第2章 30話 シーファウの水色の瞳①

「あ、あの、シーファウ王子。そうじゃなくて。今度は腕が動かない呪いなんです。ずっと動きません」


「え? なんでだろうね」


 シーファウの言いようは冷たい。涙が出そうになった。


「え? アイリーナ。本気で悲しいの? さっきの話、本当なの?」


 シーファウはそっとアイリーナのとなりにすわり、背中を撫でる。


「わるかったよ。きっと呪いだよね。……脚に呪いが?」


 シーファウは自分のペンダントを外す。アイリーナの首に掛けた。


「これは封じを強化する霊石だよ。どう? 脚は動く?」


 アイリーナはゆっくり脚に力を入れる。ふしぎなくらいにすぐ、脚は動くようになった。


 だが、涙がぽろぽろこぼれた。


 シーファウはアイリーナを覗き込む。透きとおった水色の瞳がきれいだ。


 思わず、アイリーナはシーファウの袖をつかんだ。


 シーファウが優しく手を重ねる。


「ねえ、アイリーナ。呪いが強くなるなんて心配だよ。もう少し離宮に逗まらない?」


 シーファウのきれいで優しい水色の瞳が、心でいっぱいになる。体の芯が温かくなった。


 シーファウ王子は、どうしてこんなに人を惹きつけるんだろう。


 鼓動が早くなった。アイリーナはぎゅっと目を閉じた。

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