第2章 34話 眠れない夜②

「散歩っていっても、外には出られないから。展望台に行こうね」


 アイリーナはみかんを抱っこして、展望台への階段を上った。


 もうちょっとで上り切るというところで、なぜか視界が暗くなった。呪い?!と思ったが違う。


 誰かがアイリーナを目隠ししたのだ。


「シーファウ王子?!」


 アイリーナは階段を踏み外しそうになる。シーファウはゆったりと微笑んでアイリーナの体を支えた。


「夜の散歩に行くんだね」


「なんで知って……」


「声が聞こえたから。俺もみかんと一緒に連れてって。アイ」


 シーファウはからかうような目をした。


「せっかくだし、ちょっと、外に出ようか。アイリーナ」

「でも、呪いが……」


「だいじょうぶ。あの呪いは、夜にはあまり起きないんだ」


 そうなの?


「ふしぎですね。なぜ夜は違うですか?」


「分からないね。呪いのことは、おかしいくらいになにも分からない」


 シーファウの後を追って、アイリーナは階段を下りていく。玄関のドアを開けると、夜の冷たい空気が体を包んだ。


 庭に飾られている水晶には、街灯のように灯りがともっている。霊力の灯りだろう。


 水晶の灯りに、星の光、月の光。


 異世界の夜は優しい光でいっぱいだった。

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