり、脚を組む。


 頬杖をついてアイリーナを見上げる表情には、かすかな闇が現れていた。


 え?


「あなたのためです。偽りで絆を得ようだなんて。今はよくとも、未来には通じません。大事なものを失いますよ」


「偽りっていい方はおかしいだろ。俺は半分本気だった」


「申し訳ございません、アイリーナさま。脚の呪いは偽物です。シーファウさまは貴女を籠絡したかったようで。私ご霊力で、アイリーナさまの腕の自由を奪いました」


 え? え?


「じゃあ、さっきの黒曜石の光は?」


「霊力で作った偽物です」


「俺の霊力は治癒系だから、サフにやらせたんだ。サフは多方面の霊力があるからね」


 つまり、詐欺。


 アイリーナは青ざめる。くらっと目まいがして、木の幹に頭をぶつけた。

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